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2 新人研修編
4-9 班長という仕事
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第六師団は非常事態案件を扱う万能師団です。
厄介事専門みたいな言い方もされますが、あらゆる状況に対処可能。
そのため、戦闘以外の特殊任務を扱う、特務部隊という部署が存在しています。
このたびの組織改編で、後方部隊に組み込まれていた俺たちの班が、特務部隊に組み込まれることになりました。
もともと、戦闘はちょっと、と及び腰な班員しかいません。
戦闘から外れたと喜んだのもつかの間、前部隊より大変なところであることが判明しました。
「聞いて聞いて聞いて、アンタたち!」
聞いては一回で十分ですよ、エルヴェス副官。
けたたましい叫び声を上げながら、エルヴェス副官が俺たちの作業部屋にやってきました。
そうです。
特務部隊の大元はこのエルヴェス副官だったんです。
記録班を後方部隊から特務部隊に編成替えしたのも、この人。
エルヴェス副官と言えば、有能だけど、性格と性癖がヤバすぎて第六師団送りになったという、伝説の持ち主。
とくに性癖がヤバすぎて、師団長付きの副官なのに、執務室待機専門。
滅多に外回りに同行させてもらえない人です。
いったい余所で何をやったんでしょうね。
「アンタたちの『黒竜録』、もう、ガッポガポに大人気よ!」
あの、ガッポガポの意味が分かりません。
そうなんです。
去年、師団長の命で、赤の樹林で映像記録の任にあたり、その記録映像を『黒竜録』という形でまとめました。
竜録の記録は稀少です。
どうせなら、他の竜種の参考にもなるようにと張り切ってまとめたものが、エルヴェス副官の目に止まったんです。
まぁ、そんなこんなで、今ではこの破天荒な副官にすっかり振り回されながら、記録班として活動しています。
記録を撮るだけの簡単なお仕事、だなんて思わないでください。
新年の休暇期間に、突然呼び出されることもありますし。
赤の樹林での記録は、まさに戦場のど真ん中での活動でした。
「ソウソウ! 撮りたてホヤホヤ、持ってきたわよ!」
エルヴェス副官、新しい映像記録を持ってきてくれたようですね。
「伴侶捕獲編、初デート編に続く新作よ! どれもゲロ人気ダシ! 販売したら、ミンナ、ごはんが美味しくなるわー」
言葉の意味どころか、言葉と言葉の繋がりがおかしくなっています。
エルヴェス副官は他国生まれだそうなので、他国の言葉が混じるのでしょうか。
しかし、聞き逃せない言葉もありました。
「エルヴェス副官」
俺は慎重に説明します。
「竜種の稀少記録ですので、黒竜録はすべて第一級重要資料になります。つまり国家機密扱いです」
「国家機ミツ? アー、ソレって、」
「ハチミツの仲間ではありませんよ」
俺はしっかりと釘を刺します。
「国家機密。極秘資料です。販売許可どころか、まず、複製の製作許可がおりません」
もちろん、持ち出し、貸し出しも原則不可。内容がただのデート映像でも国家機密ですから。
「ハアーーー?! ソレじゃ、アタシの布教活動は?!」
何の宗教でしょう。変態教?
「今まで通り、閲覧希望者に執務室で見ていただく形が無難だと思います」
「ソォォォォンナーーー! 『美少女ちゃんの匂いでごはんを食べようの会』発足はドウなんのよ?!」
この人、なんて会を立ち上げようとしているんでしょうね。
師団長にバレたら、即、穴に埋められますよ。
「イチャイチャする美少女ちゃんの記録映像、見ながら食べるごはん。いい味が出て、サイコーなのよ?」
知りませんよ、そんなの。
「アー、お家ごはんでも、見たかったのに!」
執務室でごはん食べながら見てください。
ごね続けるエルヴェス副官。
まったくもう、きりがありません。
作業の邪魔になるだけなので、お引き取り願いましょうか。
「えっと、補佐一号さん。エルヴェス副官を連れて帰ってください。作業に戻りますので」
「了解っす!」
その前に、エルヴェス副官が手にしている映像記録の魔導具を回収回収。
「ほら、エルヴェス副官、帰るっすよ」
「補佐一号、アタシの夢が!!」
「なら、舞台化でも、どーぞっす」
「ハァァァ、舞台化! 物理最強竜種と火力最強赤種の燃え上がる○○! イケル、舞台化!」
「題名だけで、世界が終わるっす」
そして、いつもの妄想を振りまきながら、エルヴェス副官が帰っていきました。
入れ替わりに、第一塔から戻ってきた班員。
「班長。ナルフェブル補佐官から、記録映像を借りてきました」
「ありがとうございます。さすがにあの自然公園には、潜り込めませんでしたからね」
自然公園は今も閉鎖中。
氷雪祭前には閉鎖解除が間に合うようです。
氷雪祭はいつも通りの開催でしょう。
「あそこに潜り込めるの、エルヴェス副官くらいでしょうね」
「そのエルヴェス副官から、自然公園の記録映像をいただきました。遠慮なく使いましょう」
「「はい!」」
「いつの世も実録は廃れません。創作に負けないよう、頑張りましょう」
「「はい!」」
さぁ、黒竜録新作、編集開始です。
厄介事専門みたいな言い方もされますが、あらゆる状況に対処可能。
そのため、戦闘以外の特殊任務を扱う、特務部隊という部署が存在しています。
このたびの組織改編で、後方部隊に組み込まれていた俺たちの班が、特務部隊に組み込まれることになりました。
もともと、戦闘はちょっと、と及び腰な班員しかいません。
戦闘から外れたと喜んだのもつかの間、前部隊より大変なところであることが判明しました。
「聞いて聞いて聞いて、アンタたち!」
聞いては一回で十分ですよ、エルヴェス副官。
けたたましい叫び声を上げながら、エルヴェス副官が俺たちの作業部屋にやってきました。
そうです。
特務部隊の大元はこのエルヴェス副官だったんです。
記録班を後方部隊から特務部隊に編成替えしたのも、この人。
エルヴェス副官と言えば、有能だけど、性格と性癖がヤバすぎて第六師団送りになったという、伝説の持ち主。
とくに性癖がヤバすぎて、師団長付きの副官なのに、執務室待機専門。
滅多に外回りに同行させてもらえない人です。
いったい余所で何をやったんでしょうね。
「アンタたちの『黒竜録』、もう、ガッポガポに大人気よ!」
あの、ガッポガポの意味が分かりません。
そうなんです。
去年、師団長の命で、赤の樹林で映像記録の任にあたり、その記録映像を『黒竜録』という形でまとめました。
竜録の記録は稀少です。
どうせなら、他の竜種の参考にもなるようにと張り切ってまとめたものが、エルヴェス副官の目に止まったんです。
まぁ、そんなこんなで、今ではこの破天荒な副官にすっかり振り回されながら、記録班として活動しています。
記録を撮るだけの簡単なお仕事、だなんて思わないでください。
新年の休暇期間に、突然呼び出されることもありますし。
赤の樹林での記録は、まさに戦場のど真ん中での活動でした。
「ソウソウ! 撮りたてホヤホヤ、持ってきたわよ!」
エルヴェス副官、新しい映像記録を持ってきてくれたようですね。
「伴侶捕獲編、初デート編に続く新作よ! どれもゲロ人気ダシ! 販売したら、ミンナ、ごはんが美味しくなるわー」
言葉の意味どころか、言葉と言葉の繋がりがおかしくなっています。
エルヴェス副官は他国生まれだそうなので、他国の言葉が混じるのでしょうか。
しかし、聞き逃せない言葉もありました。
「エルヴェス副官」
俺は慎重に説明します。
「竜種の稀少記録ですので、黒竜録はすべて第一級重要資料になります。つまり国家機密扱いです」
「国家機ミツ? アー、ソレって、」
「ハチミツの仲間ではありませんよ」
俺はしっかりと釘を刺します。
「国家機密。極秘資料です。販売許可どころか、まず、複製の製作許可がおりません」
もちろん、持ち出し、貸し出しも原則不可。内容がただのデート映像でも国家機密ですから。
「ハアーーー?! ソレじゃ、アタシの布教活動は?!」
何の宗教でしょう。変態教?
「今まで通り、閲覧希望者に執務室で見ていただく形が無難だと思います」
「ソォォォォンナーーー! 『美少女ちゃんの匂いでごはんを食べようの会』発足はドウなんのよ?!」
この人、なんて会を立ち上げようとしているんでしょうね。
師団長にバレたら、即、穴に埋められますよ。
「イチャイチャする美少女ちゃんの記録映像、見ながら食べるごはん。いい味が出て、サイコーなのよ?」
知りませんよ、そんなの。
「アー、お家ごはんでも、見たかったのに!」
執務室でごはん食べながら見てください。
ごね続けるエルヴェス副官。
まったくもう、きりがありません。
作業の邪魔になるだけなので、お引き取り願いましょうか。
「えっと、補佐一号さん。エルヴェス副官を連れて帰ってください。作業に戻りますので」
「了解っす!」
その前に、エルヴェス副官が手にしている映像記録の魔導具を回収回収。
「ほら、エルヴェス副官、帰るっすよ」
「補佐一号、アタシの夢が!!」
「なら、舞台化でも、どーぞっす」
「ハァァァ、舞台化! 物理最強竜種と火力最強赤種の燃え上がる○○! イケル、舞台化!」
「題名だけで、世界が終わるっす」
そして、いつもの妄想を振りまきながら、エルヴェス副官が帰っていきました。
入れ替わりに、第一塔から戻ってきた班員。
「班長。ナルフェブル補佐官から、記録映像を借りてきました」
「ありがとうございます。さすがにあの自然公園には、潜り込めませんでしたからね」
自然公園は今も閉鎖中。
氷雪祭前には閉鎖解除が間に合うようです。
氷雪祭はいつも通りの開催でしょう。
「あそこに潜り込めるの、エルヴェス副官くらいでしょうね」
「そのエルヴェス副官から、自然公園の記録映像をいただきました。遠慮なく使いましょう」
「「はい!」」
「いつの世も実録は廃れません。創作に負けないよう、頑張りましょう」
「「はい!」」
さぁ、黒竜録新作、編集開始です。
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