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69話
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私とレーリアはリドラの街を出て少し離れた平原で――待機している冒険者達を目にする。
先頭に居るのはロドリゴとゾートの2人で、ギルドマスターのロドリゴが指揮をとるようだ。
「どうやらあの先に塔があり、塔から出てきたことを確認して報告したのでしょう……まだ距離があります」
「塔から距離を離して戦おうとしているのは、どうしてかしら?」
街に被害を出さないのなら、塔の周辺で戦った方がいい気がする。
塔を監視していた冒険者達が街に連絡をして、それを受けた冒険者達が街と塔の間ぐらいの距離で待機しているのがよく解らないでいると、レーリアが頷いて。
「恐らく、塔に近づくと、塔を守るためのゴーレムが出現するからでしょう……今回の依頼は、あくまで防衛です」
レーリアが教えてくれた後、塔の方向から街に迫ってくるゴーレムの群れが見えて――四足歩行の動物型ゴーレム30体を先頭に、その後ろを20体ほどの人型ゴーレムが走っている。
土で作られているのが一目で解るから、間違いなくゴーレムだ。
動物型は虎とか狼のような早そうに見える姿をしていて、人型はそこから更に土でできた武器を持っている。
前衛の冒険者達が武器を構えて戦闘態勢に入り、レーリアはゴーレムを眺めて。
「魔石によるもので単調な命令しか出していないのでしょう。それでも、数的には不利ですね」
確かに……防衛依頼を受けている冒険者達はBランク以上だと聞いているから、私とレーリアを含めても合計20人ぐらいしか居ない。
先頭の冒険者が動物型ゴーレムに武器を振るって、本格的な防衛依頼が始まった。
冒険者達はゴーレムに攻撃を与えていくけど、ゴーレムは痛みを受けず体を崩しながら迫り、肉体が維持できなくなったと思えば大きな爆発を引き起こしている。
「ひっ……」
自爆することは知っていたけど……目の前で轟音が響くと、私は恐怖で震えるしかない。
「……アカネ様。私がついているので大丈夫です」
そう言いながらもレーリアが辛そうな表情をしているのは、魔法使いだけど前に出るしかないからでしょう。
塔を建てたのがレーリアの兄リアークだから……防衛中に冒険者側のレーリアに攻撃されることを恐れてか、冒険者達は皆レーリアと私を避けている。
助けてくれる可能性がありそうなギルドリーダーのロドリゴは、先頭で指揮をとっているから無理だ。
私とレーリアを守る義理もない……きっとレーリアは、周囲に前衛になって戦ってくれる人が誰も居ない状況で、私を守り切れるかが不安になっているはず。
レーリアに任せて私が街で待機していた場合、万が一追手が来たら捕まる可能性が高いから、街で待っていることはできなかった。
「アカネ様と一緒に前に出るか、前衛で戦っている人の後ろにつくか……前衛に出るのは危険。前衛の後ろにつくと私のせいで後方を警戒し、注意力が鈍ってやられる可能性が高い……」
珍しくレーリアが焦っていて、これからどうすればいいのか独り言が口から出ている。
ゴーレムは人の元に向かって攻撃を仕掛けてくるみたいで、後衛に居たとしても数が多いから私達に迫ってくるはず。
「どうすれば……」
何か手はないかと考えていると――私とレーリアの前に、跳躍して1人の少年が着地する。
私とレーリアの目の前には、獣人の少年の背中が見えて。
「……ウォル?」
さっきまで前衛で武器を振るってゴーレム数体を倒し、自爆による爆風を後方に跳ぶことで回避していたウォルが、私とレーリアの前までやって来ていた。
先頭に居るのはロドリゴとゾートの2人で、ギルドマスターのロドリゴが指揮をとるようだ。
「どうやらあの先に塔があり、塔から出てきたことを確認して報告したのでしょう……まだ距離があります」
「塔から距離を離して戦おうとしているのは、どうしてかしら?」
街に被害を出さないのなら、塔の周辺で戦った方がいい気がする。
塔を監視していた冒険者達が街に連絡をして、それを受けた冒険者達が街と塔の間ぐらいの距離で待機しているのがよく解らないでいると、レーリアが頷いて。
「恐らく、塔に近づくと、塔を守るためのゴーレムが出現するからでしょう……今回の依頼は、あくまで防衛です」
レーリアが教えてくれた後、塔の方向から街に迫ってくるゴーレムの群れが見えて――四足歩行の動物型ゴーレム30体を先頭に、その後ろを20体ほどの人型ゴーレムが走っている。
土で作られているのが一目で解るから、間違いなくゴーレムだ。
動物型は虎とか狼のような早そうに見える姿をしていて、人型はそこから更に土でできた武器を持っている。
前衛の冒険者達が武器を構えて戦闘態勢に入り、レーリアはゴーレムを眺めて。
「魔石によるもので単調な命令しか出していないのでしょう。それでも、数的には不利ですね」
確かに……防衛依頼を受けている冒険者達はBランク以上だと聞いているから、私とレーリアを含めても合計20人ぐらいしか居ない。
先頭の冒険者が動物型ゴーレムに武器を振るって、本格的な防衛依頼が始まった。
冒険者達はゴーレムに攻撃を与えていくけど、ゴーレムは痛みを受けず体を崩しながら迫り、肉体が維持できなくなったと思えば大きな爆発を引き起こしている。
「ひっ……」
自爆することは知っていたけど……目の前で轟音が響くと、私は恐怖で震えるしかない。
「……アカネ様。私がついているので大丈夫です」
そう言いながらもレーリアが辛そうな表情をしているのは、魔法使いだけど前に出るしかないからでしょう。
塔を建てたのがレーリアの兄リアークだから……防衛中に冒険者側のレーリアに攻撃されることを恐れてか、冒険者達は皆レーリアと私を避けている。
助けてくれる可能性がありそうなギルドリーダーのロドリゴは、先頭で指揮をとっているから無理だ。
私とレーリアを守る義理もない……きっとレーリアは、周囲に前衛になって戦ってくれる人が誰も居ない状況で、私を守り切れるかが不安になっているはず。
レーリアに任せて私が街で待機していた場合、万が一追手が来たら捕まる可能性が高いから、街で待っていることはできなかった。
「アカネ様と一緒に前に出るか、前衛で戦っている人の後ろにつくか……前衛に出るのは危険。前衛の後ろにつくと私のせいで後方を警戒し、注意力が鈍ってやられる可能性が高い……」
珍しくレーリアが焦っていて、これからどうすればいいのか独り言が口から出ている。
ゴーレムは人の元に向かって攻撃を仕掛けてくるみたいで、後衛に居たとしても数が多いから私達に迫ってくるはず。
「どうすれば……」
何か手はないかと考えていると――私とレーリアの前に、跳躍して1人の少年が着地する。
私とレーリアの目の前には、獣人の少年の背中が見えて。
「……ウォル?」
さっきまで前衛で武器を振るってゴーレム数体を倒し、自爆による爆風を後方に跳ぶことで回避していたウォルが、私とレーリアの前までやって来ていた。
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