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6話

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 私はレーリアから魔力の扱い方を学ぶことになったみたいだけど、他の人は皆マミカとミユキに期待しているようだ。

 私とレーリアは広場の端でやれと言われて、私はレーリアに尋ねる。

「あの、まず私は魔力を持っているのでしょうか?」

 あの転移した2人は魔法を扱うスキルを手に入れたのだから、魔力を持っていたとしてもおかしくはない。

 私はスキルがスキルだから、そもそも魔力がないのではないかと思っていると。

「アカネさんの世界は魔力がないようですが、私達には信じられません……扱おうと意識すれば、アカネさんも問題なく魔法を使うことができるでしょう」

 この世界の人にとっては魔力があるのが当然だから、魔力がないのはありえないと思っているみたいね。

 転移した時に宿ったのか、この世界に魔力があるからなのか……そこは気にしても仕方がないでしょう。

「まずは体内に蓄えている魔力を全身に纏います。誰でも扱える強化の魔法で、それだけで大体の魔力値が判明します」

 頭の中で身体を強化するイメージを持ち、魔力を体から出すことを意識して頭の中で魔方陣を思い描く……レーリアが説明してくれたけど、今まで使っていなかった魔力を出すのは難しい。

 どうやらマミカとミユキも同じようだけど、レーリアが微笑みながら。

「アカネさんは、あの2人よりも先に強化魔法を使わない方がいいかもしれません。落ち着いて、ゆっくりやっていきましょう」

 確かに、あの2人より先に魔法を使えたら、目をつけられる可能性がある。

 それでも、魔力を発生させることができそうで――魔法が使いたくなったから、私は魔法を試してしまった。

 一気に力が沸いてくる感覚がして、身体がとてつもなく軽いと感じていると、周囲の視線が私に向く。

「はぁっ!?」

「な、なによ……あの女が私達より魔力が扱えたからなんなのよ!」

 少し離れていても、聞こえるほどの大声だった。

 周囲の兵士や魔法使いが私を凝視して、まだ強化魔法を使えていないマミカが苛立っている。

 そんなマミカを見て、魔法使いの人が慌てた様子で。

「い、いえ……さきほど、あの女が一瞬だけとてつもない魔力を出したかと思いましたが、気のせいだったようです」

「……ふーん。まっ、変なスキルを持ってるから、変な魔力を出しててもおかしくないか」

「そ、そうだな! 2人とも落ち込むことはない! あの女が使えないスキルだからああなっているのだ! そうに決まっている!」

 マミカとミユキの方から宰相ドグの大声が聞こえてくるけど、私も驚いている。

 私の前に居るレーリアが手を突き出しながら私の魔力を弱めたみたいで、私が困惑していると。

「この魔力量は異常なので私の方で抑えましたが、アカネさんはどうしたいですか?」

 どうやら私が強化魔法を使っただけで、周囲から「2人のやる気を削ぐこいつは邪魔だな」と思われてしまっているようだ。

「レーリアの言うとおり目立ちたくないわ……ありがとう」

 私の魔力は城の人達が驚くほどの魔力みたいだけど……料理スキルと今までにないスキルだから、使えそうな転移者だと判明してもマミカとミユキのような扱いになるかは微妙だ。

 そもそも、転移した時に立場の違いを明確にしてきて、手の平を返されることが嫌だから、レーリアには感謝するしかない。

 それからマミカとミユキも強化魔法を使って、少し離れた場所に居る私を見て勝ち誇っていた。

 私が魔力を扱えるようになったから、強化魔法を使っている2人の魔力量がなんとなく解るようになっているけど……どう考えても、私より遙かに劣っている。

 転移して1日で、ここまで魔力の差があるのはおかしい。

 私だけ魔力が高い理由って――スキルで作った料理を食べたことぐらいしか思いつかなかった。
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