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8話
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私は今までのことをゼスタに話したけど……本来の姿や本来の力については隠しながら伝えていた。
実力は私より下なのに、サリナの方が美しかったから私は見た目が地味で聖女に相応しくないと言われ、国外追放を受けたことにしている。
流石にさっきの聖魔力を見せておいて、サリナが同じ魔力とは言えなかったけど……それを聞いたゼスタは、困惑した様子で。
「モルドーラ国はそんなに酷いのか……今この周辺は大変だというのに、2人も居る聖女を1人にするとは……」
「ここ最近は平和でしたけど、周辺の国は違うのですか?」
私はモルドーラ国の情報しか耳に入っていなかったから、隣国の情報は一切伝わっていない。
それがわかっているようで、ゼスタは深く頷き。
「モルドーラ国が平和だったのは、聖女が2人居たからだろう……他の国を襲撃した方がいいと、神龍は考えたのかもしれない」
神龍……伝説の存在で、人々の恐怖心と魔力を取り込む人類最悪の敵。
封印されていたと聞いたことがあるけど……その神龍が、まるで封印を解いたかのようで、色々と腑に落ちてしまう。
もしかしたら、モルドーラ国が聖女を2人用意したのって、王子と婚約が決まったサリナを案じたからではなくて……
いいえ。
これは推測で、モルドーラ国と私はもう関係がない。
それでも……もし神龍の封印を解いたというのなら、聖女を1人にしたモルドーラ国が狙われてもおかしくはないと考えてしまう。
私は居るだけで聖女としての役目を果たしていたのかもしれないけど、国王は何を言っても聞く耳を持たなかった。
それはサリナも同じだから、自業自得だと割り切っていると、ゼスタが私を眺めて。
「シーファは何も悪くないさ。むしろ追放されたというのにその国を気にしている様子を見ると、君は聖女であるべきだと俺は思う」
真剣な眼差し……こんな私に、今の見た目なのに、ゼスタは本気で言っている。
「で、でも。私はの見た目は地味ですし……」
私が俯いてしまうと、ゼスタは少し考える素振りを見せてから、私に近づいて。
「……先に謝っておく」
「えっ!?」
そう言って――ゼスタが私の前髪に触れて、目が合っていた。
私の髪のせいでよく見えなかったゼスタの顔が、目と目があって……顔が赤くなっているのを自覚していると。
「やはり君は美しい……モルドーラ国がなんと言おうが、俺は君が美しいと胸を張って断言しよう!」
ゼスタは、今までモルドーラ国の誰も気にしていなかった私の本来の姿を、出会ってすぐに把握していたらしい。
髪をあげて眺めたゼスタの自信満々な、端麗な笑顔を目にして……私は胸の高鳴りを感じ取るしかなかった。
実力は私より下なのに、サリナの方が美しかったから私は見た目が地味で聖女に相応しくないと言われ、国外追放を受けたことにしている。
流石にさっきの聖魔力を見せておいて、サリナが同じ魔力とは言えなかったけど……それを聞いたゼスタは、困惑した様子で。
「モルドーラ国はそんなに酷いのか……今この周辺は大変だというのに、2人も居る聖女を1人にするとは……」
「ここ最近は平和でしたけど、周辺の国は違うのですか?」
私はモルドーラ国の情報しか耳に入っていなかったから、隣国の情報は一切伝わっていない。
それがわかっているようで、ゼスタは深く頷き。
「モルドーラ国が平和だったのは、聖女が2人居たからだろう……他の国を襲撃した方がいいと、神龍は考えたのかもしれない」
神龍……伝説の存在で、人々の恐怖心と魔力を取り込む人類最悪の敵。
封印されていたと聞いたことがあるけど……その神龍が、まるで封印を解いたかのようで、色々と腑に落ちてしまう。
もしかしたら、モルドーラ国が聖女を2人用意したのって、王子と婚約が決まったサリナを案じたからではなくて……
いいえ。
これは推測で、モルドーラ国と私はもう関係がない。
それでも……もし神龍の封印を解いたというのなら、聖女を1人にしたモルドーラ国が狙われてもおかしくはないと考えてしまう。
私は居るだけで聖女としての役目を果たしていたのかもしれないけど、国王は何を言っても聞く耳を持たなかった。
それはサリナも同じだから、自業自得だと割り切っていると、ゼスタが私を眺めて。
「シーファは何も悪くないさ。むしろ追放されたというのにその国を気にしている様子を見ると、君は聖女であるべきだと俺は思う」
真剣な眼差し……こんな私に、今の見た目なのに、ゼスタは本気で言っている。
「で、でも。私はの見た目は地味ですし……」
私が俯いてしまうと、ゼスタは少し考える素振りを見せてから、私に近づいて。
「……先に謝っておく」
「えっ!?」
そう言って――ゼスタが私の前髪に触れて、目が合っていた。
私の髪のせいでよく見えなかったゼスタの顔が、目と目があって……顔が赤くなっているのを自覚していると。
「やはり君は美しい……モルドーラ国がなんと言おうが、俺は君が美しいと胸を張って断言しよう!」
ゼスタは、今までモルドーラ国の誰も気にしていなかった私の本来の姿を、出会ってすぐに把握していたらしい。
髪をあげて眺めたゼスタの自信満々な、端麗な笑顔を目にして……私は胸の高鳴りを感じ取るしかなかった。
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