173 / 384
4 騎士と破壊のお姫さま編
1-6
しおりを挟む
「それで、劇はどうでしたの?」
デートの翌日。
第六師団にラウと出勤すると、ルミアーナさんが勢いよく話しかけてきた。
私は目を閉じて昨日の観劇を思い起こすと、昨日の興奮が蘇ってくる。
「すごくすごく良かった!」
「ですわよね。それで、占い師には会えましたの?」
「それなんだけどね……」
観劇の後、ラウといっしょに市場通りに繰り出した。
必要としている人にだけ、たどり着けるという占い師のお店を探しに。
お昼時だったので、市場の屋台からはいい匂いがして、あちこち、ラウと覗いて回ったのも、とても楽しかった。
少し休憩しようと、少し暗い脇道に入ったところで、そのお店が目の前にあった。
よく当たる人気の占い師のお店。
いっけん普通の家のような感じで何かが違う、そんな場所だった。
『あなたの運と未来を教えます』
扉にはそんな文言が書かれた紙がペラッと貼ってあるだけ。とても大人気とは思えない外観で、逆に興味をそそられた。
人気の占い師って、いったいどんな人なんだろう。
扉に手をかけて中に入ると、そこには……
「ほわほわちゃんに、クルクルちゃん!」
突然、賑やかな声がかけられ、私の思考はそこで停止した。
声の主は、観劇のチケットでお世話になったあの人だ。
「エルヴェスさん」
ラウの話だと、エルヴェスさんがシュタムの会長夫人その人だそうなんだけど、どこからどう見ても、エルヴェスさんだ。
かわいい女の子が大好きで、かわいい男の子も大好きで、優秀な人も大好きで、ふだんはちょっとカタコトっぽい喋り方をするエルヴェスさん。
第六師団ではラウ直属の副官を勤め、特務部隊と情報部隊のトップとして統括する。
とても、大グループの会長夫人には見えない。
ふだんほとんど会わないので鑑定したこともなかったから、結婚してただなんて知らなかった。エルヴェスさんは謎が多い。
その謎多き女性、エルヴェスさんが声をかけてきた。
「観劇はドーだったかしらー」
「すごくすごく良かったです!」
劇も良かったし、劇場も良かった。
観劇した席なんて、特別観覧席の最特上。まさに夢心地だ。
「ソーでしょー、ソーでしょー 自信作ナノよねー」
「え? まさか、お話作ったの、エルヴェスさん?」
「ウヘ」
第六師団の仕事をしながら、劇場の方も携わってるわけ?!
凄すぎる!と言おうとしたタイミングで、横から冷めた声がかかった。
「違うっす」
エルヴェスさんの補佐を勤める補佐一号さんだ。二号さんもいる。
「ウヘヘヘヘ」
変な笑い声をあげるエルヴェスさんを横目に見ながら、一号さんが説明を始めた。
「エルヴェス副官、元々は黒竜録を複製して大儲けしようとしてたんすけど、あれ、重要資料なんで持ち出し禁止なんすよね」
「うん、知ってる」
エルヴェスさんの大儲け計画が頓挫した話はラウから聞いた。エルヴェスさんは、竜種の稀少記録が重要資料になることを知らなかったらしい。
「舞台化しようとしたら、題名からして世界が滅びそうだったので。自分で作るのは諦めて、協力者に原作を依頼したんです」
「あら! 原作者がいらっしゃるのね!」
「それで、その協力者に原作となるお話を書いてもらったんすよ。その話を脚色して舞台化したのが、今回の劇ってことで」
「へー、手が掛かってる」
エルヴェスさんが作ったのではないにしろ、原作者がいて、脚本家がいて、いろいろな人がいて、あの劇ができたんだ。
師団の仕事もそうだけど、いろいろな人が自分の仕事をきっちりこなして、それで全体が上手くいく。
あの劇も様々な人が携わって、あの規模のものになったのだと思うと感慨深い。
いろいろな感傷に浸っている私そっちのけで、エルヴェスさんは衝撃的なひとことを放った。
「だから原作料、支払わないといけないのよね、チビッコに」
「「チビッコ?」」
私とルミアーナさんの動きがピタッと止まる。
ギギギっという感じで、ゆっくり首を動かして、お互いを見る。
最初に口を開いたのはルミアーナさんだ。
「クロスフィアさん、エルヴェス副官の言う『チビッコ』はバーミリオン様ではなくて?」
「そうだと思う」
ルミアーナさんのヒソヒソ声を聞き、ルミアーナさんも私と同じ事を考えていたんだなーと再認識。
だよね。エルヴェスさんがチビッコって言ったら、間違いなくテラのことだよね。
て、マジか。テラが原作者か。
「クロスフィアさん、バーミリオン様はお話なんて書いてらっしゃるのかしら?」
「創造の赤種だから、創作もできるんじゃないかな」
テラが作家活動してるだなんて聞いたことがない。
でも、私が知らないだけで、こっそりやっていたのかな。
何しろ、テラは創造の権能があり、過去の様々な記憶がある。過去の実話を基にしてお話を書いていても、おかしくはない。
「クロスフィアさん、バーミリオン様がお話の原作料なんて請求されるかしら?」
「するね、絶対」
大神殿の人たちって基本的に、寄付金大好き人間だ。
神官長からして、お金大好き人間の匂いがする。テラがあの神官長に影響されていても不思議ではない。
「ウヘヘヘヘ」
エルヴェスさんはエルヴェスさんで、奇妙な笑い声をあげているし。
うん、本当に会長夫人なのか怪しくなってきた。
「創造の赤種って人気作の創作もバッチリよねー もうガポガポだわー」
あの劇で、かなり儲けているらしい。
エルヴェスさんが満面の笑みを浮かべている。まるで、お金の魔力に取り付かれた人のようだ。
「ちなみに、原作料は純利益の三割よー」
「お金で手を打ったんだね、テラ」
テラもか。テラも取り付かれていたか。
「本物の黒竜と破壊の赤種も観劇したって話題だしー さらに人気急上昇よー」
「え? 私たち、お話と無関係だよ?」
同じなのは、竜と破壊というところだけ。後はまったく違う。なのに、何が本物なのか、理解が追いつかない。
「世間一般では、バーミリオン様が創造したお話だなんて知らないっす」
「世間一般では、黒竜と破壊の赤種の実話を脚色して舞台化したと思われてます」
いや、待って、そうなっちゃうの?
それって、誰得?
そんな話をここでされても!
ここで騒いだり否定したりしたところで、世間一般の評価というものは変わりがないのは分かってるけど。
「ええー?」
「ウヘヘヘヘ」
私の口からは抗議というか、なんでそんな話になるの?という不満を込めた悲鳴が溢れ、エルヴェスさんからはいつもの奇声が発せられ。
ラウとカーネリウスさんが問題を抱えて帰ってくるまで、執務室は賑わっていたのだった。
デートの翌日。
第六師団にラウと出勤すると、ルミアーナさんが勢いよく話しかけてきた。
私は目を閉じて昨日の観劇を思い起こすと、昨日の興奮が蘇ってくる。
「すごくすごく良かった!」
「ですわよね。それで、占い師には会えましたの?」
「それなんだけどね……」
観劇の後、ラウといっしょに市場通りに繰り出した。
必要としている人にだけ、たどり着けるという占い師のお店を探しに。
お昼時だったので、市場の屋台からはいい匂いがして、あちこち、ラウと覗いて回ったのも、とても楽しかった。
少し休憩しようと、少し暗い脇道に入ったところで、そのお店が目の前にあった。
よく当たる人気の占い師のお店。
いっけん普通の家のような感じで何かが違う、そんな場所だった。
『あなたの運と未来を教えます』
扉にはそんな文言が書かれた紙がペラッと貼ってあるだけ。とても大人気とは思えない外観で、逆に興味をそそられた。
人気の占い師って、いったいどんな人なんだろう。
扉に手をかけて中に入ると、そこには……
「ほわほわちゃんに、クルクルちゃん!」
突然、賑やかな声がかけられ、私の思考はそこで停止した。
声の主は、観劇のチケットでお世話になったあの人だ。
「エルヴェスさん」
ラウの話だと、エルヴェスさんがシュタムの会長夫人その人だそうなんだけど、どこからどう見ても、エルヴェスさんだ。
かわいい女の子が大好きで、かわいい男の子も大好きで、優秀な人も大好きで、ふだんはちょっとカタコトっぽい喋り方をするエルヴェスさん。
第六師団ではラウ直属の副官を勤め、特務部隊と情報部隊のトップとして統括する。
とても、大グループの会長夫人には見えない。
ふだんほとんど会わないので鑑定したこともなかったから、結婚してただなんて知らなかった。エルヴェスさんは謎が多い。
その謎多き女性、エルヴェスさんが声をかけてきた。
「観劇はドーだったかしらー」
「すごくすごく良かったです!」
劇も良かったし、劇場も良かった。
観劇した席なんて、特別観覧席の最特上。まさに夢心地だ。
「ソーでしょー、ソーでしょー 自信作ナノよねー」
「え? まさか、お話作ったの、エルヴェスさん?」
「ウヘ」
第六師団の仕事をしながら、劇場の方も携わってるわけ?!
凄すぎる!と言おうとしたタイミングで、横から冷めた声がかかった。
「違うっす」
エルヴェスさんの補佐を勤める補佐一号さんだ。二号さんもいる。
「ウヘヘヘヘ」
変な笑い声をあげるエルヴェスさんを横目に見ながら、一号さんが説明を始めた。
「エルヴェス副官、元々は黒竜録を複製して大儲けしようとしてたんすけど、あれ、重要資料なんで持ち出し禁止なんすよね」
「うん、知ってる」
エルヴェスさんの大儲け計画が頓挫した話はラウから聞いた。エルヴェスさんは、竜種の稀少記録が重要資料になることを知らなかったらしい。
「舞台化しようとしたら、題名からして世界が滅びそうだったので。自分で作るのは諦めて、協力者に原作を依頼したんです」
「あら! 原作者がいらっしゃるのね!」
「それで、その協力者に原作となるお話を書いてもらったんすよ。その話を脚色して舞台化したのが、今回の劇ってことで」
「へー、手が掛かってる」
エルヴェスさんが作ったのではないにしろ、原作者がいて、脚本家がいて、いろいろな人がいて、あの劇ができたんだ。
師団の仕事もそうだけど、いろいろな人が自分の仕事をきっちりこなして、それで全体が上手くいく。
あの劇も様々な人が携わって、あの規模のものになったのだと思うと感慨深い。
いろいろな感傷に浸っている私そっちのけで、エルヴェスさんは衝撃的なひとことを放った。
「だから原作料、支払わないといけないのよね、チビッコに」
「「チビッコ?」」
私とルミアーナさんの動きがピタッと止まる。
ギギギっという感じで、ゆっくり首を動かして、お互いを見る。
最初に口を開いたのはルミアーナさんだ。
「クロスフィアさん、エルヴェス副官の言う『チビッコ』はバーミリオン様ではなくて?」
「そうだと思う」
ルミアーナさんのヒソヒソ声を聞き、ルミアーナさんも私と同じ事を考えていたんだなーと再認識。
だよね。エルヴェスさんがチビッコって言ったら、間違いなくテラのことだよね。
て、マジか。テラが原作者か。
「クロスフィアさん、バーミリオン様はお話なんて書いてらっしゃるのかしら?」
「創造の赤種だから、創作もできるんじゃないかな」
テラが作家活動してるだなんて聞いたことがない。
でも、私が知らないだけで、こっそりやっていたのかな。
何しろ、テラは創造の権能があり、過去の様々な記憶がある。過去の実話を基にしてお話を書いていても、おかしくはない。
「クロスフィアさん、バーミリオン様がお話の原作料なんて請求されるかしら?」
「するね、絶対」
大神殿の人たちって基本的に、寄付金大好き人間だ。
神官長からして、お金大好き人間の匂いがする。テラがあの神官長に影響されていても不思議ではない。
「ウヘヘヘヘ」
エルヴェスさんはエルヴェスさんで、奇妙な笑い声をあげているし。
うん、本当に会長夫人なのか怪しくなってきた。
「創造の赤種って人気作の創作もバッチリよねー もうガポガポだわー」
あの劇で、かなり儲けているらしい。
エルヴェスさんが満面の笑みを浮かべている。まるで、お金の魔力に取り付かれた人のようだ。
「ちなみに、原作料は純利益の三割よー」
「お金で手を打ったんだね、テラ」
テラもか。テラも取り付かれていたか。
「本物の黒竜と破壊の赤種も観劇したって話題だしー さらに人気急上昇よー」
「え? 私たち、お話と無関係だよ?」
同じなのは、竜と破壊というところだけ。後はまったく違う。なのに、何が本物なのか、理解が追いつかない。
「世間一般では、バーミリオン様が創造したお話だなんて知らないっす」
「世間一般では、黒竜と破壊の赤種の実話を脚色して舞台化したと思われてます」
いや、待って、そうなっちゃうの?
それって、誰得?
そんな話をここでされても!
ここで騒いだり否定したりしたところで、世間一般の評価というものは変わりがないのは分かってるけど。
「ええー?」
「ウヘヘヘヘ」
私の口からは抗議というか、なんでそんな話になるの?という不満を込めた悲鳴が溢れ、エルヴェスさんからはいつもの奇声が発せられ。
ラウとカーネリウスさんが問題を抱えて帰ってくるまで、執務室は賑わっていたのだった。
10
お気に入りに追加
230
あなたにおすすめの小説
三年目の離縁、「白い結婚」を申し立てます! 幼な妻のたった一度の反撃
紫月 由良
恋愛
【書籍化】5月30日発行されました。イラストは天城望先生です。
【本編】十三歳で政略のために婚姻を結んだエミリアは、夫に顧みられない日々を過ごす。夫の好みは肉感的で色香漂う大人の女性。子供のエミリアはお呼びではなかった。ある日、参加した夜会で、夫が愛人に対して、妻を襲わせた上でそれを浮気とし家から追い出すと、楽しそうに言ってるのを聞いてしまう。エミリアは孤児院への慰問や教会への寄付で培った人脈を味方に、婚姻無効を申し立て、夫の非を詳らかにする。従順(見かけだけ)妻の、夫への最初で最後の反撃に出る。
家出した伯爵令嬢【完結済】
弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。
番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています
6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
【完結】元お飾り聖女はなぜか腹黒宰相様に溺愛されています!?
雨宮羽那
恋愛
元社畜聖女×笑顔の腹黒宰相のラブストーリー。
◇◇◇◇
名も無きお飾り聖女だった私は、過労で倒れたその日、思い出した。
自分が前世、疲れきった新卒社会人・花菱桔梗(はなびし ききょう)という日本人女性だったことに。
運良く婚約者の王子から婚約破棄を告げられたので、前世の教訓を活かし私は逃げることに決めました!
なのに、宰相閣下から求婚されて!? 何故か甘やかされているんですけど、何か裏があったりしますか!?
◇◇◇◇
お気に入り登録、エールありがとうございます♡
※ざまぁはゆっくりじわじわと進行します。
※「小説家になろう」「エブリスタ」様にも掲載しております(アルファポリス先行)。
※この作品はフィクションです。特定の政治思想を肯定または否定するものではありません(_ _*))
「お前を愛するつもりはない」な仮面の騎士様と結婚しました~でも白い結婚のはずなのに溺愛してきます!~
卯月ミント
恋愛
「お前を愛するつもりはない」
絵を描くのが趣味の侯爵令嬢ソールーナは、仮面の英雄騎士リュクレスと結婚した。
だが初夜で「お前を愛するつもりはない」なんて言われてしまい……。
ソールーナだって好きでもないのにした結婚である。二人はお互いカタチだけの夫婦となろう、とその夜は取り決めたのだが。
なのに「キスしないと出られない部屋」に閉じ込められて!?
「目を閉じてくれるか?」「えっ?」「仮面とるから……」
書き溜めがある内は、1日1~話更新します
それ以降の更新は、ある程度書き溜めてからの投稿となります
*仮面の俺様ナルシスト騎士×絵描き熱中令嬢の溺愛ラブコメです。
*ゆるふわ異世界ファンタジー設定です。
*コメディ強めです。
*hotランキング14位行きました!お読みいただき&お気に入り登録していただきまして、本当にありがとうございます!
【完結】公女が死んだ、その後のこと
杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】
「お母様……」
冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。
古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。
「言いつけを、守ります」
最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。
こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。
そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。
「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」
「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」
「くっ……、な、ならば蘇生させ」
「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」
「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」
「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」
「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」
「まっ、待て!話を」
「嫌ぁ〜!」
「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」
「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」
「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」
「くっ……!」
「なっ、譲位せよだと!?」
「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」
「おのれ、謀りおったか!」
「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」
◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。
◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。
◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった?
◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。
◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。
◆この作品は小説家になろうでも公開します。
◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!
公爵令嬢 メアリの逆襲 ~魔の森に作った湯船が 王子 で溢れて困ってます~
薄味メロン
恋愛
HOTランキング 1位 (2019.9.18)
お気に入り4000人突破しました。
次世代の王妃と言われていたメアリは、その日、すべての地位を奪われた。
だが、誰も知らなかった。
「荷物よし。魔力よし。決意、よし!」
「出発するわ! 目指すは源泉掛け流し!」
メアリが、追放の準備を整えていたことに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる