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1章

02 立候補

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私立百合百合ヶ丘ゆりゆりがおか学園。

都心から慶応線で30分。

やや郊外に建てられた私立の女子校だ。

設立してからまだ10年も建っていないため、校舎がキレイで設備が整ってる。

そしてその割には学費が安いため、受験生の(親から)人気が高い。







キーンコーンカーンコーン・・・

放課後のホームルーム。

先生 「テスト返却するぞ~」






教室。

家にいるより学校のほうが好き。勉強は嫌いじゃない。





和美 「教子。何点だった?」

教子 「82点。」

和美 「やるぅ~。あたし70点~。」

中学からの知り合い、和美。

実はそんなに親しい間柄ではなかったけれど、新しい環境に知り合いがいるとやっぱり助かる。







クラスメイト 「うっひゃ~。赤点かも~。」

クラスメイト 「私はまだ本気出してないだけなんでそこんとこよろしく。」






教室の喧騒も嫌いじゃない。

退屈な人生を忘れられるから。






先生「テストは全員返却されたか~?」




先生「・・・おーい。静かにしろ~。」

先生「ごほん。」

先生「えー、さて・・・それでは今日のホームルームの議題なんだが・・・」

先生「今年度は、このクラスから生徒会役員を選出することになった。」







ザワザワとクラスがさんざめきだす。

クラスメイト 「えー、やだー、めんどくさー」

クラスメイト 「生徒会員ってなにすんの?選挙の手伝いとか?」

クラスメイト 「バイトできなくなっちゃうよ~・・」





先生 「おら~。静かにしろ~。」



先生 「・・・これは職員会議で決まったことだ。今年はこのB組から1年の役員を出す。」

先生 「生徒会役員になれば、内申点は上がるぞ。進学に有利だ。」






内申点って言われても・・・



と、クラスの誰かがボソッとつぶやく。

正直、みんな進学したばかりだし、あの辛かった受験の雰囲気は思い出したくないのが本心だ。






先生 「・・・それに・・その、2,3年の生徒会役員は・・・みんな優秀な人ばかりだから。」




先生 「顔を覚えてもらって損はない、と、先生は思ってる。」

先生 「立候補者はいるか?いなければ、クラスメイト同士の投票で決める。」






教子「生徒会か・・」







生徒会の優秀な先輩たち。

生徒の意見をとりまとめて、学校側に提出して、学生の権利を守る。

時にはわからずやで頭の固い先生たちに直談判して、丁々発止のやり取りを交わす。





・・・・まぁ、実際はそんなカッコイイものではないのだろうけれど。







新しい出会い。刺激。

もしかしたら・・






この灰色で、退屈な日常のなにかが、変わるかもしれない。







先生 「じゃあいなければ投票に・・」

教子 「あ!」

教子 「あの・・」

先生 「ん?」





先生 「なんだ?調しらべ?」

教子 「私・・・・」

教子 「・・・その、します。」

教子 「立候補。」




教子 「生徒会役員に、立候補します。」








~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~







ガヤガヤガヤガヤガヤガヤ。

ホームルームが終わり、一気に女子生徒の声で華やぎだす放課後の教室。

教子はさきほどまでの教師との会話を思い出していた。







先生 『じゃあ、早速このあと3階の奥の生徒会室に行ってくれ。』

先生 『詳細については生徒会長の指示を仰ぎなさい。』

先生 『先生は活動についてはなにも、知らん。』

先生 『それじゃ、な。』        ≫







教子「いや・・・・教師がなにも知らんって・・・」

教子「・・・そんなことある?」

教子はやや訝しむ。





まあ、行けばわかるか。

ガラッ、とすこし音を立てて教子は立ち上がった。

手を挙げたときの高揚感がまだ残っていて、胸が少し熱くて、足の裏がすこしムズムズしていた。






悪くない。

久しぶりのドキドキした感覚。

その感覚を取りこぼすまいとそのままの勢いで3階に向かおうとした教子は・・・





調しらべさん」

「・・っと」

クラスメイトに呼び止められた。





振り向くと、あまり記憶の中にない顔。

教子 「えーっと、花田、さん?」

教子 「どうしたの?」

花田 「いや、あの・・」

花田 「・・・・」

花田 「あの・・気を付けた方がいいと思うの・・・」

教子 「え、なにが?」

花田 「・・・・生徒会のこと。」







------------------------------------------------------------------------------------------------------







? 「ククク・・・今年もエモノが入ってくるわね・・・」

? 「詰めまくってすぐに壊さないでくださいよ。一年間働いてもらわなきゃなんですから。」

? 「去年は夏休み前にオシャカになっちまったもんな~。誰かさんのせいで。」

? 「誰かとはあなたのことでしょう?加減というものをそろそろ学びなさい。」

? 「・・・・」







-------------------------------------------------------------------------------------------------------








3階へと続く階段を上る教子。


花田 『私、お姉ちゃんがここの卒業生だから、話を聞いたことがあるんだけど・・』

花田 『ここの生徒会に入った新入生はみんな・・おかしくなっちゃうんだって・・』

教子 『お、おかしく?』

教子 『どういうこと?』

花田 『うん・・』












花田 『精神科に入院しちゃうとか・・』

教子 『え!?』












教子はステップを上がりきり、角を曲がる。








花田 『ここの生徒会の執行役員の人たち、なんかおかしいっていう噂があって・・』





花田 『しかもメンバーが何年も変わってないんだって・・』

教子 『え?え?』

教子 『そ、それどういうこと?卒業しないの?』

花田 『うん・・なんでだかはわからないんだけど・・』

花田 『私も本当に聞いた話だけで・・』







花田 『・・・・』

花田 『とにかく、気を付けて。』












教子は長い廊下を抜けて、行き止まりにある大きな扉の上にようやくたどり着く。





上から『生徒会室』とだけ書かれた、やけに古ぼけた表札のようなものがぶら下がっていた。


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