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「社長、今回は謎が解けないままの出発になってしまいました。私や王都ギルド連盟は、謎を解いてから行った方が良いと思うのですが、先日の悪魔のことがあってから、王国自体が敏感になっているようで、貴族からの圧力で行くことが決定しました。大丈夫なのでしょうか。」



カリーナは不安を露わにしながら、いつもと変わらずソファで本を読んでいるキールに言った。



「んー、大丈夫じゃない?前回も大丈夫だったんでしょ?」



「しかし、前回は社長の解決策があったからこそです」



「大丈夫大丈夫、ユリもなんか良いことあったらしいし」



「しかし・・・」



「心配しすぎだよ、ユリにはお守りも渡しておいたし」



「そういうことなら・・、少し安心できますが・・」



このお守りが、ただポケットにあったホワイトホーンラビットの角の欠片だということは話がややこしくなるから秘密にしておこう・・





一方、王都の西の森、討伐部隊では危機が訪れていた。



「くそ、モンスターが異常なほど出て来やがる。なかなか前に進めねぇ」

「それだけ、敵に近づいているのだろう」

「確かに。知能の比較的高いゴブリンやレッドモンキーでさえも、連携を辞めて襲いかかってくるのは、快楽の悪魔の仕業だろうな」



次々と迫り来るモンスターの群れにも負けずに冒険者たちはなぎ倒し一歩ずつ前に進んでいった。そうして、全員に疲労感が押し寄せてきた頃。



ソイツはとうとう目の前に現れた。



「よくぞここまでたどり着きました。いかがでしたかな?私からのおもてなしは」



全員が一瞬呆気にとられてしまった。



前回の悪魔とは明らかに違った。



言語を用い、人型であり、ピエロのような装いに、空中に佇んでいた。





そして決定的に違うのはオーラであった。ベテランの冒険者になればなるほど危険を察知する能力に長ける。



ましてや斥候を得意とする部隊が居るのにもかかわらず目の前に突然に現れた。



普段であれば即座に戦闘態勢をとれる全員が呆気にとられた。



それは何故か。



悪魔からあふれるオーラは、怖いくらいに恐ろしくないのだ。



「っ!!全員!!もしかしたらあいつの攻撃を食らっている可能性があることを考えろ!!」



「おりゃあああああ」

「バカ!単独で攻撃に行くな!!」



精神的に弱い者は攻撃を仕掛けに行った。



「弱い種が勝つためには、連携を駆使する必要があることを知らないのですか?そんな単調な攻撃は無意味ですよ?」



結果は予想通り、冒険者の攻撃は悪魔まで届かない。良いように遊ばれているだけだ。



「おい!誰かあいつを止めろ!遠距離で攻撃を仕掛けようにも邪魔になってしかたねぇ」



冒険者たちは誰も攻撃を仕掛けることが出来ずにいた。



「あまり時間は残されていないですよ。私がそこに存在するだけで、その場は汚染されていく」



そう悪魔がささやくと、次々に冒険たちは周りを顧みずに、攻撃を始めた。なかには味方の攻撃で負傷し、その仲間に対して攻撃を仕掛けている者もいる。



「だめだ、このままじゃやられる。考えろ」



「つっても、キールが関わっている事と言えばホワイトホーンラビットくらいだぞ!お伽噺のように、幸運の象徴になってこの場を助けてくれるってのか!」



「これは現実だ、今できることを考えろ!」



冒険者たちがこの戦いに勝つために、頭を回転させ、顔をゆがませていた。



対照的に悪魔は破顔していた。





もうひとり、他と顔が違う者がいた。ユリである。



ユリはまっすぐに悪魔を見ていたが、本質的には悪魔ではなく、配達会社グリフォンフライ社長キールこと、王都の脳と未来を見据えていた。





たとえこんな危険な仕事でも、社長は無駄死にさせるために私をここに立たせているわけではない。今までもそうだった。ならば今の私の最大限を活かせば、この場は切り抜けられる。



今までの私では勝てない。今の私にあるもの。



2ヶ月かかった仕事では精霊の守人という加護を得た。そして、先ほどもらったホワイトホーンラビットの角。



まだこれらをどう活かすかは分かっていないが、関連性がないということはないのだろう。





精霊の守人という加護についてはよく分かっていない。それこそお伽噺でしか聞いたことがなかった。



ホワイトホーンラビットで重要そうなのは聖属性をもっているということ。おそらく悪魔に対抗できる属性は唯一聖属性のみ。



社長がくれた角の光をもっと感じろ。



角に力をこめろ。



精霊の守人として悪魔を倒すための力をよこせっ!!



数分が一瞬と感じる集中力のなかで、次第にユリの身体の中に何か熱い流れを感じた。



頭の中にある文言が浮かび上がってきた。



すると必然であったかのようにその言葉を口にしていた。









『光の波動セイクリッド・インパクト』







心地良い光がユリを中心として、静かな湖に水滴が落ちるように波紋が広がっていった。

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