4 / 117
4話
しおりを挟む
私のスキル「料理」は、料理ができるという説明しか伝わっていない。
あまりにも曖昧過ぎるけれど、私は料理スキルについて考えてみると、なぜか詳細が少しわかった気がしていた。
これはきっと……スキルを手に入れたからこそ、そのスキルについて知れたのでしょう。
料理スキルに必要なのは食材と料理を盛りつける食器のようで、食器は手に入っている。
出されたスープは飲んだけど、味は薄いし具材はないと美味しくなかったから、口直しをしたい。
カバンに入っている食材は小麦粉と野菜類で……お肉は冷蔵庫に入れていたから持ってきていない。
スープの食器だけだから、作るとすればスープでしょう。
夜はコンソメスープを作る予定だったけどブイヨンがないし、出汁が必要なのは知っているけど作り方は一切知らずお肉もない。
肉、魚、野菜を焼いて煮たりするらしいけど……この知識だとどうやっても作れないし、キッチンもない。
私の手が届く範囲の食材を消費することで料理が完了するみたいだけど……調理器具がないのだからどうしようもなさそうね。
そう考えていると――料理が完成していた。
「えっ!?」
料理をするという過程が一切ない。
私の目の前、冷めて美味しくなかったスープが入っていた食器には、湯気が出たコンソメスープが存在していた。
「ど、どういうことよ……」
食材は少し減っているけど、これだと生で齧ったように見られるぐらいだ。
持ち物を確認された時、食材と知った時点で興味をなさそうにしていたから、元々こんな形と言って、尋ねられたら生で食べたと言えば大丈夫のはず。
それよりも――
「コンソメスープだ……調味料とか一切ないのに、どうして?」
一口飲んでみると、明らかに塩とか、肉が入っているとしか思えない。
私は強く疑問を持つことで、なぜか理由が解ってしまう。
これはスキルによるものなのかもしれないけど、疑問を強めたら返答が理解できるというのは不気味でもあった。
どうやら調味料、香辛料だと私が認識していれば魔力で作れるみたいだけど……その理屈だとシチューも作れるのではないだろうか?
「それよりこれ、とてつもなく美味しい……」
私が普段作っているスープじゃない。昔親に連れて行ってもらった高級レストランの、私が好物となるほどまでに美味しかったスープの味がする。
「なんだか、このスープが飲めただけで、来てよかったと思えるわね……」
それほどまでに感極まっているけど、これが賢者と聖女のスキルと同等の料理スキルということか。
スープを飲み終えて感動した後――試しにシチューを作ろうとイメージしてみるも、牛乳が足りないせいか何も起こらない辺り、魔力で作る調味料にも限度があるのでしょう。
「いや、それにしても……ええっ?」
暖かいスープのお陰で食べやすくなったパンも食べ終えて、私は何も残っていない食器を眺めて唖然とするしかない。
調理器具も不要で手順を無視して、しかも調味料とさえ認識していれば肉のエキスすら魔力で作っている。
これは「料理ができる」のスケールが違い過ぎる……あの女子高生2人は料理が上手になる程度の認識で、私も使うまではそう思っていた。
実際は予想以上の凄いスキルだけど――明日、このスキルを披露して大丈夫なのか不安になってしまう。
「もし……この料理スキルの力が知られたら、こき使われるに決まってる」
レーリアの言葉を思い返すと、絶対にこのスキルは使わない方がいいはずだ。
あまりにも曖昧過ぎるけれど、私は料理スキルについて考えてみると、なぜか詳細が少しわかった気がしていた。
これはきっと……スキルを手に入れたからこそ、そのスキルについて知れたのでしょう。
料理スキルに必要なのは食材と料理を盛りつける食器のようで、食器は手に入っている。
出されたスープは飲んだけど、味は薄いし具材はないと美味しくなかったから、口直しをしたい。
カバンに入っている食材は小麦粉と野菜類で……お肉は冷蔵庫に入れていたから持ってきていない。
スープの食器だけだから、作るとすればスープでしょう。
夜はコンソメスープを作る予定だったけどブイヨンがないし、出汁が必要なのは知っているけど作り方は一切知らずお肉もない。
肉、魚、野菜を焼いて煮たりするらしいけど……この知識だとどうやっても作れないし、キッチンもない。
私の手が届く範囲の食材を消費することで料理が完了するみたいだけど……調理器具がないのだからどうしようもなさそうね。
そう考えていると――料理が完成していた。
「えっ!?」
料理をするという過程が一切ない。
私の目の前、冷めて美味しくなかったスープが入っていた食器には、湯気が出たコンソメスープが存在していた。
「ど、どういうことよ……」
食材は少し減っているけど、これだと生で齧ったように見られるぐらいだ。
持ち物を確認された時、食材と知った時点で興味をなさそうにしていたから、元々こんな形と言って、尋ねられたら生で食べたと言えば大丈夫のはず。
それよりも――
「コンソメスープだ……調味料とか一切ないのに、どうして?」
一口飲んでみると、明らかに塩とか、肉が入っているとしか思えない。
私は強く疑問を持つことで、なぜか理由が解ってしまう。
これはスキルによるものなのかもしれないけど、疑問を強めたら返答が理解できるというのは不気味でもあった。
どうやら調味料、香辛料だと私が認識していれば魔力で作れるみたいだけど……その理屈だとシチューも作れるのではないだろうか?
「それよりこれ、とてつもなく美味しい……」
私が普段作っているスープじゃない。昔親に連れて行ってもらった高級レストランの、私が好物となるほどまでに美味しかったスープの味がする。
「なんだか、このスープが飲めただけで、来てよかったと思えるわね……」
それほどまでに感極まっているけど、これが賢者と聖女のスキルと同等の料理スキルということか。
スープを飲み終えて感動した後――試しにシチューを作ろうとイメージしてみるも、牛乳が足りないせいか何も起こらない辺り、魔力で作る調味料にも限度があるのでしょう。
「いや、それにしても……ええっ?」
暖かいスープのお陰で食べやすくなったパンも食べ終えて、私は何も残っていない食器を眺めて唖然とするしかない。
調理器具も不要で手順を無視して、しかも調味料とさえ認識していれば肉のエキスすら魔力で作っている。
これは「料理ができる」のスケールが違い過ぎる……あの女子高生2人は料理が上手になる程度の認識で、私も使うまではそう思っていた。
実際は予想以上の凄いスキルだけど――明日、このスキルを披露して大丈夫なのか不安になってしまう。
「もし……この料理スキルの力が知られたら、こき使われるに決まってる」
レーリアの言葉を思い返すと、絶対にこのスキルは使わない方がいいはずだ。
166
お気に入りに追加
4,391
あなたにおすすめの小説
前世軍医だった傷物令嬢は、幸せな花嫁を夢見る
花雨宮琵
恋愛
侯爵令嬢のローズは、10歳のある日、背中に刀傷を負い生死の境をさまよう。
その時に見た夢で、軍医として生き、結婚式の直前に婚約者を亡くした前世が蘇る。
何とか一命を取り留めたものの、ローズの背中には大きな傷が残った。
“傷物令嬢”として揶揄される中、ローズは早々に貴族女性として生きることを諦め、隣国の帝国医学校へ入学する。
背中の傷を理由に六回も婚約を破棄されるも、18歳で隣国の医師資格を取得。自立しようとした矢先に王命による7回目の婚約が結ばれ、帰国を余儀なくされる。
7人目となる婚約者は、弱冠25歳で東の将軍となった、ヴァンドゥール公爵家次男のフェルディナンだった。
長年行方不明の想い人がいるフェルディナンと、義務ではなく愛ある結婚を夢見るローズ。そんな二人は、期間限定の条件付き婚約関係を結ぶことに同意する。
守られるだけの存在でいたくない! と思うローズは、一人の医師として自立し、同時に、今世こそは愛する人と結ばれて幸せな家庭を築きたいと願うのであったが――。
この小説は、人生の理不尽さ・不条理さに傷つき悩みながらも、幸せを求めて奮闘する女性の物語です。
※この作品は2年前に掲載していたものを大幅に改稿したものです。
(C)Elegance 2025 All Rights Reserved.無断転載・無断翻訳を固く禁じます。
似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります
秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。
そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。
「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」
聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。
精霊の加護を持つ聖女。偽聖女によって追放されたので、趣味のアクセサリー作りにハマっていたら、いつの間にか世界を救って愛されまくっていた
向原 行人
恋愛
精霊の加護を受け、普通の人には見る事も感じる事も出来ない精霊と、会話が出来る少女リディア。
聖女として各地の精霊石に精霊の力を込め、国を災いから守っているのに、突然第四王女によって追放されてしまう。
暫くは精霊の力も残っているけれど、時間が経って精霊石から力が無くなれば魔物が出て来るし、魔導具も動かなくなるけど……本当に大丈夫!?
一先ず、この国に居るとマズそうだから、元聖女っていうのは隠して、別の国で趣味を活かして生活していこうかな。
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
婚約者に冤罪をかけられ島流しされたのでスローライフを楽しみます!
ユウ
恋愛
侯爵令嬢であるアーデルハイドは妹を苛めた罪により婚約者に捨てられ流罪にされた。
全ては仕組まれたことだったが、幼少期からお姫様のように愛された妹のことしか耳を貸さない母に、母に言いなりだった父に弁解することもなかった。
言われるがまま島流しの刑を受けるも、その先は隣国の南の島だった。
食料が豊作で誰の目を気にすることなく自由に過ごせる島はまさにパラダイス。
アーデルハイドは家族の事も国も忘れて悠々自適な生活を送る中、一人の少年に出会う。
その一方でアーデルハイドを追い出し本当のお姫様になったつもりでいたアイシャは、真面な淑女教育を受けてこなかったので、社交界で四面楚歌になってしまう。
幸せのはずが不幸のドン底に落ちたアイシャは姉の不幸を願いながら南国に向かうが…
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
悪役令嬢は処刑されないように家出しました。
克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。
サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。
私を追い出した結果、飼っていた聖獣は誰にも懐かないようです
天宮有
恋愛
子供の頃、男爵令嬢の私アミリア・ファグトは助けた小犬が聖獣と判明して、飼うことが決まる。
数年後――成長した聖獣は家を守ってくれて、私に一番懐いていた。
そんな私を妬んだ姉ラミダは「聖獣は私が拾って一番懐いている」と吹聴していたようで、姉は侯爵令息ケドスの婚約者になる。
どうやらラミダは聖獣が一番懐いていた私が邪魔なようで、追い出そうと目論んでいたようだ。
家族とゲドスはラミダの嘘を信じて、私を蔑み追い出そうとしていた。
転生令嬢はやんちゃする
ナギ
恋愛
【完結しました!】
猫を助けてぐしゃっといって。
そして私はどこぞのファンタジー世界の令嬢でした。
木登り落下事件から蘇えった前世の記憶。
でも私は私、まいぺぇす。
2017年5月18日 完結しました。
わぁいながい!
お付き合いいただきありがとうございました!
でもまだちょっとばかり、与太話でおまけを書くと思います。
いえ、やっぱりちょっとじゃないかもしれない。
【感謝】
感想ありがとうございます!
楽しんでいただけてたんだなぁとほっこり。
完結後に頂いた感想は、全部ネタバリ有りにさせていただいてます。
与太話、中身なくて、楽しい。
最近息子ちゃんをいじってます。
息子ちゃん編は、まとめてちゃんと書くことにしました。
が、大まかな、美味しいとこどりの流れはこちらにひとまず。
ひとくぎりがつくまでは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる