55 / 117
55話
しおりを挟む
夕暮れから夜になりそうで、私はレーリアに案内されて冒険者ギルドに向かっている。
私としてはお米を入手できて満足しているし、この街を拠点に住みたいけど……問題は家だ。
歩きながら、私はレーリアに尋ねる。
「ここを拠点にしたいとは言ったけど、住む場所とかはどうしよう?」
「それも問題はありません。しばらくは宿をとり、冒険者として活動することでランクを上げます」
「ランク?」
レーリアはしっかり考えてくれているみたいで安心しているけど、冒険者については何も知らない。
「はい。Eから始まって最高はSです。Cランク冒険者になると優遇されるようになり、エルフが居ても家の購入を問題なく行えるようになります」
どうやらリドラの街でエルフが住むには、実力を証明しないといけないようね。
「Cランクって、どれぐらいで上がるの?」
「ギルドにクエストかあるかどうかで変わりますが……私とアカネ様なら1ヶ月以内にCランクに上がることを約束致します」
真剣な眼差しでレーリアが私を見るけど、凜々しくて端麗な顔立ちが眩しい。
「わ、わかったわ……冒険者登録の時って、名前はどうするの?」
「冒険者登録をした際に受け取るギルドカードは偽名が使えませんが、調査する術もありませんし大丈夫です。冒険者ランクを上げるのは冒険者側が決められますので、Bランクぐらいで抑えておけば問題ないでしょう」
有名になりすぎてマミカ達が追ってきても面倒だから、Bランクになったらランクを上げなければいいみたいね。
今後の方針を決めた私達は――冒険者ギルドに到着していた。
× × ×
食事時ということもあって、冒険者ギルドの中は賑わっている。
酒場も併設しているみたいで……役所に食堂がついているような感じだ。
獣人やエルフの姿も見えて賑わっている光景を目にして――私は全身を震わせる。
視線が集まっている。
凝視しすぎたかもしれないから慌ててレーリアに目をやると、小声で私に呟いて。
「……申しわけありません。どうやら、私に原因があるみたいです」
そう言われるけど、理由がよく解らない。
それからはレーリアの言うとおりに動き、私主導で冒険者登録をしていく。
最初はエルフを従えていることに受付の人が驚いた様子で……すぐに冷静になっていた。
エルフを従えている人は珍しいから、各ギルドに1人は居るらしいギルドマスターに会わなければならないらしくて……私とレーリアは別室に案内される。
受付の人に着いていきながら、私はレーリアに尋ねる。
「……エルフを従えているって、そんなに珍しいの?」
「いえ。人界だとエルフが冒険者登録をするのなら、人が従えていても何もおかしくはないはずですが……」
どうやらギルドマスターに会うことは想定外のようで、レーリアは真剣な表情になっている。
そして、受付のお姉さんが部屋に案内してくれて中に入ると……そこには初老の青年が居た。
短い白髪のゴツゴツとした顔立ち、鎧を身に纏い、巨大な斧を背負った強そうな人。
その人がレーリアを睨んだかと思えば――私は、レーリアに抱きしめられていた。
「――えっ?」
いきなり抱きしめられて動揺していると、叫び声が耳に入ってくる。
「報告通りの見た目……貴様が! この街を破壊しようと目論むエルフか!!」
レーリアの胸しか見えないから、今の私は部屋の光景が何も見えていない。
部屋に居た青年の叫びと同時に――部屋に入ってくる何人もの足音が聞こえて、どうやら私達は取り囲まれているようだ。
レーリアが私を抱きしめているのは守るためだと理解したけど、レーリアがリドラの街を破壊する?
誤解なのは間違いない。
それでも――冒険者ギルドの人達はレーリアに敵意を持ち、私達を取り囲んでいた。
私としてはお米を入手できて満足しているし、この街を拠点に住みたいけど……問題は家だ。
歩きながら、私はレーリアに尋ねる。
「ここを拠点にしたいとは言ったけど、住む場所とかはどうしよう?」
「それも問題はありません。しばらくは宿をとり、冒険者として活動することでランクを上げます」
「ランク?」
レーリアはしっかり考えてくれているみたいで安心しているけど、冒険者については何も知らない。
「はい。Eから始まって最高はSです。Cランク冒険者になると優遇されるようになり、エルフが居ても家の購入を問題なく行えるようになります」
どうやらリドラの街でエルフが住むには、実力を証明しないといけないようね。
「Cランクって、どれぐらいで上がるの?」
「ギルドにクエストかあるかどうかで変わりますが……私とアカネ様なら1ヶ月以内にCランクに上がることを約束致します」
真剣な眼差しでレーリアが私を見るけど、凜々しくて端麗な顔立ちが眩しい。
「わ、わかったわ……冒険者登録の時って、名前はどうするの?」
「冒険者登録をした際に受け取るギルドカードは偽名が使えませんが、調査する術もありませんし大丈夫です。冒険者ランクを上げるのは冒険者側が決められますので、Bランクぐらいで抑えておけば問題ないでしょう」
有名になりすぎてマミカ達が追ってきても面倒だから、Bランクになったらランクを上げなければいいみたいね。
今後の方針を決めた私達は――冒険者ギルドに到着していた。
× × ×
食事時ということもあって、冒険者ギルドの中は賑わっている。
酒場も併設しているみたいで……役所に食堂がついているような感じだ。
獣人やエルフの姿も見えて賑わっている光景を目にして――私は全身を震わせる。
視線が集まっている。
凝視しすぎたかもしれないから慌ててレーリアに目をやると、小声で私に呟いて。
「……申しわけありません。どうやら、私に原因があるみたいです」
そう言われるけど、理由がよく解らない。
それからはレーリアの言うとおりに動き、私主導で冒険者登録をしていく。
最初はエルフを従えていることに受付の人が驚いた様子で……すぐに冷静になっていた。
エルフを従えている人は珍しいから、各ギルドに1人は居るらしいギルドマスターに会わなければならないらしくて……私とレーリアは別室に案内される。
受付の人に着いていきながら、私はレーリアに尋ねる。
「……エルフを従えているって、そんなに珍しいの?」
「いえ。人界だとエルフが冒険者登録をするのなら、人が従えていても何もおかしくはないはずですが……」
どうやらギルドマスターに会うことは想定外のようで、レーリアは真剣な表情になっている。
そして、受付のお姉さんが部屋に案内してくれて中に入ると……そこには初老の青年が居た。
短い白髪のゴツゴツとした顔立ち、鎧を身に纏い、巨大な斧を背負った強そうな人。
その人がレーリアを睨んだかと思えば――私は、レーリアに抱きしめられていた。
「――えっ?」
いきなり抱きしめられて動揺していると、叫び声が耳に入ってくる。
「報告通りの見た目……貴様が! この街を破壊しようと目論むエルフか!!」
レーリアの胸しか見えないから、今の私は部屋の光景が何も見えていない。
部屋に居た青年の叫びと同時に――部屋に入ってくる何人もの足音が聞こえて、どうやら私達は取り囲まれているようだ。
レーリアが私を抱きしめているのは守るためだと理解したけど、レーリアがリドラの街を破壊する?
誤解なのは間違いない。
それでも――冒険者ギルドの人達はレーリアに敵意を持ち、私達を取り囲んでいた。
106
お気に入りに追加
4,391
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた
向原 行人
恋愛
精霊の加護を受け、普通の人には見る事も感じる事も出来ない精霊と、会話が出来る少女リディア。
聖女として各地の精霊石に精霊の力を込め、国を災いから守っているのに、突然第四王女によって追放されてしまう。
暫くは精霊の力も残っているけれど、時間が経って精霊石から力が無くなれば魔物が出て来るし、魔導具も動かなくなるけど……本当に大丈夫!?
一先ず、この国に居るとマズそうだから、元聖女っていうのは隠して、別の国で趣味を活かして生活していこうかな。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!
ユウ
恋愛
侯爵令嬢であるアーデルハイドは妹を苛めた罪により婚約者に捨てられ流罪にされた。
全ては仕組まれたことだったが、幼少期からお姫様のように愛された妹のことしか耳を貸さない母に、母に言いなりだった父に弁解することもなかった。
言われるがまま島流しの刑を受けるも、その先は隣国の南の島だった。
食料が豊作で誰の目を気にすることなく自由に過ごせる島はまさにパラダイス。
アーデルハイドは家族の事も国も忘れて悠々自適な生活を送る中、一人の少年に出会う。
その一方でアーデルハイドを追い出し本当のお姫様になったつもりでいたアイシャは、真面な淑女教育を受けてこなかったので、社交界で四面楚歌になってしまう。
幸せのはずが不幸のドン底に落ちたアイシャは姉の不幸を願いながら南国に向かうが…
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
私を追い出した結果、飼っていた聖獣は誰にも懐かないようです
天宮有
恋愛
子供の頃、男爵令嬢の私アミリア・ファグトは助けた小犬が聖獣と判明して、飼うことが決まる。
数年後――成長した聖獣は家を守ってくれて、私に一番懐いていた。
そんな私を妬んだ姉ラミダは「聖獣は私が拾って一番懐いている」と吹聴していたようで、姉は侯爵令息ケドスの婚約者になる。
どうやらラミダは聖獣が一番懐いていた私が邪魔なようで、追い出そうと目論んでいたようだ。
家族とゲドスはラミダの嘘を信じて、私を蔑み追い出そうとしていた。
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる