上 下
4 / 58

4話

しおりを挟む
 私は馬車を使わず、飛行魔法で空を飛びながら国境を抜けていた。

 聖魔力と無属性の魔法しか使えないけど、膨大な聖魔力があるからこれぐらいでは疲れない。

 馬車よりも早いし、このロウーラ国に行こうと思ったのは、ここがモルドーラ国の次に危険だと察知したからだ。

 サリナは妄言だと言い切っていたけど……自分の直感だけは信じたかった。

 平原を歩いていると、やけに怪我をしている動物が多くて……私は回復魔法を使って治していく。

 人間に敵意を持っているモンスターかどうかは敵意からすぐにわかるけど、言葉は通じない。

 それでも……1頭の銀色の馬が、私に感謝しているのか私に引っついてきて。

「貴方、背中に乗れって言っているの?」

 目の前の動物は魔力を宿している魔馬という知性のある馬で、鳴き声と同時に背中を出してくれる。

 もう誰も信じないと決めたばかりだけど、好意を拒むことはできない……私は背中に乗って、行く先を指差す。

「ここから一番人の魔力を感じる方向……きっとそこに、街があるわ」

 地理はモルドール国しか知らないけど、街の場所はわかる。

 魔力を宿していることもあって魔馬の速度は速く、1日は野宿をするも、翌日の昼過ぎには目的地の街に到着していた。

 私は魔馬の、レーマの毛並みを撫でながら整えて。

「レーマ……街に到着したら、馬宿で休ませてあげるからね」

 野宿の時に話して……お互い言葉は通じないけど、何を言っているのか大体わかる。

 どうやらこの子はメスのようで、私にずっと着いてきてくれると決意しているらしく、私はレーマと名付けていた。

 この子が裏切らない限りは一緒に居ようと考えながらも……街の壁が見えてきて、その壁に向かってモンスターの群れが襲撃している光景を私は目撃する。

「レーマ! 止まって!」

 すぐに止まってくれたレーラに木影に隠れてもらい、私は状況を確認する。

 どうやら銀髪の短い髪、凛々しい瞳をして鎧を纏っている美少年が戦いながら指揮をとっているようだ。

 私と同い年ぐらいの子なのに指揮をとれるだなんて、相当優秀なのだというのがわかる。

 それでも――戦っているのは二足歩行をしている蜥蜴のような見た目をしているドラゴン、バトルドラゴンと呼ばれている強力なモンスターの群れだ。

 最近はモルドール国を中心によく現れているようで、その数は8体。

 知性があって武器を扱い、1体1体が上位冒険者並の強さをもっているみたいで、半年に一度ぐらいの頻度で現れて被害を出していく。

 モルドール国に最近現れないから、皆が私が不要と認識して追放しようと決意した気がするけど……バトルドラゴンは隣国に現れていたようだ。

 レーマが巻き込まれないようかなり距離をとって私は飛行魔法を使い、人とドラゴンが戦闘をしている中心、指揮をとっている少年の隣に着地しようとしていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹よ。そんなにも、おろかとは思いませんでした

絹乃
恋愛
意地の悪い妹モニカは、おとなしく優しい姉のクリスタからすべてを奪った。婚約者も、その家すらも。屋敷を追いだされて路頭に迷うクリスタを救ってくれたのは、幼いころにクリスタが憧れていた騎士のジークだった。傲慢なモニカは、姉から奪った婚約者のデニスに裏切られるとも知らずに落ちぶれていく。※11話あたりから、主人公が救われます。

陰謀は、婚約破棄のその後で

秋津冴
恋愛
 王国における辺境の盾として国境を守る、グレイスター辺境伯アレクセイ。  いつも眠たそうにしている彼のことを、人は昼行灯とか怠け者とか田舎者と呼ぶ。  しかし、この王国は彼のおかげで平穏を保てるのだと中央の貴族たちは知らなかった。  いつものように、王都への定例報告に赴いたアレクセイ。  彼は、王宮の端でとんでもないことを耳にしてしまう。  それは、王太子ラスティオルによる、婚約破棄宣言。  相手は、この国が崇めている女神の聖女マルゴットだった。  一連の騒動を見届けたアレクセイは、このままでは聖女が謀殺されてしまうと予測する。  いつもの彼ならば関わりたくないとさっさと辺境に戻るのだが、今回は話しが違った。  聖女マルゴットは彼にとって一目惚れした相手だったのだ。  無能と蔑まれていた辺境伯が、聖女を助けるために陰謀を企てる――。  他の投稿サイトにも別名義で掲載しております。  この話は「本日は、絶好の婚約破棄日和です。」と「王太子妃教育を受けた私が、婚約破棄相手に復讐を果たすまで。」の二話の合間を描いた作品になります。  宜しくお願い致します。  

熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください。私は、堅実に生きさせてもらいますので。

木山楽斗
恋愛
侯爵令嬢であるアルネアには、婚約者がいた。 しかし、ある日その彼から婚約破棄を告げられてしまう。なんでも、アルネアの妹と婚約したいらしいのだ。 「熱烈な恋がしたいなら、勝手にしてください」 身勝手な恋愛をする二人に対して、アルネアは呆れていた。 堅実に生きたい彼女にとって、二人の行いは信じられないものだったのである。 数日後、アルネアの元にある知らせが届いた。 妹と元婚約者の間で、何か事件が起こったらしいのだ。

私と婚約破棄して妹と婚約!? ……そうですか。やって御覧なさい。後悔しても遅いわよ?

百谷シカ
恋愛
地味顔の私じゃなくて、可愛い顔の妹を選んだ伯爵。 だけど私は知っている。妹と結婚したって、不幸になるしかないって事を……

始まりはよくある婚約破棄のように

メカ喜楽直人
恋愛
「ミリア・ファネス公爵令嬢! 婚約者として10年も長きに渡り傍にいたが、もう我慢ならない! 父上に何度も相談した。母上からも考え直せと言われた。しかし、僕はもう決めたんだ。ミリア、キミとの婚約は今日で終わりだ!」 学園の卒業パーティで、第二王子がその婚約者の名前を呼んで叫び、周囲は固唾を呑んでその成り行きを見守った。 ポンコツ王子から一方的な溺愛を受ける真面目令嬢が涙目になりながらも立ち向い、けれども少しずつ絆されていくお話。 第一章「婚約者編」 第二章「お見合い編(過去)」 第三章「結婚編」 第四章「出産・育児編」 第五章「ミリアの知らないオレファンの過去編」連載開始

全てを義妹に奪われた令嬢は、精霊王の力を借りて復讐する

花宵
恋愛
大切なお母様にお兄様。 地位に名誉に婚約者。 私から全てを奪って処刑台へと追いやった憎き義妹リリアナに、精霊王の力を借りて復讐しようと思います。 辛い時に、私を信じてくれなかったバカな婚約者も要りません。 愛人に溺れ、家族を蔑ろにするグズな父親も要りません。 みんな揃って地獄に落ちるといいわ。 ※小説家になろうでも投稿中です

婚約者を奪われた私は、他国で新しい生活を送ります

天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルクルは、エドガー王子から婚約破棄を言い渡されてしまう。 聖女を好きにったようで、婚約破棄の理由を全て私のせいにしてきた。 聖女と王子が考えた嘘の言い分を家族は信じ、私に勘当を言い渡す。 平民になった私だけど、問題なく他国で新しい生活を送ることができていた。

婚約破棄された公爵令嬢は本当はその王国にとってなくてはならない存在でしたけど、もう遅いです

神崎 ルナ
恋愛
ロザンナ・ブリオッシュ公爵令嬢は美形揃いの公爵家の中でも比較的地味な部類に入る。茶色の髪にこげ茶の瞳はおとなしめな外見に拍車をかけて見えた。そのせいか、婚約者のこのトレント王国の王太子クルクスル殿下には最初から塩対応されていた。 そんな折り、王太子に近付く女性がいるという。 アリサ・タンザイト子爵令嬢は、貴族令嬢とは思えないほどその親しみやすさで王太子の心を捕らえてしまったようなのだ。 仲がよさげな二人の様子を見たロザンナは少しばかり不安を感じたが。 (まさか、ね) だが、その不安は的中し、ロザンナは王太子に婚約破棄を告げられてしまう。 ――実は、婚約破棄され追放された地味な令嬢はとても重要な役目をになっていたのに。 (※誤字報告ありがとうございます)

処理中です...