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2 暗黒騎士と鍵穴編
3-0 エルシア、見当違いな事件に遭遇する
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王女殿下の庭園から第三騎士団に戻ってきて、すぐ、クストス隊長に経緯を報告すると、私たちはヴァンフェルム団長の執務室へと連れていかれた。
「だから何度も繰り返しますけど、犯人が分かった、とは言ってません」
「でも、怪しい人物がいるってことなんだよねぇ?」
「はい、そうです」
フルヌビで見かけたときは、クラウドから何度もたまたまだろうと諫められ、なんとなく怪しい程度ではダメだと言われた怪しい人物たち。
同じ人物が王女殿下の庭園の周囲にも出没したとなれば、話は変わってくる。
しかも、庭園からはタルトが消えて黒い穴まで見つかったのだ。
怪しい人物の特徴はこの前のフルヌビ調査の報告書にも記載してあって、団長はそれを読み上げた。
「一人は黒髪黒眼、中肉中背、黒いフード付きのマント、服も上下黒、ブーツも手袋も黒と黒ずくめだったと」
「はい。魔剣士タイプでしたけど、魔力は微弱でした。服はマントからチラッと見える程度だったので、色くらいしか分かりません」
私はすらすらと黒ずくめの特徴を並べる。黒ずくめとは二回も会っているので、このくらい簡単だ。
しかし、私が並べた特徴からも分かるように、黒ずくめは杖精ではない。
「魔剣士だというのは?」
「魔力量や魔力の性質から推察しました」
「魔術師ではなく?」
「腕ががっちりしていたので、あれは魔術師ではないなと。
中肉と言いましたけど、筋肉はがっちりしています。剣士や騎士のような。私の保護者を小さくした感じですかね」
私の保護者も魔剣士だし筋肉がっちり。その上、黒髪黒眼なので、黒ずくめと体格は似ていた。
もっとも似ているのは体格の雰囲気だけ。体格は一回り大きいし、顔はぜんぜん違うし、身にまとう魔力圧が圧倒的に違う。
それでも雰囲気が伝わったようだ。
「あぁ、なるほど」
納得の表情のヴァンフェルム団長。
そのヴァンフェルム団長に、クストス隊長が意外な質問をした。
「ヴァンフェルム団長、エルシアの保護者をご存知なんですか?」
「あぁ、知ってるけど」
「そうですか」
今の何? 何の質問? 何かの確認?
団長と隊長の顔を交互に眺めたが、その会話はそれっきりで終わる。
「もう一人は銀髪に赤銅色の瞳か。かなり特徴がある組み合わせだな。こっちも中肉中背、ラフな白シャツに灰色の長ズボンと。まぁ、一般的な平民が着るような服装だな」
「はい。こちらの魔力は弱ってところですが、魔力に人間臭さがありませんでした」
ヴァンフェルム団長が二人目の怪しい人物について読み上げだしたので、私も説明に専念する。
「うん? 魔力が人間臭いってどういうことだい?」
「魔力には色と臭いがあるんですよ」
私は当たり前のことを喋る。そうか、騎士は魔力に敏感ではなかったな。
「団長、こちらを見ないでください」
「ルベラス君は、ああ言ってるんだけど」
「ルベラス君の常識は、通常の非常識。真に受けないでください」
パシアヌス様がなぜか酷いことを言っている。
「色とか臭いとか言ってるけど?」
「魔力そのものを感じたり、魔力の流れを感じたりすることは出来ても、普通、魔力そのものは見えません。臭いなんてもってのほかです」
ええ?! それじゃ、魔力が見分けにくいじゃないの!
パシアヌス様はとんでもない説明を始めた。その説明が正しいとすると、私は普通ではないことになってしまう。
それはマズい。
私は普通の騎士団付きの魔術師として、見事に実績をおさめ、実力を惜しまれながら退職して結婚、地方に引きこもる予定なのだ。
それが、最初の最初でつまずいてしまう。
「だそうだよ、ルベラス君」
「不便ですね。それだと、誰の魔法かも分からないし、誰かが魔法を使っていても分からないじゃないですか」
少なくとも私には分かるんだし、分かる方が便利だし。
「いや、そもそも、地盤の魔力が強いところだったり、いろいろな魔力があるところでは、特定の魔力を関知するのだって難しいんです」
「頑張れば、いけますよ」
人間やって出来ないことはない。右腕でガッツポーズを作って見せるが、それをパシアヌス様はあっさりと流した。
「それ出来るの、ルベラス君だけですからね!」
「嘘」
「事実です!」
パシアヌス様は私に負けまいと、大きく声を張り上げた。
「ま、まぁ、とにかく。魔力がサラッとしていて人間臭さがないんです。だから、魔導具由来の魔力かもしれません」
「つまり、魔術師ではなく魔導具使いの可能性もありますね。後はルベラス君が前に言っていた、杖精というのもあり得ます」
私の説明を受けて、パシアヌス様がさらに説明を加える。
「「魔導具使い?」」
騎士には馴染みのない単語だったのか、クストス隊長とクラウドが同時に声を上げた。
「だから何度も繰り返しますけど、犯人が分かった、とは言ってません」
「でも、怪しい人物がいるってことなんだよねぇ?」
「はい、そうです」
フルヌビで見かけたときは、クラウドから何度もたまたまだろうと諫められ、なんとなく怪しい程度ではダメだと言われた怪しい人物たち。
同じ人物が王女殿下の庭園の周囲にも出没したとなれば、話は変わってくる。
しかも、庭園からはタルトが消えて黒い穴まで見つかったのだ。
怪しい人物の特徴はこの前のフルヌビ調査の報告書にも記載してあって、団長はそれを読み上げた。
「一人は黒髪黒眼、中肉中背、黒いフード付きのマント、服も上下黒、ブーツも手袋も黒と黒ずくめだったと」
「はい。魔剣士タイプでしたけど、魔力は微弱でした。服はマントからチラッと見える程度だったので、色くらいしか分かりません」
私はすらすらと黒ずくめの特徴を並べる。黒ずくめとは二回も会っているので、このくらい簡単だ。
しかし、私が並べた特徴からも分かるように、黒ずくめは杖精ではない。
「魔剣士だというのは?」
「魔力量や魔力の性質から推察しました」
「魔術師ではなく?」
「腕ががっちりしていたので、あれは魔術師ではないなと。
中肉と言いましたけど、筋肉はがっちりしています。剣士や騎士のような。私の保護者を小さくした感じですかね」
私の保護者も魔剣士だし筋肉がっちり。その上、黒髪黒眼なので、黒ずくめと体格は似ていた。
もっとも似ているのは体格の雰囲気だけ。体格は一回り大きいし、顔はぜんぜん違うし、身にまとう魔力圧が圧倒的に違う。
それでも雰囲気が伝わったようだ。
「あぁ、なるほど」
納得の表情のヴァンフェルム団長。
そのヴァンフェルム団長に、クストス隊長が意外な質問をした。
「ヴァンフェルム団長、エルシアの保護者をご存知なんですか?」
「あぁ、知ってるけど」
「そうですか」
今の何? 何の質問? 何かの確認?
団長と隊長の顔を交互に眺めたが、その会話はそれっきりで終わる。
「もう一人は銀髪に赤銅色の瞳か。かなり特徴がある組み合わせだな。こっちも中肉中背、ラフな白シャツに灰色の長ズボンと。まぁ、一般的な平民が着るような服装だな」
「はい。こちらの魔力は弱ってところですが、魔力に人間臭さがありませんでした」
ヴァンフェルム団長が二人目の怪しい人物について読み上げだしたので、私も説明に専念する。
「うん? 魔力が人間臭いってどういうことだい?」
「魔力には色と臭いがあるんですよ」
私は当たり前のことを喋る。そうか、騎士は魔力に敏感ではなかったな。
「団長、こちらを見ないでください」
「ルベラス君は、ああ言ってるんだけど」
「ルベラス君の常識は、通常の非常識。真に受けないでください」
パシアヌス様がなぜか酷いことを言っている。
「色とか臭いとか言ってるけど?」
「魔力そのものを感じたり、魔力の流れを感じたりすることは出来ても、普通、魔力そのものは見えません。臭いなんてもってのほかです」
ええ?! それじゃ、魔力が見分けにくいじゃないの!
パシアヌス様はとんでもない説明を始めた。その説明が正しいとすると、私は普通ではないことになってしまう。
それはマズい。
私は普通の騎士団付きの魔術師として、見事に実績をおさめ、実力を惜しまれながら退職して結婚、地方に引きこもる予定なのだ。
それが、最初の最初でつまずいてしまう。
「だそうだよ、ルベラス君」
「不便ですね。それだと、誰の魔法かも分からないし、誰かが魔法を使っていても分からないじゃないですか」
少なくとも私には分かるんだし、分かる方が便利だし。
「いや、そもそも、地盤の魔力が強いところだったり、いろいろな魔力があるところでは、特定の魔力を関知するのだって難しいんです」
「頑張れば、いけますよ」
人間やって出来ないことはない。右腕でガッツポーズを作って見せるが、それをパシアヌス様はあっさりと流した。
「それ出来るの、ルベラス君だけですからね!」
「嘘」
「事実です!」
パシアヌス様は私に負けまいと、大きく声を張り上げた。
「ま、まぁ、とにかく。魔力がサラッとしていて人間臭さがないんです。だから、魔導具由来の魔力かもしれません」
「つまり、魔術師ではなく魔導具使いの可能性もありますね。後はルベラス君が前に言っていた、杖精というのもあり得ます」
私の説明を受けて、パシアヌス様がさらに説明を加える。
「「魔導具使い?」」
騎士には馴染みのない単語だったのか、クストス隊長とクラウドが同時に声を上げた。
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