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4 騎士と破壊のお姫さま編
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第六師団の執務室は朝とは打って変わって、重苦しい雰囲気に包まれていた。
第四師団が半壊したため、第四師団の通常業務が停滞する。
そのため、第二師団、第六師団、第八師団が支援に入るという流れで、今日はその初回。
第六師団は通常、赤の樹林巡回を担当しているので、第四師団が担当する黒の樹林巡回の支援に入った。
んだけれど。
ラウとカーネリウスさんが難しい顔をして、執務室に帰ってきた。
カーネリウスさんが説明というか、愚痴をこぼし始める。
「巡回業務について分かってない上に、業務がまったくできていない。
そんなヤツらが、自分らの持ち場だからと先頭に立ってるんで、やることなすことグデグデで」
「マー、ソーでしょうねー」
カーネリウスさんの説明をラウがむずかしい顔で引き継ぐ。
「それで、ハーセルが第四師団のヤツらを締め上げたそうだ」
「マー、ソーなるでしょうねー」
「え? そこで納得?」
今回、支援に入ったのは遊撃部隊。
好戦的でないという意味では、戦闘系の部隊の中で一番温厚なところ。
遊撃部隊長のハーセルさんはその中でも一番、冷静に対処する。そしてどんな指示であっても、顔色ひとつ変えずサクッと終わらせると評判だ。
遊撃部隊は、囮や奇襲など、本隊と離れて活動する。どんな状況下であっても、冷静な判断が求められるので、感情にまったく左右されない落ち着いた部隊のはずだ。
その部隊で一番冷静なハーセルさんが、先頭に立っていた第四師団の騎士を締め上げたっていうのだ。
第四師団、相当、マズくない?
「ハーセルが言うには、魔獣や魔物が出てきて、第四師団のヤツらが殺される前に対処した、と」
「凄い理由」
冷静でも温厚でも、ハーセルさんはやっぱり第六師団だった。
「それなら仕方ありませんわね」
「え? ルミアーナさんまで?」
私の目の前でウンウンと頷くルミアーナさん。
「クロスフィアさん、第四師団はなんて呼ばれてるかご存知?」
「え? 第四師団にも、あだ名みたいなのがあるの?」
ルミアーナさんからの突然の質問に、私は首を捻り、頭の中で考える。
確か、第六師団はロクデナシってよばれてた。それと似たようなものだろうか。
「ええ。第四師団はヨセアツメ。実力も頭の中身も中途半端なお方ばかりですから」
「ルミアーナさんの評価が厳しい」
「マー、クルクルちゃんの言うとおりの連中よねー」
「エルヴェスさんまで」
第四師団は、精霊魔法技能が上級以上の騎士の集まりだ。
全員、風属性所持者で音の伝達魔法を通信手段にしている。情報伝達力は頭抜けている割に、その他の能力は今ひとつ。
というか、精霊魔法技能があることを鼻にかけて、その他の技能を下に見ている人たちなので、精霊魔法技能以外の習得や鍛錬はしていない。
それって騎士としてどうなの?って思ってたけど、私以外も同じ意見、いや、もっと辛辣だった。
「その点、第六師団はロクデナシばかりですけど、実力的には優秀有能な方ばかりですわ!」
「ロクデナシって、ハッキリ言った」
ルミアーナさんのロクデナシ発言を見事に無視して、ラウは話を進める。
「まぁ、そんなわけでだ。第六師団と第四師団は決裂した」
「決裂」
「決裂で済んで、第四師団も命拾いしましたわね」
「命拾い」
「マー、スマシ顔のヤツを担当にしたからねー これがノーテンキとかガツガツだったら、業務の足を引っ張るからって消されてたわねー」
「本気でやりそう」
ラウ、ルミアーナさん、エルヴェスさんと発言が物騒すぎる。
とはいえ。
ノーテンキは突撃部隊長のドラグゼルンさん、ガツガツは戦闘部隊長のベルンネーズさん。
礼儀正しいドラグゼルンさんも、女子弱い論者のベルンネーズさんも、好戦的な性格だ。
一番冷静なハーセルさんでさえ、締め上げる状態。他の部隊なら惨状になるのは目に見えていた。
「それで、どうなるの?」
「第二師団と交代だな」
「第八師団とも問題起こしたようなんです。第二師団が、全面的に第四師団の支援に入ることになりそうですね」
第八師団に対しても何かやったのか、第四師団。
第四師団の人手不足は、元はといえば、身内の不祥事によるもの。
その解消のため、他師団は業務を遣り繰りして手伝っているというのに。ありがたさも何も感じてないんだね。
「まぁ、また、話し合いだな」
「第二師団は第四師団と仲が良いの?」
「良い訳じゃないがな。古巣が第二師団てやつが多いからな」
「第四師団も第六師団同様、新任の新人はおらず、他師団からの異動者で構成されてまして。ほとんどが、第二師団からの異動者なんですよ」
ラウの言葉をカーネリウスさんが解説してくれた。
「つまり、見知った人たちってことか」
「あぁ、そうだ。性格もよく知ってるから、扱いも慣れてるんだ」
「ともかく、予定表の組み直しってわけだね」
私は手元にある予定の紙に赤で印を入れていく。
元々、一番温厚な遊撃部隊を支援部隊としていたので、ここは変えない。
第四師団の支援ではなく、第二師団の支援として。
第二師団の支援部隊が増員となり、第二師団の手薄になる部分を第四師団で埋めればいい。
不要と言われれば、別に手伝う必要もないし。
「こんなものかな」
私は紙をラウに手渡した。
「助かるよ、フィア」
紙をチラッと見ただけで、ラウは中身を理解してくれたようだ。
本当は、私も第二師団との打ち合わせに行ければいいんだけど。
「カーネリウスとエレバウトを連れて行く。フィアはここでエルヴェスの手伝いをしていてくれ」
第二師団のベルンドゥアン師団長は、この前、ラウの隙をついて、ここまでジンを連れてきた人物だ。
面倒だから、あまり相手をしたくない。
そんな気持ちが顔に出ていたんだろう。
「無理はしなくていいんだからな」
「ありがとう、ラウ」
ラウに心配をかけてしまった。
感情がよく顔に出ると言われてるからなぁ。その辺、直さないとなぁ。
そう思ったことも顔に出ていたようで、
「フィアはそのままのフィアで良いんだからな」
ラウが耳元でそう囁いて、思わず私は顔を赤らめたのだった。
第四師団が半壊したため、第四師団の通常業務が停滞する。
そのため、第二師団、第六師団、第八師団が支援に入るという流れで、今日はその初回。
第六師団は通常、赤の樹林巡回を担当しているので、第四師団が担当する黒の樹林巡回の支援に入った。
んだけれど。
ラウとカーネリウスさんが難しい顔をして、執務室に帰ってきた。
カーネリウスさんが説明というか、愚痴をこぼし始める。
「巡回業務について分かってない上に、業務がまったくできていない。
そんなヤツらが、自分らの持ち場だからと先頭に立ってるんで、やることなすことグデグデで」
「マー、ソーでしょうねー」
カーネリウスさんの説明をラウがむずかしい顔で引き継ぐ。
「それで、ハーセルが第四師団のヤツらを締め上げたそうだ」
「マー、ソーなるでしょうねー」
「え? そこで納得?」
今回、支援に入ったのは遊撃部隊。
好戦的でないという意味では、戦闘系の部隊の中で一番温厚なところ。
遊撃部隊長のハーセルさんはその中でも一番、冷静に対処する。そしてどんな指示であっても、顔色ひとつ変えずサクッと終わらせると評判だ。
遊撃部隊は、囮や奇襲など、本隊と離れて活動する。どんな状況下であっても、冷静な判断が求められるので、感情にまったく左右されない落ち着いた部隊のはずだ。
その部隊で一番冷静なハーセルさんが、先頭に立っていた第四師団の騎士を締め上げたっていうのだ。
第四師団、相当、マズくない?
「ハーセルが言うには、魔獣や魔物が出てきて、第四師団のヤツらが殺される前に対処した、と」
「凄い理由」
冷静でも温厚でも、ハーセルさんはやっぱり第六師団だった。
「それなら仕方ありませんわね」
「え? ルミアーナさんまで?」
私の目の前でウンウンと頷くルミアーナさん。
「クロスフィアさん、第四師団はなんて呼ばれてるかご存知?」
「え? 第四師団にも、あだ名みたいなのがあるの?」
ルミアーナさんからの突然の質問に、私は首を捻り、頭の中で考える。
確か、第六師団はロクデナシってよばれてた。それと似たようなものだろうか。
「ええ。第四師団はヨセアツメ。実力も頭の中身も中途半端なお方ばかりですから」
「ルミアーナさんの評価が厳しい」
「マー、クルクルちゃんの言うとおりの連中よねー」
「エルヴェスさんまで」
第四師団は、精霊魔法技能が上級以上の騎士の集まりだ。
全員、風属性所持者で音の伝達魔法を通信手段にしている。情報伝達力は頭抜けている割に、その他の能力は今ひとつ。
というか、精霊魔法技能があることを鼻にかけて、その他の技能を下に見ている人たちなので、精霊魔法技能以外の習得や鍛錬はしていない。
それって騎士としてどうなの?って思ってたけど、私以外も同じ意見、いや、もっと辛辣だった。
「その点、第六師団はロクデナシばかりですけど、実力的には優秀有能な方ばかりですわ!」
「ロクデナシって、ハッキリ言った」
ルミアーナさんのロクデナシ発言を見事に無視して、ラウは話を進める。
「まぁ、そんなわけでだ。第六師団と第四師団は決裂した」
「決裂」
「決裂で済んで、第四師団も命拾いしましたわね」
「命拾い」
「マー、スマシ顔のヤツを担当にしたからねー これがノーテンキとかガツガツだったら、業務の足を引っ張るからって消されてたわねー」
「本気でやりそう」
ラウ、ルミアーナさん、エルヴェスさんと発言が物騒すぎる。
とはいえ。
ノーテンキは突撃部隊長のドラグゼルンさん、ガツガツは戦闘部隊長のベルンネーズさん。
礼儀正しいドラグゼルンさんも、女子弱い論者のベルンネーズさんも、好戦的な性格だ。
一番冷静なハーセルさんでさえ、締め上げる状態。他の部隊なら惨状になるのは目に見えていた。
「それで、どうなるの?」
「第二師団と交代だな」
「第八師団とも問題起こしたようなんです。第二師団が、全面的に第四師団の支援に入ることになりそうですね」
第八師団に対しても何かやったのか、第四師団。
第四師団の人手不足は、元はといえば、身内の不祥事によるもの。
その解消のため、他師団は業務を遣り繰りして手伝っているというのに。ありがたさも何も感じてないんだね。
「まぁ、また、話し合いだな」
「第二師団は第四師団と仲が良いの?」
「良い訳じゃないがな。古巣が第二師団てやつが多いからな」
「第四師団も第六師団同様、新任の新人はおらず、他師団からの異動者で構成されてまして。ほとんどが、第二師団からの異動者なんですよ」
ラウの言葉をカーネリウスさんが解説してくれた。
「つまり、見知った人たちってことか」
「あぁ、そうだ。性格もよく知ってるから、扱いも慣れてるんだ」
「ともかく、予定表の組み直しってわけだね」
私は手元にある予定の紙に赤で印を入れていく。
元々、一番温厚な遊撃部隊を支援部隊としていたので、ここは変えない。
第四師団の支援ではなく、第二師団の支援として。
第二師団の支援部隊が増員となり、第二師団の手薄になる部分を第四師団で埋めればいい。
不要と言われれば、別に手伝う必要もないし。
「こんなものかな」
私は紙をラウに手渡した。
「助かるよ、フィア」
紙をチラッと見ただけで、ラウは中身を理解してくれたようだ。
本当は、私も第二師団との打ち合わせに行ければいいんだけど。
「カーネリウスとエレバウトを連れて行く。フィアはここでエルヴェスの手伝いをしていてくれ」
第二師団のベルンドゥアン師団長は、この前、ラウの隙をついて、ここまでジンを連れてきた人物だ。
面倒だから、あまり相手をしたくない。
そんな気持ちが顔に出ていたんだろう。
「無理はしなくていいんだからな」
「ありがとう、ラウ」
ラウに心配をかけてしまった。
感情がよく顔に出ると言われてるからなぁ。その辺、直さないとなぁ。
そう思ったことも顔に出ていたようで、
「フィアはそのままのフィアで良いんだからな」
ラウが耳元でそう囁いて、思わず私は顔を赤らめたのだった。
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