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ミルカ

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「拝啓 

王国直属軍保安局局長兼戦略部担当 シーフォリア=スクォーク 様



早いもので今年も折り返し地点の頃となりました。天候に負けずにご活躍のことと存じます。

さて、この度ご連絡させていただいたのは、先日のお礼の品のことです。

健康的な生活を日々心がけてはいるのですが、お酒をよく嗜んでいます。

ですので、何かお薦めのお酒をいただければなと思います。

はっきり申し上げますと、弊社の社員は人一倍お酒を飲みますので、普通の量ですと、

無くなるのも早く、可能であればご配慮いただけると幸いです。

来る日には、社員一同で旅行に行き、そのお酒で貴公とのご縁を祝いたいと思います。

連絡するのが遅れてしまいましたが、お手隙であればお願い致します。

貴公との約束もいずれかならず完遂する所存です。

社員一同、微力ながらも全力で動きますので、末永く宜しくお願い致します。



末筆ながら、貴公のますますのご活躍とご健勝をお祈り申し上げます。

敬具」





シーフォリアはキールからの手紙を読み上げた。



「いかにあのキールといえど、平民の出ですから、文章から頑張って書いたという感じが拭えませんが・・・」

ミモルグがシーフォリアの顔色をうかがうように呟いた。



「いや、その程度で怒るほど幼くないわい。しかし、面白いことを言う奴だ」

シーフォリアはニヤリと笑った。



「お酒ですか・・・金銭を要求しない辺りが、逆に私どもが足下を見られないように高い物を送るしかなくなるという算段でしょうか」



「はっはっは、そこじゃない。ミモルグ奴らに最高級のワインを樽でいくつか見繕っておいてくれ、私は王に、地下書物庫の権限を貰ってくる」



「!!!・・地下書物庫ですか。一体何をお調べになるのですか。そもそもあそこは本当に限られた王族でもその都度許可を得なければならないほど厳重と聞きます。その、お言葉ではありますが大丈夫なのでしょうか」

ミモルグは、上司であるシーフォリアが暗にその立場にあるのか、またそれに値する正当な理由があるのか尋ねた。



「知らん・・・権限を得るのは私ではなく、キールであるからな。」



「それは一体どういう・・・」



「本文の頭文字を縦に読んで見ろ」



「さ、け、で、は、な、く、れ、き、し・・・要求していたのは酒ではなく王国のこれまでのすべて、ということですか」



「こんな子供だましのようなことをしおって・・まぁいい、手配は頼むぞ」





保安局が勝手に動き出している頃、キールは自分の社長室でゴロゴロとダレていた。



「あー、手紙なんてそうそう書かないから実際に会うわけじゃないのに緊張したなー。エリーナに見て貰ったけど、大胆不敵ですねってどういうことだよ。しかも、改善点も教えてくれなかったし・・・」



すると、ドアがノックされはーいと気の抜けた声で返事すると



「社長、数日前から商人の往来が活発になり、そのおかげで他国の珍しい物や、食べ物が多く輸入されているようです。何か必要な物などはありますか?」

エリーナが入室そうそう尋ねた。



「んー、食べ物が欲しいかな。ここ最近皆働き過ぎだから、パーッと社員で遊ぼうよ。宴の準備でもしようかな」



「宴・・ですか。分かりました。色々な効能を持つ物を仕入れておきます」



「うん、ありがとう」

エリーナは健康志向なのかな。普通にお肉と食ベたいんだけどなぁ・・



「では失礼致します」

そう言うと足早にエリーナは退室した。



「嵐みたいだねぇ」



ふと、キールはエリーナの言ったことを思い出した。



珍しい物かぁ・・・ロマンがあるな!!



雑貨集めが趣味のキールとしては珍しい物、アンティークな物には目がないのだ。



よし!街へ出かけよう!





「いらっしゃい!他の国からもってきた雑貨はどうだい?」



王都の商業区ではセントラルスクエアと呼ばれる広場があり、そこでは毎日のように市場が開催され、たまに掘り出し物があったりするのだ。



「いやぁ、ほくほくだなぁ」



キールは両手にたくさんの袋を持ち、るんるんで帰途についていた。そんな袋からは、とある民族の魔除けの像、木彫りの額縁の鏡、古代技術でつくられたと言われる乗り物のレプリカなど、様々な物が顔を覗かせていた。



会社にもどり買った物たちを棚や机の上に飾り付けていると、ドアがノックされた。



「はーい」

またエリーナかなと、再び気の抜けた声を出すと



「・・・社長、今度は何買ってきたの?」



「ミルカか、もう研究は終わったの?」



黒髪の少しくらい雰囲気の背の小さい女性はミルカと呼ばれた。



「・・・ん、休憩。社長がなんか買ってきたから」



「休憩は大事だね。俺も趣味の雑貨を一緒に語れるのはミルカぐらいだから嬉しいよ」



「・・・これ何?」



「古代技術を用いたとされる乗り物のレプリカだって」



「・・・古代技術!」

ふんす、ふんすと鼻息を荒くしてロマンを感じているようだ。



「やっぱり、この会社の技術部長としては気になる?」

ミルカは配達屋として欠かせない魔法袋を作れるのだ。そんな魔法具職人として、日々新技術を研究している。





「・・・・・・これだ!」





何かをひらめいたようだ。

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