悪役令嬢に転生するも魔法に夢中でいたら王子に溺愛されました

黒木 楓

文字の大きさ
上 下
82 / 109
2章

63話

しおりを挟む
 広場に到着して、私達は驚くしかない。
 応援の人達の中に……なぜか、攻略キャラだったダドリックがいる。
 私達は驚くけど、近くにいたラギルは誰なのかわかっていない様子だ。
 そんな私達を見て、ダドリックは両手首についている魔道具の枷を見せつける。

「そんなに敵意を向けるなよ。今のオレは枷がついてる……発言を記録されてるのさ」

「だからどうした。なぜ貴様がここにいる!?」

 レックス殿下が叫んだのは、一学期に私を捕えようと動いたからだ。
 操られていたルートとは違い、ダドリックは自らの意思でロウデス教側についた。
 もう二度と会うことはないと考えていたけど、数ヶ月で再開することとなっている。
 再び私を狙いに来たのかと敵意を剥き出しにする中、ダドリックは話す。 

「保護観察ってやつですよ……評価を下げたくないんで、王子様は突っかかるのを止めてくれませんかねぇ?」

「優秀な若い魔法士だったから、更正の機会を与えられたんだろうね……魔法披露会の準備に来るとは、思わなかったよ」

「ロイ様は話が早くていい、そこの王子様とは大違いだ」

 そう言ってレックス殿下を指差すダドリックは、枷がついても本質は全然変わっていない。
 こんな行動をとってくる辺り、記録されているのは発言だけの気がする。

「ぐっ……貴様、相変わらずだな」

「オレはオレだ。こんなんで変わるわけねぇだろ」

 そう言っていたけど、ダドリックはゲームと違いロウデス教団員になって力を得たりしている。
 まさか保護観察で戻って来るなんて、私は考えていない。

 授業で学んだから、この世界での処罰はある程度知っていた。
 魔道具の枷で会話内容や言動は記録されて、観察官と呼ばれる人がチェックする。
 数年から数十年間もの間、人々の為に活動することで……問題ないと判断された時に解放されるはず。
 ダドリックの罪は公爵令嬢の誘拐だけど、邪神教に唆されていたこともあって罪がそこまで重くないのかもしれない。
 保護観察について思い出している最中にも、レックス殿下とダドリックは言い合いを続けている。

「貴様は危険だ。リリアンに近づくな」

「上の指示次第、リリアン様次第としか言えませんよ」

「そうか……なら、貴様の意思では近づくな!」

 一学期の件もあって二人の仲は悪いけど、これに関しては仕方がない。
 ダドリックは元学生でグリムラ魔法学園内のことを知っているから、魔法披露会準備の応援に呼ばれたはず。
 もうロウデス教とは無関係なら、気にする必要はないのかもしれない。

 それでも……これから起こる問題を考えると、ゲームの力が働いたのではないかと不安になってしまう。
 披露会の準備を終えれば関わることもなくなるだろうから……それまでの間、レックス殿下からあまり離れないようにしよう。  

   ◇◆◇

 ダドリックは応援として来ていたから、すぐに私達の元を離れていく。
 レックス殿下が憤っていると、少し離れた場所で眺めていたラギルがやって来る。

「冒険者の顔見知りが何人かいました……あの、さっきの人は誰ですか?」

「元生徒のダドリックだ」

「ダドリック……二組のトップだった人ですね」

 名前を聞いて納得した様子だけど、ラギルは不満げな表情を浮かべている。
 それが気になったのか、カレンが尋ねる。

「ラギル様は、ダドリック様を知っているのですか?」

「はい。エドガー様から迷惑な存在だった聞いています……戻ってくるとは、エドガー様が心配です」

「彼は応援だし、保護観察で発言と位置は確認されているから、大丈夫だと思うけどね」

「……それでも、エドガー様には近づけません」

 どうやらラギルは、推薦してくれたエドガーに対する忠誠心が相当高いようだ。
 元冒険者で行きたかった魔法学園に入れるきっかけだから、強く慕ってもおかしくはない。

「俺も、ダドリックをリリアンの元に近づけたくないものだ」

 ラギルの発言に賛同するように、レックス殿下が頷く。
 ここまで警戒されていると大丈夫な気がするけど……私も、警戒するしかなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

逃げて、追われて、捕まって

あみにあ
恋愛
平民に生まれた私には、なぜか生まれる前の記憶があった。 この世界で王妃として生きてきた記憶。 過去の私は貴族社会の頂点に立ち、さながら悪役令嬢のような存在だった。 人を蹴落とし、気に食わない女を断罪し、今思えばひどい令嬢だったと思うわ。 だから今度は平民としての幸せをつかみたい、そう願っていたはずなのに、一体全体どうしてこんな事になってしまたのかしら……。 2020年1月5日より 番外編:続編随時アップ 2020年1月28日より 続編となります第二章スタートです。 **********お知らせ*********** 2020年 1月末 レジーナブックス 様より書籍化します。 それに伴い短編で掲載している以外の話をレンタルと致します。 ご理解ご了承の程、宜しくお願い致します。

聖女としてきたはずが要らないと言われてしまったため、異世界でふわふわパンを焼こうと思います!

伊桜らな
ファンタジー
家業パン屋さんで働くメルは、パンが大好き。 いきなり聖女召喚の儀やらで異世界に呼ばれちゃったのに「いらない」と言われて追い出されてしまう。どうすればいいか分からなかったとき、公爵家当主に拾われ公爵家にお世話になる。 衣食住は確保できたって思ったのに、パンが美味しくないしめちゃくちゃ硬い!! パン好きなメルは、厨房を使いふわふわパン作りを始める。  *表紙画は月兎なつめ様に描いて頂きました。*  ー(*)のマークはRシーンがあります。ー  少しだけ展開を変えました。申し訳ありません。  ホットランキング 1位(2021.10.17)  ファンタジーランキング1位(2021.10.17)  小説ランキング 1位(2021.10.17)  ありがとうございます。読んでくださる皆様に感謝です。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

子持ち主婦がメイドイビリ好きの悪役令嬢に転生して育児スキルをフル活用したら、乙女ゲームの世界が変わりました

あさひな
ファンタジー
二児の子供がいるワーキングマザーの私。仕事、家事、育児に忙殺され、すっかりくたびれた中年女になり果てていた私は、ある日事故により異世界転生を果たす。 転生先は、前世とは縁遠い公爵令嬢「イザベル・フォン・アルノー」だったが……まさかの乙女ゲームの悪役令嬢!? しかも乙女ゲームの内容が全く思い出せないなんて、あんまりでしょ!! 破滅フラグ(攻略対象者)から逃げるために修道院に逃げ込んだら、子供達の扱いに慣れているからと孤児達の世話役を任命されました。 そりゃあ、前世は二児の母親だったので、育児は身に染み付いてますが、まさかそれがチートになるなんて! しかも育児知識をフル活用していたら、なんだか王太子に気に入られて婚約者に選ばれてしまいました。 攻略対象者から逃げるはずが、こんな事になるなんて……! 「貴女の心は、美しい」 「ベルは、僕だけの義妹」 「この力を、君に捧げる」 王太子や他の攻略対象者から執着されたり溺愛されながら、私は現世の運命に飲み込まれて行くーー。 ※なろう(現在非公開)とカクヨムで一部掲載中

私が死んで満足ですか?

マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。 ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。 全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。 書籍化にともない本編を引き下げいたしました

【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?

雨宮羽那
恋愛
 元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。 ◇◇◇◇  名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。  自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。    運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!  なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!? ◇◇◇◇ お気に入り登録、エールありがとうございます♡ ※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。 ※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。 ※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

勇者パーティを追放された聖女ですが、やっと解放されてむしろ感謝します。なのにパーティの人たちが続々と私に助けを求めてくる件。

八木愛里
ファンタジー
聖女のロザリーは戦闘中でも回復魔法が使用できるが、勇者が見目麗しいソニアを新しい聖女として迎え入れた。ソニアからの入れ知恵で、勇者パーティから『役立たず』と侮辱されて、ついに追放されてしまう。 パーティの人間関係に疲れたロザリーは、ソロ冒険者になることを決意。 攻撃魔法の魔道具を求めて魔道具屋に行ったら、店主から才能を認められる。 ロザリーの実力を知らず愚かにも追放した勇者一行は、これまで攻略できたはずの中級のダンジョンでさえ失敗を繰り返し、仲間割れし破滅へ向かっていく。 一方ロザリーは上級の魔物討伐に成功したり、大魔法使いさまと協力して王女を襲ってきた魔獣を倒したり、国の英雄と呼ばれる存在になっていく。 これは真の実力者であるロザリーが、ソロ冒険者としての地位を確立していきながら、残念ながら追いかけてきた魔法使いや女剣士を「虫が良すぎるわ!」と追っ払い、入り浸っている魔道具屋の店主が実は憧れの大魔法使いさまだが、どうしても本人が気づかない話。 ※11話以降から勇者パーティの没落シーンがあります。 ※40話に鬱展開あり。苦手な方は読み飛ばし推奨します。 ※表紙はAIイラストを使用。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。