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34話

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 ザロクは明らかに魔力量が増加しているけど、思い当たる理由は一つしかない。
 龍の杖を所持していないか私が聞いただけでザロクは取り乱し、兵士に魔法を使い城から出ていった。

 この場に残っているマーシュ王子に、ラギン王子が尋ねる。

「マーシュ殿下。ザロクの行動について説明をお願いします」
「うっっ……俺にも何が起きたのかわからない! 今日はこれで失礼する!」
「あのような無礼な輩、二度と会いたくないものです……ルアリサ国とも、関わりたくありません」

 ラギン王子の発言を聞き、何も言い返さずマーシュ王子が逃げ去っていく。
 今日の出来事は広めるつもりのようで、今後はザロクの暴走を理由に関わらないようだ。

 ザロクとマーシュが出て行き、ラギンが私に話す。

「この場でザロクが攻撃魔法を使ったということは、僕に攻撃した可能性があるということになる」
「尋ねただけで、あれほど動揺するとは思いませんでした」
「マーシュも同じ反応だった辺り……ザロクには、何か隠していることがありそうだね」

 龍の杖を所持しているか調べようとしただけで、攻撃魔法を使い逃亡している。
 知られても問題ないはずだけど、取り上げられたら困ることがあるのだろうか?

「これで二度とルアリサ国と関わらなくて済みそうだ。一緒に対応してくれてありがとう」
「当然のことをしたまでです。私がこの場にいなければ、ザロクが何を言ったかわかりません」

 ラギンがお礼を伝えて、これで全てが終わったはず。
 ここまですれば、ルアリサ国が関わることはなさそうだ。

   ◇◆◇

 私はハロルドと屋敷に戻り、気になることがある。
 不安になるとハロルドは見抜くから、部屋で先に話しておこう。

「龍の杖をザロクが所持していたということは、レミルも所持している可能性があります」

 漫画の私は結婚による力の制限で倒されたけど、離婚しているから今は問題ないはず。
 そう考えていたけど……その変化により、龍の杖を得てしまったのかもしれない。

 これは警戒しなければならないことで、ハロルドが私に尋ねる。

「ザロクが兵士に魔法を使ったようだが、そこからどれだけ強くなったか推測できそうか?」
「そうですね……魔力量は数倍になっていた気がします」
「レミルの魔力が数倍になっていると、リラでも厳しいのだろうか?」

 その発言を聞き――焦っていた私は、冷静になることができる。

 漫画の世界でリラが倒されたのは、ザロクが結婚していたことで力を制限してきたからだ。
 魔力量は一割程度になり、回復能力も使えなくてようやく戦えるぐらい。
 力を制限されることがないから、龍の杖でレミルが強化されても問題なく倒せそう。

「いいえ。対処できるはずです」
「エリオス国には味方が多い。レミルがどんな手を使ってきたとしても、俺が対処するから安心して欲しい」

 警戒はするけど、ハロルドが傍にいてくれたから安堵できる。
 その後――ザロクと聖女レミルが、行方不明になったようだ。
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