料理スキルで完璧な料理が作れるようになったから、異世界を満喫します

黒木 楓

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21話

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 あれから翌日――私が国外追放を言い渡される日がやってくる。

 朝食を持ってきたのはレーリアじゃない。

 それも装備から兵士長らしき人が監視するように眺めているから、今は料理スキルが使えない。

 国外追放が決まったから、余計なことをしないか監視しているのかもしれないわね。 

「本日、アカネさんは朝食を終えてから、王の間に向かってください」

「わかりした」

 今まで料理スキルの料理だったから、この硬いパンと薄味のスープは辛い。

 温かいからパンにつけて食べるけど……こうなるとさっさと国外追放を受けて、料理スキルを使いたくなってしまう。
 
 食事を終えた私は兵士長に案内されて王の間に向かっていると、急に兵士長が私と距離を空けてくる。

 何かあったのかと思っていると、通路の曲がり角にはマミカとミユキ……そしてマミカの後ろにはレーリアが居た。

「あらあら? なんだか体調が悪そうだけど、この世界の料理は口に合わなかったみたいね」

「…………」

 マミカが私を小馬鹿にしたように笑い、ミユキは私から目を逸らしている。

 罪悪感があるのかもしれないけど、ミユキが言ったから私が国外追放になっていると知っている。

 私の前で悪いことをしているとポーズをとることで、自分は関係ないと私に思わせたいのかもしれない。

 解りやすいマミカと違い、ミユキの方が得体の知れなさがあるけど……この2人と会うのも今日限りでしょう。

 私は無言で前に進もうとするも、マミカが行く手を阻んできて。

「……どいてくれますか?」

 食事が酷かったこともあって不機嫌だと自覚していると、マミカが睨んでくる。

「私達と比べると天地の差があるスキルの時点で、私の方が立場が上なのにその態度……奇妙な眼鏡をかけたこのエルフを味方につけたみたいだけど、コイツは大したことないわよ」

 それは私が天って意味かしら?とは言わないでおこう。

 それよりレーリアに対してマミカが親指を向けて馬鹿にしたことに、私は苛立ってしまう……ここは抑えるしかない。

「この世界でエルフは避けられているのに、コイツはこの城に居る。故郷に戻れない奴隷のようなエルフよ。何の役にも立たない貴方とはお似合いかもね!」
 
「このっ――」

 私が咄嗟に叫ぼうとするけど、マミカの背後でレーリアがジッと私を見つめている。

 ここで私が怒ったとしてもマミカの得にしかならない……それなら、この状況を利用しよう。

「なによ?」

「貴方は、レーリアが何の役にも立たないと思っているの?」

「ええ。眼鏡の魔道具だって他の人が使えるみたいだし、役立たずのアンタの力になってる時点で気にくわないわね!」

 どうやらマミカが苛立っているのは、私に協力的という部分のようだ。

「レーリアは優秀だと思うけど、この城に不要だと思っているの?」

 私はマミカに否定させるように誘導しながら質問すると、ミユキがピクリと反応している。

 私の発言の意図を理解しているようで……やっぱりマミカよりミユキの方が怖い。

「マ、マミカちゃん。あのー―」

「ミユキは黙ってて! 優秀? それは貴方にとってはでしょ? この城には不要よ!」

 どうやら賢者スキルで発言力が増したからか、マミカは自分の発言が絶対だと思っているようね。

 もしミユキの方がマミカより発言力があったら怖かったけど、マミカの方が立場が上なら扱いやすい。

「そうですか……その発言、覚えておいてください」

 レーリアが私の会話を聞きながら驚いて、そして口元を緩ませている……私はレーリアの為に行動できたようだ。

 × × ×

「お前は不要だ。この国から出て行ってもらう」

 あれから私は王の間に向かって、国王に国外追放を言い放たれる。

「……わかりました」

 マミカと宰相ドグは勝ち誇り、ミユキは何かを警戒しているようだけど、マミカに言うことはできなそうだ。

 これで私は国外追放が決まったけど……レーリアの予定通り進んでいるのか、私は少し不安になっていた。
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