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28話 サリナ視点

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 神龍の右腕と名乗った黒龍は、サリナとグレイを見下ろしながら。

「さて……俺の、神龍様の目的は聖女の力を利用して大地の魔力、龍脈の力を引き出すことにある」

「っっ……」

 利用と言われて、サリナは強張るしかない。

 首輪のせいで何も言えないでいると……グレイは黒龍に対して頭を下げ。

「黒龍様の言う通りにします……この女は、どうなっても構いません」

「グレイ殿下!?」

 サリナは叫ぶも、グレイは蔑んだ目を向けて。

「まったく使えない聖女に利用価値が生まれたんだ。黒龍様に感謝しろ」

 完全に切り捨てるようで、サリナは絶望するしかない。

 サリナとグレイを眺めながら、黒龍はグレイを指差して。

「後は城の譲渡だな。あそこが封印を解いた中心地だ。しばらくは俺達の拠点にする」

「……はっ?」

 黒龍の提案にグレイが唖然としているのは、聖女さえ渡せば解決すると思っていたからなのは間違いない。

 グレイの反応が気に入らないのか、黒龍は睨みを強めて。

「なんだ? 言う通りにするのだろう……これは冗談ではなく、本心からだ」

「ぐっ……」

 どうやらグレイは冗談なのか尋ねようとして、それを黒龍は言わせないようにしていた。

 両手を握りしめて堪えているも限界がきたのか、グレイが黒龍に叫ぶ。

「モンスター如きがふざけるなよ! お前達を城に案内すればモルドーラ国が終わる! それすらわからないのか!?」

「この国が終わろうがどうなろうが、俺達には関係のないことだ……そもそも、封印を解いた貴様、そして貴様の親父が元凶だぞ」

「ぐっっ……こ、交渉は決裂だ! 龍如きに城を渡すぐらいなら、俺達は戦って――」

 その発言を言い終わる前に、グレイの右腕が両断された。

「……えっ?」

 いつの間にか背中の大賢を黒龍が抜いていて、いつの間にか振っていた。

 それだけで――グレイの右腕が吹き飛んでいて、両断部から血を吹き出して。

「ぐっ……ああああぁぁぁっっ!? サリナ、早く回復魔法を使え!!」

「っっ……」

 グレイは激痛から悶え苦しみ、サリナに命令を出す。

 サリナとしては「嫌だ」と言うべきだと頭ではわかっているのに、首輪が熱くなって勝手に回復魔法をグレイに使っていた。

 それでも止血しかできず、グレイは呆然としながら目の前の黒龍に頭を下げている。

 サリナはそれを惨めだと内心嘲笑うも、黒龍はグレイに対して興味のなさそうな目を向けていた。

「こ、黒龍様のお力を拝見して考えが変わりました! ぜひ協力――」

「一度は許すが二度目は無い。本心から協力する気はなく、城内で倒すつもりでいたが……力の差が理解できていないようだな」

 そう呟いた瞬間――黒龍の大剣が再び振るわれて、グレイの肉体は両断されていた。

 黒龍によって目の前で婚約者が殺害されているも、サリナは何も思わなくなっていた。
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