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「ふー、やっと取り除けたぜ、こういう力仕事は俺の領分じゃないんだけどな」

ロイは額を伝う汗を拭いながら、綺麗になった石碑を見て達成感に包まれた。



だが、まだ石碑からの声は続き、むしろ大きくなった。



もう少し、何かちょうだい。



なんて強欲なんだと思いながら、ロイはつけていた、ただの腕輪を備えた。すると、ありがとうという言葉を最後に、声は消えた行き、気づけば、先ほどまでいたサバンナに戻っていた。



「なんだったんだ、ありゃ」



疑問に思っているのも束の間、激しい戦闘音が聞こえ、ロイは馬車とグランツの無事を祈りながら駆けだした。



「なんだか身体が軽いな」

不思議な力に身を包まれているような感覚に、高揚を覚えロイはうずうずしていた。彼もまた元冒険者で、根は戦いが好きなのであった。









「うふふ、そろそろ根比べもお終いでありんすか?」



悪魔が不敵に笑うと、グランツは苦渋を浮かべた。悪魔と人間、その魔力量の差は火を見るよりも明らかであった。



「ここまで、長引くとはな、誤算だった」

体中が傷だらけになり、そう言うグランツの目はまだ諦めていなかった。



「楽しい時間もこれにて終幕。来世でお待ちしております。」

悪魔がクナイを、グランツに向かって放った。



グランツはそれでも決して悪魔から目をそらすことは無かった。そればかりかニヤリと口角を上げて見せた。

何故か、それは遠くから人が走ってくる音が聞こえたから



「遅いよ」

「悪い、待たせたな」

ロイはクナイをすべて炎で吹き飛ばした。



「それで、あれが例の悪魔ってヤツか」

ロイは一層緊張感を高め、その悪魔を見据えた。



「ああ、ところでなんだが、お供えしてきたか?」

「?・・ああ、あれか、してきたぜ」

グランツの問いに一瞬何のことだか分からずにいたがすぐに理解して肯定した。



「やっぱりか、手短に説明する。それは精霊の守人という加護だ。頭に浮かんでる言葉が新しい強力な魔法となる」





「ロイ・・・サラマンダー・ロイか。グランツとパーティーを組み、舞踊るように火を扱うもう1人の伝説。ふ、儂の悪運も舐めた者じゃないな」

シーフォリアは、ロイをみてそう呟き、だいぶ体力してきた体力で、邪魔にはならないとでも言うかのように、再び剣を構えた。





「うふふ、人が1人増えたところで、今度は飛べる殿方でも連れてきたんどすか」

悪魔は再び、クナイを無数に出現させ、一斉に3人にめがけて放った。



「なぁ、悪魔よ制空権って知ってるか?まぁ知ってても、知らなくてもどっちでも良いんだけどよ。多分今の俺なら、そこ届くぜ?」



10メートル以上、上にいる悪魔にニヤリと笑って見せ



「炎の抱擁フレイム・ベール」



ロイの身体の周りを炎が飛び交い、美しいその炎は一気に広がり、悪魔を含めた4人を球場の炎に閉じ込めた。



「こんな炎の壁なんてすぐに・・・ああああああああ」



一瞬が我慢すれば抜けられると思ったのか、悪魔が炎に体当たりすると、少し触れただけで身体が焼け焦げた。



炎はじりじりとロイに向かって近づいていき、だんだんと小さくなっていった。



「ならば本体を狙うまで」

悪魔は、魔法の使用者であるロイめがけて急接近した。



「近づいてきてくれるなら歓迎するぜ」

グランツがそうはさせまいと、ロイの前に立ちはだかかった。



近接戦闘においてはグランツに分があり、徐々に悪魔を押し返していった。



「これでお終いだ。大地の微笑みアース・ブレス」



ダメ押しとばかりにグランツは拳のラッシュをし、ついにその拳は悪魔を捉え、吹き飛ばした。飛ばされた悪魔は、ギリギリ炎の手前でとどまったかが、顔を上げるとすぐそこにグランツが迫っていた。



その場から逃げることも出来ずに、遂に悪魔の背中には炎が触れ、燃え始めた。



「ああああああああああああ」



3人は炭と化していく悪魔を眺め、ついにすべて燃え灰となった悪魔を確認し、警戒を解いた。



「いっちょ上がり」

「なんとかなったな」

普段のことのように、会話を始めるロイとグランツとは裏腹に、シーフォリアは神妙な面持ちをしていた。



「此度の件、本当に感謝してもしきれない。必ずや、シーフォリア=スクォークの名にかけて最大限の礼を尽くそう」



しばらく、黙っていたシーフォリアは顔を上げ、感謝の言葉を告げた。



「あー、そういうのは社長に言ってくれ、多分、全部社長が企てたことだから」

しかし、ロイとグランツは自分たちは無関係かのように振る舞った。



「そなたらの社長、キールと言ったか。彼は一体何だ?」

シーフォリアは、つくづく考えさせられていたことを直接聞いてみることにした。王国直属保安局局長という肩書きの情報網をもってしても知り得なかった人物像を。



「んー、何者ねぇ。社長は社長だよ。俺たちの恩人でもあり、友でもあり、俺たちにはない強さを持つ人だよ。それ以下でもそれ以上でもないかな」



グランツがそう言うと、ロイは「うんうん」と大きく首を縦に振り頷いた。



「とりあえず、王都に戻ろうぜ。流石に少し疲れたし、知りたいこともできた」

ロイは2人に帰ろうと促し、ロイとグランツは2人歩き出した。



「これだけの者が下についているとは・・・・彼の器量はどれほどのものなのだろうか。私もまだまだだな。」

シーフォリアは前を歩く2人の背中を見てそうつぶやき、歩き始めた。
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