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5 出張旅行編
6-1 師団長は首をひねる
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レストスから帰ってきて二週間。
俺とフィアは、溜まった仕事と多忙期のための準備とが重なって、働き詰め。
ようやく休暇が取れ、二人揃って、手をしっかりと繋いでやってきたのは、例のシュタム百貨店だ。
シュタム百貨店はレストスフェアなる企画展を計画しており、今日はその事前開催の初日。
その午前中の部を貸し切って、フィアとともに中を見回っていた。
フィアの希望でもあったが、エルヴェスの口車に乗せられた気もしないではない。
しかも『レストスフェア』と聞いていたのが、実際は『荒竜と破壊のお姫さまが巡ったレストスフェア』だったり、細部が話と違っている。
まぁ、フィアが『デート』と言いながら楽しそうにしているので、水に流してやるか。
「あれ?」
突然、フィアが驚いたような声をあげ立ち止まった。訝しげな顔をしている。
「どうした、フィア?」
俺はフィアを引き寄せ、顔を覗き込んだ。フィアはキョロキョロと辺りを見回している。
「うーんとね。この臭いって、あの臭い、だよね?」
この臭い?
ここに至って、ようやく俺も、フィアが指摘した臭いに気が付いた。
いや、別に気付いていなかった訳ではなく、隣を歩くフィアの匂いが気になって、他の臭いは気にならなかったというだけなんだが。
鼻をくすぐる刺激臭。
香辛料をたっぷり使っているような特徴ある香りと、肉と脂が焼けて煮込まれている独特の香り。
これは、つい最近、食べた料理だよな。
「辛牛亭か」
あそこの名物料理とやらにそっくりだ。
店長はクズだったが、テラス席からの眺めや名物料理に文句はない。
むしろ、眺めは絶景、料理は絶品。店長の頭の中身が絶望的でさえなければ、何度も利用したい店だったのにな。
俺にはそっくりに思える臭いも、赤種のフィアにとっては違いがあるものらしい。
「うん、ちょっと違うけど、基本的に同じ臭いだよね」
フィアはふむふむと頷く。
「臭いがするってことは、辛牛亭も出店してるのか」
俺は少し嫌な気分になった。
シュタム百貨店に出店するということは一流の店の証でもある。そんな一流の証をあんな店長のいる店に渡したくはない。
「確かにレストスで辛牛亭も行ったけどな。何も、あんな店をレストスフェアに呼ばなくてもな」
ちっ。
俺はフィアから見えないように、軽く舌打ちをした。
エルヴェスのやつ、何をやってるんだ。
あの嫌な店を煮るなり焼くなり、いくらでも好きにできる口実を、せっかく作ってやったというのに。
「でも、味は良かったよ。あそこの店長さんとは、顔を合わせたくないけどね」
「あぁ、そうだな」
俺も辺りを見回す。
貸し切りなので、客は俺とフィアの二人だけ。俺たちについて案内してくれる従業員を除いては、本開催の準備のために忙しそうに歩き回っていた。
「まぁ、向こうの店をそのままにして、店長自らこっちに来るとは思えないけどな」
俺は店長の顔を想像して後悔する。遠くにいる忌々しいやつの顔より、そばにいるフィアの笑顔だ。俺はこれを守っていればいい。
俺は優しくフィアに微笑んだ。
フィアはというと、やはり臭いが気になったのか、案内係に質問をしていた。
「あのー、レストスフェアに辛牛亭も出店してるんですか?」
「あの名物料理の辛牛亭でございますね」
「はい、その辛牛亭です」
案内係はフィアの質問に対して意外な答えを口にする。
「残念ながら、辛牛亭は出店しておりません。出店基準を満たせませんでした」
「出店基準?」
「つまりあれだな、味の他に、人気だとか評判だとかだな」
「左様でございます」
「へー、ラウ、詳しい」
フィアがパッと目を輝かせた。
俺が適当に答えた内容にも、真剣に、そして素直に応じる様が微笑ましい。
「評判が落ちたから、出店できなかったわけか。なら、この臭いは? 辛牛亭の料理に似てるような気がするが」
「遺跡の森亭、新しくオープンしたシュタム直営のレストランでございます」
案内係が妙に自信ありげに返事をし、こちらにどうぞと、俺たちを誘導していった。
ついた先にあったのは、こじんまりとしたカフェ風のレストラン。名前こそ料亭っぽいがオシャレな店構えだった。
「いらっしゃいませ、遺跡の森亭です」
出迎えた男を見て、俺もフィアも、思わずぎょっとする。
「「あ」」
そう、出迎えたのは、
「ユクレーナさんの昔馴染みの人?」
「なんで、お前がここに?」
辛牛亭の副料理長でフィールズ補佐官の昔馴染みの男。ギルメール・スタナートだったのだ。
「実は…………」
立ち話もなんだからと、席に案内され、件の料理が目の前に出された状況で、スタナートの話が始まった。
「それで、ただ働き同然で、仕事を受けたのか」
技能なしを蔑む発言で評判が地に落ちた辛牛亭。出店の声かけを取りやめ、エルヴェスは別の声かけに変更したらしい。
つまりは、料理人の引き抜き。
辛牛亭の料理人を引き抜いて、直営のレストランで働かせる。
もちろん、俺たちと辛牛亭との間で起きた騒動を、実際に見ていたやつもいるが、それだけでは評判が地に落ちるまではいかない。
当然、エルヴェスの配下が裏で動いている。
そしてエルヴェスは、辛牛亭の材料やレシピもしっかり手中に納めているようだった。
そうして、さらにレシピを改良し、同じようでいて違う料理にして売り出したという。
しかも、引き抜いた料理人はどうしても王都で働きたい人物で腕は確か。
他の店ならもっと稼げるだろうに、衣食住の面倒も見てもらっているとはいえ、ずいぶんと安く働かせられていた。
「エルヴェスさんの本当の目的は、これだったんじゃないの?」
「副産物だな。あの騒動を利用して、自分の儲けになるよう画策したんだろ」
絶対そうだ。最初から考えていたはずがない。最初からここまで見越していたとしたら、怖すぎないか?
「エルヴェスさんらしいよね」
フィアがかわいく、訳知り顔をして、ふむふむと頷くと、スタナートは困ったような顔で反論する。
「僕ひとりが暮らすには十分なくらい、もらってますから」
でも、それだと新人の初任給程度だぞ?
本当に騙されてないか?
俺が余計な心配をしている間に、フィアはもっと重要な質問をする。
「それで、ユクレーナさんのことは?」
「諦めるわけがないでしょう」
あっさり答えるスタナート。
「だよね」「だよな」
だから、王都に出てきたんだしな。
「ユクレーナがレストスに戻らず、王都で働きたいのであれば、僕が来ればいいだけですから」
吹っ切ったように明るく答える。
そんなスタナートに、フィアは当然の質問をした。
「ユクレーナさんには伝えてあるの?」
「はい。毎日、手紙を送っています」
「「え」」
毎日?
俺とフィアは、件の料理を食べる手を止め、パッとスタナートを見上げる。
テーブルの脇に立って話をしていたスタナートがビクッとするが、そんなことはどうでもいい。
「…………毎日は、止めた方がいいよ」
フィアが意を決したように言葉を絞り出す。フィアの言葉に俺も同意だ。
「そうだな。さすがに毎日はやり過ぎだよな」
「そうだよ。さすがにラウだって毎日はやらないから」
フィアの口からポロッとこぼれた。
確かに俺は毎日手紙は書かないが、俺が基準になる必要はあるか?
「フィア、それはどういう意味だ?」
数十秒にも渡る沈黙の後、フィアは真面目な顔でこう答えた。
「そういう意味」
うむ、分からん。
俺は首をひねるばかりだった。
俺とフィアは、溜まった仕事と多忙期のための準備とが重なって、働き詰め。
ようやく休暇が取れ、二人揃って、手をしっかりと繋いでやってきたのは、例のシュタム百貨店だ。
シュタム百貨店はレストスフェアなる企画展を計画しており、今日はその事前開催の初日。
その午前中の部を貸し切って、フィアとともに中を見回っていた。
フィアの希望でもあったが、エルヴェスの口車に乗せられた気もしないではない。
しかも『レストスフェア』と聞いていたのが、実際は『荒竜と破壊のお姫さまが巡ったレストスフェア』だったり、細部が話と違っている。
まぁ、フィアが『デート』と言いながら楽しそうにしているので、水に流してやるか。
「あれ?」
突然、フィアが驚いたような声をあげ立ち止まった。訝しげな顔をしている。
「どうした、フィア?」
俺はフィアを引き寄せ、顔を覗き込んだ。フィアはキョロキョロと辺りを見回している。
「うーんとね。この臭いって、あの臭い、だよね?」
この臭い?
ここに至って、ようやく俺も、フィアが指摘した臭いに気が付いた。
いや、別に気付いていなかった訳ではなく、隣を歩くフィアの匂いが気になって、他の臭いは気にならなかったというだけなんだが。
鼻をくすぐる刺激臭。
香辛料をたっぷり使っているような特徴ある香りと、肉と脂が焼けて煮込まれている独特の香り。
これは、つい最近、食べた料理だよな。
「辛牛亭か」
あそこの名物料理とやらにそっくりだ。
店長はクズだったが、テラス席からの眺めや名物料理に文句はない。
むしろ、眺めは絶景、料理は絶品。店長の頭の中身が絶望的でさえなければ、何度も利用したい店だったのにな。
俺にはそっくりに思える臭いも、赤種のフィアにとっては違いがあるものらしい。
「うん、ちょっと違うけど、基本的に同じ臭いだよね」
フィアはふむふむと頷く。
「臭いがするってことは、辛牛亭も出店してるのか」
俺は少し嫌な気分になった。
シュタム百貨店に出店するということは一流の店の証でもある。そんな一流の証をあんな店長のいる店に渡したくはない。
「確かにレストスで辛牛亭も行ったけどな。何も、あんな店をレストスフェアに呼ばなくてもな」
ちっ。
俺はフィアから見えないように、軽く舌打ちをした。
エルヴェスのやつ、何をやってるんだ。
あの嫌な店を煮るなり焼くなり、いくらでも好きにできる口実を、せっかく作ってやったというのに。
「でも、味は良かったよ。あそこの店長さんとは、顔を合わせたくないけどね」
「あぁ、そうだな」
俺も辺りを見回す。
貸し切りなので、客は俺とフィアの二人だけ。俺たちについて案内してくれる従業員を除いては、本開催の準備のために忙しそうに歩き回っていた。
「まぁ、向こうの店をそのままにして、店長自らこっちに来るとは思えないけどな」
俺は店長の顔を想像して後悔する。遠くにいる忌々しいやつの顔より、そばにいるフィアの笑顔だ。俺はこれを守っていればいい。
俺は優しくフィアに微笑んだ。
フィアはというと、やはり臭いが気になったのか、案内係に質問をしていた。
「あのー、レストスフェアに辛牛亭も出店してるんですか?」
「あの名物料理の辛牛亭でございますね」
「はい、その辛牛亭です」
案内係はフィアの質問に対して意外な答えを口にする。
「残念ながら、辛牛亭は出店しておりません。出店基準を満たせませんでした」
「出店基準?」
「つまりあれだな、味の他に、人気だとか評判だとかだな」
「左様でございます」
「へー、ラウ、詳しい」
フィアがパッと目を輝かせた。
俺が適当に答えた内容にも、真剣に、そして素直に応じる様が微笑ましい。
「評判が落ちたから、出店できなかったわけか。なら、この臭いは? 辛牛亭の料理に似てるような気がするが」
「遺跡の森亭、新しくオープンしたシュタム直営のレストランでございます」
案内係が妙に自信ありげに返事をし、こちらにどうぞと、俺たちを誘導していった。
ついた先にあったのは、こじんまりとしたカフェ風のレストラン。名前こそ料亭っぽいがオシャレな店構えだった。
「いらっしゃいませ、遺跡の森亭です」
出迎えた男を見て、俺もフィアも、思わずぎょっとする。
「「あ」」
そう、出迎えたのは、
「ユクレーナさんの昔馴染みの人?」
「なんで、お前がここに?」
辛牛亭の副料理長でフィールズ補佐官の昔馴染みの男。ギルメール・スタナートだったのだ。
「実は…………」
立ち話もなんだからと、席に案内され、件の料理が目の前に出された状況で、スタナートの話が始まった。
「それで、ただ働き同然で、仕事を受けたのか」
技能なしを蔑む発言で評判が地に落ちた辛牛亭。出店の声かけを取りやめ、エルヴェスは別の声かけに変更したらしい。
つまりは、料理人の引き抜き。
辛牛亭の料理人を引き抜いて、直営のレストランで働かせる。
もちろん、俺たちと辛牛亭との間で起きた騒動を、実際に見ていたやつもいるが、それだけでは評判が地に落ちるまではいかない。
当然、エルヴェスの配下が裏で動いている。
そしてエルヴェスは、辛牛亭の材料やレシピもしっかり手中に納めているようだった。
そうして、さらにレシピを改良し、同じようでいて違う料理にして売り出したという。
しかも、引き抜いた料理人はどうしても王都で働きたい人物で腕は確か。
他の店ならもっと稼げるだろうに、衣食住の面倒も見てもらっているとはいえ、ずいぶんと安く働かせられていた。
「エルヴェスさんの本当の目的は、これだったんじゃないの?」
「副産物だな。あの騒動を利用して、自分の儲けになるよう画策したんだろ」
絶対そうだ。最初から考えていたはずがない。最初からここまで見越していたとしたら、怖すぎないか?
「エルヴェスさんらしいよね」
フィアがかわいく、訳知り顔をして、ふむふむと頷くと、スタナートは困ったような顔で反論する。
「僕ひとりが暮らすには十分なくらい、もらってますから」
でも、それだと新人の初任給程度だぞ?
本当に騙されてないか?
俺が余計な心配をしている間に、フィアはもっと重要な質問をする。
「それで、ユクレーナさんのことは?」
「諦めるわけがないでしょう」
あっさり答えるスタナート。
「だよね」「だよな」
だから、王都に出てきたんだしな。
「ユクレーナがレストスに戻らず、王都で働きたいのであれば、僕が来ればいいだけですから」
吹っ切ったように明るく答える。
そんなスタナートに、フィアは当然の質問をした。
「ユクレーナさんには伝えてあるの?」
「はい。毎日、手紙を送っています」
「「え」」
毎日?
俺とフィアは、件の料理を食べる手を止め、パッとスタナートを見上げる。
テーブルの脇に立って話をしていたスタナートがビクッとするが、そんなことはどうでもいい。
「…………毎日は、止めた方がいいよ」
フィアが意を決したように言葉を絞り出す。フィアの言葉に俺も同意だ。
「そうだな。さすがに毎日はやり過ぎだよな」
「そうだよ。さすがにラウだって毎日はやらないから」
フィアの口からポロッとこぼれた。
確かに俺は毎日手紙は書かないが、俺が基準になる必要はあるか?
「フィア、それはどういう意味だ?」
数十秒にも渡る沈黙の後、フィアは真面目な顔でこう答えた。
「そういう意味」
うむ、分からん。
俺は首をひねるばかりだった。
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