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2章
63話
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広場に到着して、私達は驚くしかない。
応援の人達の中に……なぜか、攻略キャラだったダドリックがいる。
私達は驚くけど、近くにいたラギルは誰なのかわかっていない様子だ。
そんな私達を見て、ダドリックは両手首についている魔道具の枷を見せつける。
「そんなに敵意を向けるなよ。今のオレは枷がついてる……発言を記録されてるのさ」
「だからどうした。なぜ貴様がここにいる!?」
レックス殿下が叫んだのは、一学期に私を捕えようと動いたからだ。
操られていたルートとは違い、ダドリックは自らの意思でロウデス教側についた。
もう二度と会うことはないと考えていたけど、数ヶ月で再開することとなっている。
再び私を狙いに来たのかと敵意を剥き出しにする中、ダドリックは話す。
「保護観察ってやつですよ……評価を下げたくないんで、王子様は突っかかるのを止めてくれませんかねぇ?」
「優秀な若い魔法士だったから、更正の機会を与えられたんだろうね……魔法披露会の準備に来るとは、思わなかったよ」
「ロイ様は話が早くていい、そこの王子様とは大違いだ」
そう言ってレックス殿下を指差すダドリックは、枷がついても本質は全然変わっていない。
こんな行動をとってくる辺り、記録されているのは発言だけの気がする。
「ぐっ……貴様、相変わらずだな」
「オレはオレだ。こんなんで変わるわけねぇだろ」
そう言っていたけど、ダドリックはゲームと違いロウデス教団員になって力を得たりしている。
まさか保護観察で戻って来るなんて、私は考えていない。
授業で学んだから、この世界での処罰はある程度知っていた。
魔道具の枷で会話内容や言動は記録されて、観察官と呼ばれる人がチェックする。
数年から数十年間もの間、人々の為に活動することで……問題ないと判断された時に解放されるはず。
ダドリックの罪は公爵令嬢の誘拐だけど、邪神教に唆されていたこともあって罪がそこまで重くないのかもしれない。
保護観察について思い出している最中にも、レックス殿下とダドリックは言い合いを続けている。
「貴様は危険だ。リリアンに近づくな」
「上の指示次第、リリアン様次第としか言えませんよ」
「そうか……なら、貴様の意思では近づくな!」
一学期の件もあって二人の仲は悪いけど、これに関しては仕方がない。
ダドリックは元学生でグリムラ魔法学園内のことを知っているから、魔法披露会準備の応援に呼ばれたはず。
もうロウデス教とは無関係なら、気にする必要はないのかもしれない。
それでも……これから起こる問題を考えると、ゲームの力が働いたのではないかと不安になってしまう。
披露会の準備を終えれば関わることもなくなるだろうから……それまでの間、レックス殿下からあまり離れないようにしよう。
◇◆◇
ダドリックは応援として来ていたから、すぐに私達の元を離れていく。
レックス殿下が憤っていると、少し離れた場所で眺めていたラギルがやって来る。
「冒険者の顔見知りが何人かいました……あの、さっきの人は誰ですか?」
「元生徒のダドリックだ」
「ダドリック……二組のトップだった人ですね」
名前を聞いて納得した様子だけど、ラギルは不満げな表情を浮かべている。
それが気になったのか、カレンが尋ねる。
「ラギル様は、ダドリック様を知っているのですか?」
「はい。エドガー様から迷惑な存在だった聞いています……戻ってくるとは、エドガー様が心配です」
「彼は応援だし、保護観察で発言と位置は確認されているから、大丈夫だと思うけどね」
「……それでも、エドガー様には近づけません」
どうやらラギルは、推薦してくれたエドガーに対する忠誠心が相当高いようだ。
元冒険者で行きたかった魔法学園に入れるきっかけだから、強く慕ってもおかしくはない。
「俺も、ダドリックをリリアンの元に近づけたくないものだ」
ラギルの発言に賛同するように、レックス殿下が頷く。
ここまで警戒されていると大丈夫な気がするけど……私も、警戒するしかなかった。
応援の人達の中に……なぜか、攻略キャラだったダドリックがいる。
私達は驚くけど、近くにいたラギルは誰なのかわかっていない様子だ。
そんな私達を見て、ダドリックは両手首についている魔道具の枷を見せつける。
「そんなに敵意を向けるなよ。今のオレは枷がついてる……発言を記録されてるのさ」
「だからどうした。なぜ貴様がここにいる!?」
レックス殿下が叫んだのは、一学期に私を捕えようと動いたからだ。
操られていたルートとは違い、ダドリックは自らの意思でロウデス教側についた。
もう二度と会うことはないと考えていたけど、数ヶ月で再開することとなっている。
再び私を狙いに来たのかと敵意を剥き出しにする中、ダドリックは話す。
「保護観察ってやつですよ……評価を下げたくないんで、王子様は突っかかるのを止めてくれませんかねぇ?」
「優秀な若い魔法士だったから、更正の機会を与えられたんだろうね……魔法披露会の準備に来るとは、思わなかったよ」
「ロイ様は話が早くていい、そこの王子様とは大違いだ」
そう言ってレックス殿下を指差すダドリックは、枷がついても本質は全然変わっていない。
こんな行動をとってくる辺り、記録されているのは発言だけの気がする。
「ぐっ……貴様、相変わらずだな」
「オレはオレだ。こんなんで変わるわけねぇだろ」
そう言っていたけど、ダドリックはゲームと違いロウデス教団員になって力を得たりしている。
まさか保護観察で戻って来るなんて、私は考えていない。
授業で学んだから、この世界での処罰はある程度知っていた。
魔道具の枷で会話内容や言動は記録されて、観察官と呼ばれる人がチェックする。
数年から数十年間もの間、人々の為に活動することで……問題ないと判断された時に解放されるはず。
ダドリックの罪は公爵令嬢の誘拐だけど、邪神教に唆されていたこともあって罪がそこまで重くないのかもしれない。
保護観察について思い出している最中にも、レックス殿下とダドリックは言い合いを続けている。
「貴様は危険だ。リリアンに近づくな」
「上の指示次第、リリアン様次第としか言えませんよ」
「そうか……なら、貴様の意思では近づくな!」
一学期の件もあって二人の仲は悪いけど、これに関しては仕方がない。
ダドリックは元学生でグリムラ魔法学園内のことを知っているから、魔法披露会準備の応援に呼ばれたはず。
もうロウデス教とは無関係なら、気にする必要はないのかもしれない。
それでも……これから起こる問題を考えると、ゲームの力が働いたのではないかと不安になってしまう。
披露会の準備を終えれば関わることもなくなるだろうから……それまでの間、レックス殿下からあまり離れないようにしよう。
◇◆◇
ダドリックは応援として来ていたから、すぐに私達の元を離れていく。
レックス殿下が憤っていると、少し離れた場所で眺めていたラギルがやって来る。
「冒険者の顔見知りが何人かいました……あの、さっきの人は誰ですか?」
「元生徒のダドリックだ」
「ダドリック……二組のトップだった人ですね」
名前を聞いて納得した様子だけど、ラギルは不満げな表情を浮かべている。
それが気になったのか、カレンが尋ねる。
「ラギル様は、ダドリック様を知っているのですか?」
「はい。エドガー様から迷惑な存在だった聞いています……戻ってくるとは、エドガー様が心配です」
「彼は応援だし、保護観察で発言と位置は確認されているから、大丈夫だと思うけどね」
「……それでも、エドガー様には近づけません」
どうやらラギルは、推薦してくれたエドガーに対する忠誠心が相当高いようだ。
元冒険者で行きたかった魔法学園に入れるきっかけだから、強く慕ってもおかしくはない。
「俺も、ダドリックをリリアンの元に近づけたくないものだ」
ラギルの発言に賛同するように、レックス殿下が頷く。
ここまで警戒されていると大丈夫な気がするけど……私も、警戒するしかなかった。
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