見た目が地味で聖女に相応しくないと言われ追放された私は、本来の見た目に戻り隣国の聖女となりました

黒木 楓

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19話

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 あれから……私は王都の城下町で色々と買物をして、今日は宿で泊まることになっている。

 ゼスタが案内してくれたからかなり豪華な宿で、別々の部屋で泊まっていた。

 私はゼスタの部屋に行き、椅子に座ってテーブル越しに対面している。

 今までは買物を優先して聞かなかったけど、やっぱり聞いておきたい。

「あの……ゼスタ、様は、その……」

「いや、様は止めてくれ。いつも通りでいい……俺は、この国の第三王子だ」

 やっぱり王子のようだけど、ゼスタは様付けをやめて欲しいと言っている。

「わかりました。ゼスタ殿下」

「それも違う! 普通にゼスタと呼んでくれないか!?」

 かなり慌てた様子に、私は微笑みながら。

「冗談です。それでも……やっぱり他の人の前だと、ゼスタ殿下と呼んだ方がいいと思います」

「いや、これから聖女になるのだから、俺と君とは対等だ」

 私が王子と対等……そう言われると、私は困惑するしかない。

 それよりも気になっていることがあって、私は納得しつつゼスタに尋ねる。

「わかったけど、どうして第三王子が前線に出てバトルドラゴンと戦っていたの?」

 今までモルドーラ国で王子を見てきたけど、ゼスタの行動は明らかに異質だ。

 自分から前線で指揮をとっていた姿に驚くけど、ゼスタは真剣な表情で。

「それは、俺に戦う力があったからだ……国王は兄のどちらかがなればいいし、俺は民のために動きたかった」

 民のために動く。
 その思考は私と同じだけど、私はもう、人々をあまり信じられなくなっている。
 
 そう考えて私が俯いてしまうと、ゼスタは呟く。

「シーファ。君が人々を信じられないのはわかっている・・…それでも、この国の力になってくれないか?」

 ゼスタは自分が第三王子だと知られても、初対面と同じように頭を下げていた。

 今まで王子だと思えなかったのは、この行動にありそうだけど……そんなゼスタだからこそ、私は一緒に居たい。

「はい。これからも、よろしくお願いします」

 私も頭を下げて――聖女ではないと疑われないよう、本来の見た目に戻ろうとしていた。
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