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6話
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私の作る魔石を取引している魔道具店に、カイン王子がよく来ているらしい。
これを父が知っていれば会わせようとしただろうから、魔道具店に来ていることは誰も知らないのでしょう。
来ている理由を推測し、私は確認しておきたくなっている。
「ヤガダさんとの会話を聞くに、カイン殿下は魔道具職人になりたいようですね」
「カイン殿下がここに来て1年になりますが、熱意があり魔道具職人として力をつけています。普通とは違う魔道具を作ろうとして、自前の魔石を使っていましたが失敗させて壊していました」
そしてその魔石がギオウ経由で入手した私の作った魔石で、ヤガダは失敗作で壊すのは勿体ないと判断したらしい。
他の魔道具職人は商品として作っているけど、カイン王子は普通とは違う魔道具を作っているようだ。
「色々と作りたい魔道具のアイデアがあるのだが、失敗ばかりだ。僕がいる理由は話したし、フィリアがここにきた理由を教えて欲しい」
「そういえばそうでしたね。領主様からは、フィリア様が用意した魔石がどんな風に使われているか知るために来たと聞いています」
それは父に伝えていたことで、私の目的は他にある。
「確かに魔石の使い道は気になっていましたが、私の持つ岩神の加護を応用できないか試しに来ました」
「応用ですか?」
「はい。今まで魔石を数個作れる程度の力でしたが、他にも様々なことができるのではないかと推測しています。壊れた魔石はありますか?」
「それなら、僕が壊してしまったフィリアの魔石が幾つかある」
そう言ってカインが部屋の端に置いていたカバンを持ち、中から砕けている数種類の魔石がテーブルに並ぶ。
魔道具を作ろうとして失敗したことで、砕けてしまった魔石のようだ。
壊れた魔石は力を発揮できなくなってしまい、眺めているヤガダが落胆して。
「これが全てフィリア様の作った魔石だったなんて……知っていれば、絶対に止めていました」
「確かに見覚えがあります。幾つかお借りしたいのですが、よろしいでしょうか?」
「構わない。僕としてもフィリアの行動に興味がある」
頷いてくれたカインを眺めて、許可を得た私は幾つもの魔石を両手で拾い上げる。
壊れた魔石は効力を失った石となるから、普通は処分するらしい。
残っていたことに安堵して魔力を籠めると、予想通りただの石が元の魔石に戻っていく。
「……やっぱり、無から魔石を作るより、元々魔石だった石を魔石とした方が消費魔力は少ないようです」
私が試したかったのは岩神の加護による魔石の再生で、試したかったけど魔石だった石がなかった。
魔道具店ならありそうで来てみたのは正解だったけど、ヤガダとカイン王子が唖然としている。
私は思いつきで行動しただけなのに、魔道具職人からすればとんでもないことをしたようだ。
これを父が知っていれば会わせようとしただろうから、魔道具店に来ていることは誰も知らないのでしょう。
来ている理由を推測し、私は確認しておきたくなっている。
「ヤガダさんとの会話を聞くに、カイン殿下は魔道具職人になりたいようですね」
「カイン殿下がここに来て1年になりますが、熱意があり魔道具職人として力をつけています。普通とは違う魔道具を作ろうとして、自前の魔石を使っていましたが失敗させて壊していました」
そしてその魔石がギオウ経由で入手した私の作った魔石で、ヤガダは失敗作で壊すのは勿体ないと判断したらしい。
他の魔道具職人は商品として作っているけど、カイン王子は普通とは違う魔道具を作っているようだ。
「色々と作りたい魔道具のアイデアがあるのだが、失敗ばかりだ。僕がいる理由は話したし、フィリアがここにきた理由を教えて欲しい」
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それは父に伝えていたことで、私の目的は他にある。
「確かに魔石の使い道は気になっていましたが、私の持つ岩神の加護を応用できないか試しに来ました」
「応用ですか?」
「はい。今まで魔石を数個作れる程度の力でしたが、他にも様々なことができるのではないかと推測しています。壊れた魔石はありますか?」
「それなら、僕が壊してしまったフィリアの魔石が幾つかある」
そう言ってカインが部屋の端に置いていたカバンを持ち、中から砕けている数種類の魔石がテーブルに並ぶ。
魔道具を作ろうとして失敗したことで、砕けてしまった魔石のようだ。
壊れた魔石は力を発揮できなくなってしまい、眺めているヤガダが落胆して。
「これが全てフィリア様の作った魔石だったなんて……知っていれば、絶対に止めていました」
「確かに見覚えがあります。幾つかお借りしたいのですが、よろしいでしょうか?」
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頷いてくれたカインを眺めて、許可を得た私は幾つもの魔石を両手で拾い上げる。
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