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7 帝国動乱編

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「今まで分かったことのまとめだ」

 国王との話し合いで出た情報を、テラはここでも同じように繰り返した。

 ここはどこかというと、第六師団の会議室だ。
 第六師団の幹部にプラスして、テラ、第一塔長、銀竜さん、紫竜さんが参加していた。

 どういうメンバーなのか、事情を知らない人なら首を傾げるだろう。

 封土記念祭の最後に行う式典。これに参加する、もしくは関係するメンバーを集めたら、赤種と上位竜種の対決のような感じになってしまったのだ。

 姿はないけど、二番目の気配を感じるので、どこかからここを視ているようだし。

 そんな感じでけっこうな人数になったため、執務室では手狭だからと、もう少し広い会議室へ。

 補佐一号さんと二号さんがテキパキと動いてくれて、お茶とお茶菓子の用意も整って。機嫌よくテラも話し始めたのだ。

 そして、皆、黙ってテラの話を聞いていた。

「混沌の樹林に『名もなき混乱と感情の神』が封印されてはいるが、黒の樹林は『混乱』、赤の樹林は『感情』が影響を及ぼしている」

 この辺の話はナルフェブル補佐官が好きそうだよね。

 ナルフェブル兄弟は魔種なので、式典への参加資格はあるとのこと。

 ただし、ナルフェブル補佐官の方は『国から逃亡した身だから、公の場にはあまり出たくはない』と。そう言って式典参加は拒否したという話を聞いた。

 討伐大会に参加しておいて、いまさらな話だと思うのは私だけ?

 イリニの方は参加予定なのにこの場にいない。

 第九師団長に就任したばかりで『第六師団に近付けないほど忙しい』とラウが言っていた。

 何か作為を感じる。

 私がイリニのことを考えている間に、テラはどんどん話を進めていた。

「今回、赤の樹林に潜んでいた『変化』と、赤の樹林で魔導具の実験をしていたクリシス・エルシュミットが、『感情』に目をつけられた」

 どっちも赤の樹林が関係している。

 私も赤の樹林に出入りしていたのに、よく、目を付けられずに済んだよね。

 もしかしたら、目を付けられやすくなる、何らかの要因があるのかもしれない。

「クリシス・エルシュミットは、自分の研究と実験成果、そして第九師団が管理していた禁忌魔法の写本を持ち出して逃走。
 魔物を呼び出すメダルなど禁忌魔法を発動させる魔導具を作成している」

 テラは淡々と説明をした。

「『変化』は権能を使って覚醒前の『破壊』の周辺に影響を及ぼし、その上でメダルを使って『破壊』を刺激、覚醒に至らしめた」

 この辺は私が赤種として覚醒する前の話だ。クロスフィア・クロエルになる前、ネージュ・グランフレイムだったころの話。

 皆が私に気を遣った視線を送ってくるので、全部無視して、私は過去を振り返る。

 今や、ネージュと私とは完全に別人だった。ネージュの記憶は他人の記憶を覗き見しているようで、落ち着かない。

「『破壊』覚醒時の原動力により、赤の樹林が活性化。『感情』の封印が緩み、一部復活している状況だ」

 一部が復活している。
 これは感情の神にとっては好都合。

 しかし、裏を返せば、一部しか復活していないことになる。感情の神は自身の力をフルに使うことができない。
 これはこっちにとっても好都合なことだった。

「『感情』の目的は、おそらく『変化』と『破壊』の力を使って封印を完全に壊すこと」

 封印が完全に壊れれば、力をフルに使えるからね。

 対して、他の神様たちは時空の狭間に存在していて、ここで自由に力を振るえない。感情の神の一人勝ちになる。

「『変化』はまだ外から操られている状態だ。しかし、『感情』がさらに力を増せば『変化』の身体と権能が『感情』乗っ取られる」

 三番目の乗っ取りは、復活への第二歩。
 私まで取り込まれると、かなり難しい状況に陥る。

 なんとしてでも、阻止しないと。

「式典開催をスヴェートで行う目的は『破壊』を『感情』の近くに呼び込むことか。もしくは、式典で『感情』の封印ではなく復活を行うことだな」

「なら、私が行かなければ良いだけじゃないの?」

 そうは言ってみたものの、自分でもこれは違うとはっきり分かった。

 スヴェートには行かなければならない。

 これは私の役割だ。

「おい、四番目。『封印』には四番目の力もいるんだからな」

 テラが私の必要性を言い切る。

「今回は封印が弱まってるんだ。それに三番目が邪魔してくることも考えられる。三人で封印した方がいい」

「まぁ、妥当な判断だよね」

「そして、ついでに三番目も処理する」

 テラが皆の前で、三番目の処遇について言及した。

 処理という言葉が重く胸にのし掛かる。

 どこかで二番目がため息をついているような気がした。

「それで式典はスヴェート開催で決定なのか?」

 テラの説明が終わったと思ったのか、さっそく質問が飛んでくる。質問は私の真横から飛び出していた。
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