妹と違って無能な姉だと蔑まれてきましたが、実際は逆でした

黒木 楓

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14話

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 セローナと聖魔力を比べることになって、結果は私の圧勝だった。

 それでもセローナは認めず、疲労しながらも大声で叫び出す。

「嘘よ……こんなの何かの間違いに決まっています! アゼル殿下の魔道具による妨害です!!」

 それに対して、貴族達が反論する。

「アゼル殿下はここ最近、測定を行う魔道具の研究に集中していました。そんな暇はありません……いい加減、認めたらどうですか?」

「まったくだ。あまりにも惨め過ぎる。不都合が起きて認めずわめく、こんなのがこの国の聖女とはな……」

「聖女に相応しい姉と、無能な妹……こんな無能を聖女にしてしまうとは、シャロン様も迷惑な妹を持ったものだ」

 貴族の1人が口にした――聖女に相応しい姉と、無能な妹という発言は、セローナにとって直面したくない状況のようだ。

 セローナが取り乱し、奇声をあげて意識を失ったけど……どうやら、そこまで受け入れたくないようね。

 今までの言動を思い返し、これからの未来を想定した結果、セローナの精神は壊れてしまったのでしょう。

 もう家を捨てると決意した私には妹の自業自得だとしか思えず、それよりも貴族達が、私を様付けし始めたのが嫌になっている。

 あれだけ蔑んでおいて、今更全てを妹セローナのせいにして手の平を返そうとしている。

 それが不愉快になっていると、どうやら私がセローナを倒したと思ったのか……眺めていた陛下、王子、貴族達が歓喜の声を出す。

「もう聖女の力はセローナのモノになってしまったが、セローナの補佐として勤めてもらおう!」

「素晴らしい……シャロン様は聖女に相応しいお力です!!」

「やはり俺の婚約者はセローナではなく、姉のシャロンだったか!」

 第二王子ルゼン殿下は、さっさと婚約者をセローナから私に変えたいようね。

 そしてルオドラン陛下は勝手に私の役目を決めてくるけど……正気だろうか?

 この場に居る人たちは、今まで私は不当な扱いをされてきたから、聖女として認めれば喜ぶだろうと本気で思っていそう。

 そして私は――唯一凄い人だと認めているアゼル殿下が、いつの間にか居なくなっていることに気付く。

 貴族達が手の平を返す光景が予想できて、不愉快だから見たくなかったのかもしれない。 

 この場に一番居て欲しかった人が居ないことに残念になるけど、むしろこれでよかったのかもしれない。

 これから私は――この国、ルオドラン国から出て行く。

 もしアゼル殿下に止められたら決意が揺らぎそうだったから、この場に居なくて安堵していた。

 アゼル殿下にだけは、別れの挨拶をしたかったけど、こうなったら仕方がない。

 そう考えて――私は、ルオドラン国から出て行こうとしていた。
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