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初仕事

40 顔合わせ

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「「「「失礼します!」」」」

 4人は元気よくクラブ室に入った。見学の時に一度は見たが、やはり広い。広さにして、教室3個分はある。それでも小さい方だというのだから、この学院が大陸一の学校というのもあながち嘘では無さそうだ。

 入ると、ニードルが迎えてくれた。隣にはあの時勧誘をしていた女の先輩がいた。どうやらこの4人は最後の入部希望者ようだ。

 「やぁ。やっぱり来てくれたね。君たちみたいな実力者は大歓迎だ。有能な者は大抵騎士系クラブに行ってしまうからね」

 「あの時は私の名前を言って無かったよね? 私はノリアよ。宜しくね」

 (良かった。今日はアイリーン様は来ないと聞いてたけど、正直怖かったのよね)

 周りを見ると、他の先輩方も歓迎ムードだ。何故なら、ヒュドラが現れたことは箝口令が引かれていたが、ここの学生は情報が早い。故にこの4人、ないしアイリーンとリンネルは、あの悪夢のような事件の生き残りとして、学院内では一躍有名人となっていた。

 と言っても、詳しい詳細は分からないので、ヒュドラは騎士団が何とかしたという噂にはなっている。

 有名人とは言っても、エリックとファーゼンに集まる視線は冷たいものだった。遅れて入学した2人は同級生の中では浮いていた。そこにこの事件だ。実力が知られていない2人は、周囲の者からしたらお零れに預かった、とういう風に見られてしまう。

 故に、冒険者クラブの同級生からは蔑むような視線を向けられる。それに加え、遅れてきたのにも関わらず手厚い歓迎を受け、余計に気に食わなかったようだ。

 それに比べ、学年の中でも優秀という評価のアリサとオルバ、この2人は歓迎されていた。それにアリサは美人だ。自分のパーティーへ引き入れようと、目を血走らせながら見ている。

 その様子に気づいたニードルは、牽制するように言った。

 「君たちの事はアイリーン様から聞いているよ。アイリーン達とリンネルを含めた6人でパーティーを組むんだってね。いや~これからの活躍が楽しみだね」

 それを聞いて、皆が気を落とす。先輩方も含めて。何故なら、先輩と後輩がパーティーを組むことは珍しくない。この場は寧ろ勧誘の場だ。有望株の4人は、同級生だけではなく、先輩も引き抜こうとしていたこと。故に先輩方も落ち込む。

 (少しやり過ぎたか?)

 新入部員の歓迎会だというのに、一気に敗戦ムード。隣のノリアを見ると、あちゃーという顔をしていて、少しムカついたので拳を落とす。

 「おいおい、そうあからさまに落ち込むなよ。まだこの4人が、このクラブで最強って決まった訳じゃないだろ?」

 ニードルは皆をそう煽りながら鼓舞すると、元気が出たようだ。

 ニードルは貴族だ。次期辺境伯なのだから、地位は低くない。だが、辺境である以上、力も必要とされる。自分が部長であることからも、実力はこのクラブで一番だと思っていた。いや、このクラブだけの話では無く、他クラブとの交流の時も強者どもと互角に渡り合ってきたことから自信はあった。

 「それじゃ自己紹介頼して」

 ノリアに促されてオルバ→アリサ→ファーゼン→エリックの順番で挨拶をしていく。

 「初めまして、僕はオルバです。得意分野は魔法で、特に回復が得意です。怪我をしたら言ってください。よろしくお願いします」

 ヒューヒューと歓声があがる。何故なら回復魔法を使いこなせる者は珍しいからだ。

 「いや~ホントにオルバを取れなかったのは惜しかったな~」

 そんな声が至るところで聞こえる。

 (オルバ何やってんのよ。これじゃ後がつらいじゃない!)

 嬉しそうにへつらっているオルバに、少し腹が立ったので、強めに足を踏んでやった。

 「いてっ」

 大勢の前で少し緊張したのか、深呼吸をするアリサ。その少しの振動で、胸が揺れる。男どもはそれを決して見逃さない。

 ………… エリックとファーゼンなどを除いて。

~ファーゼン~

 この中には恐らく強敵がいる。腕がなるな。

~エリック~

 ホジホジ……… ポイッ

 「私はオルバと幼なじみのアリサです。私も魔法が得意です。よろしくお願いします」

 特徴がなく、面白味に欠ける挨拶。だが、アリサが精霊魔法の使い手というのは、一部の者では既に広まっている。それに加えて美人だ。二度も言うが美人だ。それだけで盛り上がる要素は十分に揃っている。

 どうもどうも。手を振るアリサは選挙活動をしている政治家のようだった。
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