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49話 ザロク視点
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リラから逃亡した俺達はモンスターと遭遇してしまい、攻撃を受け死亡したレミルの体はダンジョンに取り込まれていた。
最深部に近いダンジョンのモンスターは強く、龍の杖がないと倒せない。
逃げることを優先していたから、レミルは俺に回復魔法を使っていなかった。
ボロボロのままで、俺はもう助からないと考えていた時――目の前に、謎の女性が現れる。
モンスターを一瞬で倒し、使った魔法はレミルと同じ聖魔法だった。
何が起きたのかわからず唖然としていると、謎の女性がつぶやく。
「浮気された妻リラが、聖女レミルを殺害して欲しかったのですが……これぐらいは誤差になるでしょう」
「誰かわからないが、俺を助けてくれ!!」
発言的に俺達を知っていそうだが、会ったことはない。
とにかく助けを求めると、謎の女性の発言に唖然としてしまう。
「私は聖女アリシア――貴方なら、私の願いを叶えることができそうです」
名乗ったことで、俺は何が起きているのかを理解する。
聖女アリシアの存在は、ダンジョンを探索していた冒険者を脅すことで知った。
ダンジョンを踏破した際の願いで蘇生された聖女で、踏破者が亡くなった後は消えたはずだ。
「詳しい説明はいらないようですね。私は踏破者によって創られた身体なのに、役目を終えても死ぬことができませんでした」
ダンジョンの踏破者が寿命で亡くなり、その後アリシアはどうすればいいのかわからなかったらしい。
姿を暗ますことにして、役目を終えたから消えたくなったようだ。
「私は願いで創られた存在だからか、消えたいという意思があっても体が勝手に動き、消えることができませんでした。これは私の創造者が、死んで欲しくないと強く願ったせいでしょう」
「俺には関係のないことだ!」
「ここからです。私は三年前にダンジョンを踏破して、願いを叶えるという意思だけで死ぬことにしました……それでも不可能で、代わりか私が死ぬための道を用意してくれたみたいです」
アリシアは、俺に一枚の紙を見せる。
それは妻がいるのに聖女を愛した騎士ザロクの詳細が書かれた紙で、アリシアの話が続く。
「ダンジョンを踏破して意識を失い、二年後に目覚めた時はエリオス国でこの紙を持っていました」
「ダンジョンが踏破されたのは三年前――リラが別人のようになったのは、お前のせいか!」
リラに何が起きたのかはわからないが、アリシアがダンジョンを踏破したことによる影響のようだ。
そしてアリシアの話が続き、俺は驚愕することとなる。
「ダンジョンの願いで創られた私を消すことは無理でも、元となるアリシアは夫と心中する気でいた……貴方を夫と認識して、心中することならできそうです」
蘇生する予定だった本来のアリシアは、亡くなる前は踏破者の夫と心中する気でいた。
創られたアリシアは創造した主を消すことができず、ダンジョンで創られた存在だから願いを叶えても消えない。
代わりとして似た境遇の男を用意すれば、創造主ではないから心中できるようだ。
「ふざけるな! そのためならルアリサ国がどうなっても構わなかったのか!?」
「貴方が聖女レミルを愛したから起きたことでしょう。私は望みを叶えたかっただけ、知らない国がどうなろうと知ったことではありません」
アリシアから逃げることはできず、俺は捕まってしまう。
全てを後悔して――聖女と一緒に、最期を迎えようとしていた。
最深部に近いダンジョンのモンスターは強く、龍の杖がないと倒せない。
逃げることを優先していたから、レミルは俺に回復魔法を使っていなかった。
ボロボロのままで、俺はもう助からないと考えていた時――目の前に、謎の女性が現れる。
モンスターを一瞬で倒し、使った魔法はレミルと同じ聖魔法だった。
何が起きたのかわからず唖然としていると、謎の女性がつぶやく。
「浮気された妻リラが、聖女レミルを殺害して欲しかったのですが……これぐらいは誤差になるでしょう」
「誰かわからないが、俺を助けてくれ!!」
発言的に俺達を知っていそうだが、会ったことはない。
とにかく助けを求めると、謎の女性の発言に唖然としてしまう。
「私は聖女アリシア――貴方なら、私の願いを叶えることができそうです」
名乗ったことで、俺は何が起きているのかを理解する。
聖女アリシアの存在は、ダンジョンを探索していた冒険者を脅すことで知った。
ダンジョンを踏破した際の願いで蘇生された聖女で、踏破者が亡くなった後は消えたはずだ。
「詳しい説明はいらないようですね。私は踏破者によって創られた身体なのに、役目を終えても死ぬことができませんでした」
ダンジョンの踏破者が寿命で亡くなり、その後アリシアはどうすればいいのかわからなかったらしい。
姿を暗ますことにして、役目を終えたから消えたくなったようだ。
「私は願いで創られた存在だからか、消えたいという意思があっても体が勝手に動き、消えることができませんでした。これは私の創造者が、死んで欲しくないと強く願ったせいでしょう」
「俺には関係のないことだ!」
「ここからです。私は三年前にダンジョンを踏破して、願いを叶えるという意思だけで死ぬことにしました……それでも不可能で、代わりか私が死ぬための道を用意してくれたみたいです」
アリシアは、俺に一枚の紙を見せる。
それは妻がいるのに聖女を愛した騎士ザロクの詳細が書かれた紙で、アリシアの話が続く。
「ダンジョンを踏破して意識を失い、二年後に目覚めた時はエリオス国でこの紙を持っていました」
「ダンジョンが踏破されたのは三年前――リラが別人のようになったのは、お前のせいか!」
リラに何が起きたのかはわからないが、アリシアがダンジョンを踏破したことによる影響のようだ。
そしてアリシアの話が続き、俺は驚愕することとなる。
「ダンジョンの願いで創られた私を消すことは無理でも、元となるアリシアは夫と心中する気でいた……貴方を夫と認識して、心中することならできそうです」
蘇生する予定だった本来のアリシアは、亡くなる前は踏破者の夫と心中する気でいた。
創られたアリシアは創造した主を消すことができず、ダンジョンで創られた存在だから願いを叶えても消えない。
代わりとして似た境遇の男を用意すれば、創造主ではないから心中できるようだ。
「ふざけるな! そのためならルアリサ国がどうなっても構わなかったのか!?」
「貴方が聖女レミルを愛したから起きたことでしょう。私は望みを叶えたかっただけ、知らない国がどうなろうと知ったことではありません」
アリシアから逃げることはできず、俺は捕まってしまう。
全てを後悔して――聖女と一緒に、最期を迎えようとしていた。
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