読めない彼女の心情

わらび餅

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20.スタートライン

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数人の生徒たちがスタートラインに並ぶ

『続いての競技は、No.9借り物競走です』

機械チックなアナウンスが流れる

参加者が制限されるこの競技では、学年関係なく行われる

だが、それでも優勝を期待されていたのは、2年生である秋と灯夜だった

去年1年生だった彼らは、相当な注目を集めての勝利をした

それほど稀なことだった

にもかかわらず1位は、無表情

2位は、悔しげと異常な結果だった

『位置について…よーい』

選手の間に緊張が走る

『ドン』

アナウンスの掛け声とピストルの音と共に一斉に走り出す

先頭はやはりというべきか秋だった

そこに追いすがるように灯夜がつく

その様子を離れた場所から斗真と透は、見守っていた

「なあ、透どっちが勝つと思う?」

斗真は、視線は、外さずに問う

「そんなの、決まってんじゃん」

斗真も無言で頷く

何に、とは言わない

「あんなこと言わせた時点で勝ちだろ」

『そうだな』なんて言ってふたりして笑う

それは、数刻前の出来事

灯夜が秋の元を去った後ふたりは、すぐに彼を追いかけた

「おい、待てって」

「ん?お前ら、あいつと一緒にいたやつらか」

ふたりに気付いた灯夜は、何事かと首を傾げる

「秋となにがあったか知らないけどそんな突っかかんなくてもいいんじゃない?」

なんでこんなこと、わざわざ言いに来たのか自分達もよくわかっていなかった

それでも言わなくちゃと思った

彼からは、なんだか同じ匂いがするから

「あいつほんとは、すげー優しいからさ」

この場では、あまり関係ないとわかっていた

あったとしても信憑性に欠ける

それでも口にした

「…知ってるよ」

帰ってきたのは、以外な言葉だった

つい先程、あれだけの啖呵を切った人間がその相手を優しいと評したのだから

それから灯夜は、つらつらと話始めた

去年彼は競技に負けひとり人気のない場所で泣いていた

悔しかった

それと同時に怖くてたまらなかった

身体中の水分が無くなるんじゃないかって思っていた時

人の気配がして後ろを振り向いたらそこに秋が立っていた

彼女は、無表情なまま何も言わずに去ろうとした

それがやけにイラついた

勝っておいて何も言わないなんて卑怯だ

同情してんじゃねえ

この冷血漢

彼女の襟首を掴み、矛盾だらけの感情を気付けばぶちまけていた

「私が何を言ったところで結果は、変わりません
あなたとよ会話は、無駄ということです」

静かなしかししっかりとした声で秋は言う

「最初は、さ
ふざけんなって思ったよ」

今までの努力自体が無駄だと言われている気がした

「でもさ、きっとあそこで何を言われても俺はダメになってた気がする」

馬鹿にされても笑われても

謝られたりなんかした日には、全部が馬鹿らしくなっていただろう

「勘違いかもしんねえーけどあいつは、それをわかってて無駄っていったのかなって」

暖かくはないけれど冷たい優しさを感じた気がした

その冷たさが心地よかった

「でもさ、勝たなきゃいけねーんだよ」

そうしなければ、いけないと誰かが叫んだ
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