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34話

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 猪のお肉なんて食べたことがないけれど、料理スキルは問題なく使えた。

 これは鍋という料理を知っていたからなのかもしれない。

 私は器に猪肉を入れて冷ましながら、箸を使って口の中に入れる。

 暖かと豚肉のようで少し違う……初めて食べる味で、思わず叫ぶ。

「美味しい!」
「はい。あの肉は美味ながら固いと聞いていたのですが、柔らかく口の中でほぐれていきます」

 猪の肉はじっくり煮込むと柔らかくなっていくと聞いたことがあるから、これもスキルによるものね。

 野菜やうどんも食べていくと身体も温まっていき、魔力が回復しているのもよく解る。

 こうしてレーリアと向かい合って食事を共にしているだけでも、誘ったのは正解だった。

 × × ×

 猪鍋を食べ終わって、思わず呟いてしまう。

「お米があったら雑炊にしていたけど……これは欲ね」
「お米、ですか。この国では珍しいですからね……」

 雑炊という単語がよく解っていなさそうだけど、レーリアは何かを考えている。

「レーリア、どうしたの?」
「……いえ。今後どこへ行くべきかを考えていましたが、決めるのはアカネ様に任せます」

 港町に着いてから、船に乗った行き先を決める辺り、何カ所か候補があるのかもしれない。

「わかったわ」
「それでは、これから私が魔法について教えます」

 寝るには早いからだと思うし、猪鍋を食べたことで私の魔力が回復したからでしょう。

「その前に……ちょっと試してみたいことがあったから、試すわね」

 そう言って、私は小屋の床に置いていたレーリアのカバンから、解体ができている猪肉を取り出す。

 そんな私を見て、レーリアは首を傾げながら。

「先ほど食べた猪鍋はかなりの量でしたけど、アカネ様は物足りなかったのですか?」
「いいえ。あれは作りすぎたと自分でも思うけど……ちょっと、試してみたい料理があるの」

 そう言って、私はクッキーを作った時のことを思い返す。

 私のスキルで作った料理は回復効果があるから、保存食が作れるのなら作っておきたい。

 今はカバンで一杯でもあるから、ある程度減らしておきたいとも考えていて――私は決める。

 私はこの猪肉を使ってベーコンができないか、料理スキルを使って試そうとしていた。
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