私は執着していません

黒木 楓

文字の大きさ
上 下
10 / 15

10話

しおりを挟む
 半年前に、ギオウはカイン王子と会話をする機会があった。

 王子と友人関係になるため、学園に登校しないクラスメイトが心配という理由でギオウは何度も頼み込み、一度だけ謁見の許可が出る。

 公爵家の令息で同じクラスの男子ということもあり、時間はかかったが国王が認めてくれた。

 そして城内の部屋でカイン王子と対面し、ギオウは学園での出来事を話していく。

 その際に婚約者だったフィリアが作った魔石を見せると興味を持ったから、譲ることで親しくなろうとした。

 魔石を好きな理由は聞かれて欲しくなさそうにしていたから追求せず、自分には不要と言いフィリアの魔石を渡していく。

 そうしていると何度も会えるようになったカインは、ギオウが望んだ物を入手して渡してくれるようになる。

 カイン王子から物を受け取ったと教室で話し友人関係と言えば、生徒達から羨まれて気分がよかった。

 もうフィリアの魔石がなくても友人だろうとギオウは確信したのは、フィリアとの婚約を破棄した後も会うことができたからだ。

 カインがいない時は城の中に入れないが、カインの許可により問題なく入れたことにギオウは安堵していた。

 そして応接室で対面し、いつも通り談笑するだけだが意味はある。

 人嫌いの王子と関わっているだけでも学園の評判は高く、その立場からフィリアを蔑んでも信じてくれた。

 そしてカインも虚言を信じているから婚約を破棄した理由もフィリアのせいにでき、今回は婚約者アニスとの約束を果たそうとしている。

「今日は渡す魔石がなくてすまない。カイン殿下に頼みがある」

 何度も城で会話をしていると、部屋の中では敬語で話さなくていい関係となれた。

 これなら新しい婚約者のアニスを紹介したいと言えば、カインは会ってくれるに違いない。

「頼みか。僕もギオウに聞きたいことがあるが、先に話すといい」

「俺の婚約者アニスがカイン殿下に会いたいようだ。ずっと不登校なのを気にしているようで、一度だけでいいから話をしてくれないだろうか?」

 アニスは一度でも会えば、迫ることで確実に好かれると自信満々に話していた。

 どうしてそこまで自信家なのか内心で呆れながらも、一度ぐらいならカイン王子もアニスと会ってくれるだろう。

 申し訳なさそうに尋ねてみると、カインは無表情のまま返答する。

「断る。どうして僕が、アニスと会わなければならない」

「そ、それは……カイン殿下と友人の俺が、会わせると約束してしまったからだ!」

「僕と君は友人ではない。お互い利用し合っていただけだ」

「な、なにを言っている!?」

「数日前までは僕だってギオウを友人と思っていたが、全て聞いたから信用できない。友人と言うのならこの場で絶交するとしよう」

 冷めた目でギオウを眺めるカイン王子は、完全に興味を失っていると理解させられる。

 全て聞いたと言われたが、心当たりは元婚約者のフィリアしかいなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

婚約者が義妹を優先するので私も義兄を優先した結果

京佳
恋愛
私の婚約者は私よりも可愛い義妹を大事にする。いつも約束はドタキャンされパーティーのエスコートも義妹を優先する。私はブチ切れお前がその気ならコッチにも考えがある!と義兄にベッタリする事にした。「ずっとお前を愛してた!」義兄は大喜びして私を溺愛し始める。そして私は夜会で婚約者に婚約破棄を告げられたのだけど何故か彼の義妹が顔真っ赤にして怒り出す。 ちんちくりん婚約者&義妹。美形長身モデル体型の義兄。ざまぁ。溺愛ハピエン。ゆるゆる設定。

私を「ウザイ」と言った婚約者。ならば、婚約破棄しましょう。

夢草 蝶
恋愛
 子爵令嬢のエレインにはライという婚約者がいる。  しかし、ライからは疎んじられ、その取り巻きの少女たちからは嫌がらせを受ける日々。  心がすり減っていくエレインは、ある日思った。  ──もう、いいのではないでしょうか。  とうとう限界を迎えたエレインは、とある決心をする。

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

妹が公爵夫人になりたいようなので、譲ることにします。

夢草 蝶
恋愛
 シスターナが帰宅すると、婚約者と妹のキスシーンに遭遇した。  どうやら、妹はシスターナが公爵夫人になることが気に入らないらしい。  すると、シスターナは快く妹に婚約者の座を譲ると言って──  本編とおまけの二話構成の予定です。

妹と婚約者を交換したので、私は屋敷を出ていきます。後のこと? 知りません!

夢草 蝶
恋愛
 伯爵令嬢・ジゼルは婚約者であるロウと共に伯爵家を守っていく筈だった。  しかし、周囲から溺愛されている妹・リーファの一言で婚約者を交換することに。  翌日、ジゼルは新たな婚約者・オウルの屋敷へ引っ越すことに。

令嬢が婚約破棄をした数年後、ひとつの和平が成立しました。

夢草 蝶
恋愛
 公爵の妹・フューシャの目の前に、婚約者の恋人が現れ、フューシャは婚約破棄を決意する。  そして、婚約破棄をして一週間も経たないうちに、とある人物が突撃してきた。

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

処理中です...