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27話

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 私はラギン王子から、ルアリサ国について聞く。
 ドラゴンになり屋敷を破壊したことを、今になって連れ戻す理由にしたいようだ。

 バムリザ伯爵家の屋敷を破壊したこと関しては、私が元家族の魔法を跳ね返した結果として起きている。
 自業自得だから理由には使わなかったみたいだけど、ザロクの屋敷は私がドラゴンになりブレスで消し飛ばした。

「屋敷を消したのは浮気をしたザロクがリラを虐げていたからだ。そしてリラは賠償として鱗を渡したのに、それを砕いたザロクは連れ戻せると思っているのか?」
「賠償の件を僕達は知らないと思っているようだ。リラの悪評を流して恐怖させ、エリオス国にいるべきではないと思わせたいんだろうね」
「リラ様が戻る必要はありません!」

 ルアリサ国の行動にラギン王子が呆れて、クノエが断言する。
 貴族の屋敷を破壊した事実を伝え、恐怖させてエリオス国から追い出させる。
 それがルアリサ国の目論見だけど、私はエリオス国で活動し信頼を得た。

 私はルアリサ国に戻る気はなくて、拒めば何か行動を起こしそうだ。
 それが気になっていると、ラギン王子が私達を眺めて。

「ルアリサ国の要求は拒んだけど、近々その件でマーシュ王子とザロクがここにやって来るらしい」
「その二人が来るのなら行動は予測できる。ザロクがリラを挑発することで攻撃させ、エリオス国の王族に恐怖させたるのが狙いだ」

 ハロルドはルアリサ国にいた頃、私の鱗を取引しつつ情報収集をしている。
 そこからマーシュ王子と聖女の騎士ザロクの性格を把握して推測するけど、私も同意見だ。

「確かにそんな気がします。私がいない場合は、捏造した悪事を話しそうですね」
「ザロクは、そんなに酷いのか……」

 ハロルドと私の会話を聞き、ラギンとクノエは唖然としている。
 問題があるとすれば聖女レミルだけど、ルアリサ国を守る聖女だから来ることはないはず。
 私と会えばどんな行動をとるかわからないから、同行させるとは思えなかった。

「バムリザ伯爵家は家族の縁を切り、関わりたくないから不参加らしい」

 恐らく私に炎魔法を止められて、屋敷を破壊されたことが元家族はトラウマになっている。
 もう二度と会うこともなさそうだから、今はマーシュ王子とザロクの対応を決めておこう。

「エリオス国の王家は、私の味方と考えてよろしいのでしょうか?」
「当然だ。何を言われたとしても、リラをルアリサ国に戻す意志はないよ」
「それなら問題ありません。聖女が私を攻撃した音声を記録していますし、最悪の場合は力尽くで追い出します」

 虐げていたことや私が鱗を渡したことを、ザロクが認めるとは思えない。
 それでもルアリサ国の城内で起きた戦闘を録音しているし、強引な手段に出たら返り討ちにするだけだ。
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