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2 新人研修編
1-0 人生設計は就職から
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出勤初日、だというのに夫がうるさい。
「話が違うぞ!」
私の夫はラウゼルト・ドラグニール。
ロクデナシ団などと言われている、第六師団の師団長だ。
短髪の黒髪に力強さを感じる黒眼、身体もがっしりと大きくて、夫ながら格好いいと思う。
上位竜種の黒竜で、威圧感がもの凄いらしいが、私にとっては優しくていい夫だ。
いろいろな困った部分を除けば。
「第一塔の塔長室配属ってなんだよ!」
今日はまず、補佐官の長である第一塔長のところに行かないといけなくて。
ひとりで行けると言ってるのに、ひとりでは心配だからと夫がついてきて。
「第六師団長配属の間違いだろ!」
私が研修のため第一塔に仮配属されたという話を勝手に聞いて。
そして、今、夫が第一塔長に対して盛大に怒っていた。
「俺に配属するって言ってたじゃないか!」
にしても、いくらなんでも第六師団『長』配属ってないと思う。
第六師団配属の間違いでしょ。
「ま、そうなんだけどね」
第一塔長も、平然と第六師団『長』配属を肯定しないでほしい。
「そうもこうもないだろうが!」
「ま、研修はしないといけないしね」
うん、お茶が美味しい。
私はフィールズ補佐官とお茶しながら、部屋の奥で行われている夫と第一塔長のやりとりを、なるべく、見ないようにしていたのに。
わざわざ、第一塔長が声をかけてくるのだ。
「おーい、ラウゼルトをどうにかしようって気はないのかな? 夫だろう?」
「夫が過保護過ぎるので、上司の人からビシッと言ってもらえると助かります」
ここは最初にきっぱりと言っておかないといけない。
「え」
「夫が過保護で粘着質で独占欲が強くて執着が過ぎるので、上司の人からビシッと言ってください」
第一塔長は今日から私の上司の人だが、テラからは、舎弟だからズバズバ言っていいと許可もらってる。
テラの舎弟なら、私にとっても舎弟的存在。(上司だけど)
なんか言われたら、テラから許可もらったと言っておこう。コネっていいな。
「え」
「よろしくお願いします、上司の人」
それでも相手は上司。
丁寧にペコリと頭を下げる、遠くから。
「え」
「過保護で粘着質で独占欲が強くて愛情が重くて距離感がおかしく変質者で執着が過ぎるところがなければ、いい夫なんです。
よろしくお願いします、上司の人」
一息で言う。最後に念を押しておくのも忘れない。
「えー」
「フィアにいい夫って誉められた」
照れる要素がまったくないけど、それでも照れる前向きな夫。
いろいろなものがなければ、格好よくて優しくて素敵ないい夫だと思うので、この際、いろいろなものは諦めている。
「おい、誉められてないぞ。いい夫の前のいろいろなものは無視するのか」
あえて、そこに触れなくていいのに、上司の人。
「フィアはそれも含めて、いい夫だと言ってるだろうが」
そこまでは言ってないぞ、夫。
さすがにそこまで吹っ切れてないな、私も。諦めてはいるけど。
「そもそもだな。俺のフィアと会話をするな、視線を合わせるな。フィアを堪能していいのは俺だけだ!」
「おい、ラウゼルト、少し落ち着け」
上司の人、頑張れ。
もっとビシッと言わないと、ラウは静かにならない。
「落ち着いていられるか! フィア、やっぱりダメだ! 就職はなしだ! 家に帰ろう!」
ほら。仕方ない、奥の手でいくか。
「昼間もラウといっしょにいたいの。研修が終わらないと、ラウと仕事できないから、嫌」
テラに教わった内容を思い出しながら言ってみる。
少々、棒読み口調なのは愛嬌でなんとか誤魔化す。愛嬌、あったかな。
「ぐぅぅぅ、フィアがかわいいことを言ってる。心臓が止まる」
愛嬌、あったようだ。
「竜種の扱い、手慣れてるな」
「って言い返しとけって、テラに言われたので」
「なんだ、師匠の入れ知恵か」
上司の人はテラのことを『師匠』と呼ぶ。鑑定技能関係の師弟のようだ。
「何か言ったか?」
「ラウがいなくて寂しいけど、研修、頑張るね」
棒読み口調でもう一回。
「ぐぅぅぅ、フィアがかわいすぎて、ツラい」
「竜種の扱い、手慣れてるな」
「そういうわけで、よろしくお願いします、上司の人」
ペコリと頭を下げて、フィールズ補佐官とのお茶を再開したら、上司の人から指摘があった。
「おーい、僕を名前で呼ぶという発想はないのかな」
「上司の人は、私に名前呼びされて、ラウに消されたいんですね?」
ラウ以外の男を名前呼びして、ラウが生かしておくとは思えない。
「おぁっ。いやっ。上司の人でいい」
「はい、上司の人」
私はつとめて明るく返事をした。
お茶を飲みながら、辺りを見回す。
第一塔と名前がついている通り、ここは塔になっていて、各階は緩やかな階段でつながっている。
塔長室は最上階だ。
他の階層はいくつかの部屋に分かれているが、ここは塔長室一室のみ。
窓からの見晴らしがすごくいい。
窓以外の壁は本棚と書類入れで埋め尽くされていて、中央の大きな丸いテーブルに、茶器や茶葉などの棚が備え付けられていた。
「あっちはまだ終わりそうもないから、こっちはこっちで、始めておこうか」
青い顔した男性が左手を鳩尾に当てながら話しかけてきた。
塔長室所属の補佐官は、仮配属の私を除くと五人。
その一人が今、話しかけてきたナルフェブル補佐官だ。
青みががった灰色の髪はエルメンティアではあまり見かけない。
彼も技能なしだ。特級補佐官で、研究分野では並ぶ人がいないらしい。
お互い技能なし同士なので、先ほどラウが騒ぎ出すまでは、気安く話をしていた。
もともとあまり会話はしない人のようで、ポツリポツリと話す程度だったけど。
以前はメモリアとジン以外の人と会話することは滅多になかったし。
最近も特定の人以外とはまったく会わなかったので、とても新鮮に感じる。
「では、おのおの、自己紹介から始めましょう」
お茶を飲みながら、フィールズ補佐官が場を仕切り始めた。
他の補佐官もわらわらとテーブルにやってきて、お茶を片手に着席する。
皆でお茶をしながら進めるつもりのようだ。
「あちらは、当分終わりそうにありませんからね。あちらに付き合うのは時間の無駄でしょう」
フィールズ補佐官は金髪碧眼でマリージュを彷彿とさせる容貌の特級補佐官だ。
そして全属性の精霊術士でもある。この辺もマリージュと同じ。
違うのはふわふわした雰囲気の中に芯があって、カチッとしているところ。
とても頼りがいがあって安心できそう。
そして、フィールズ補佐官の指摘通り、夫と上司の人はまだもめている。
「はい、お願いします、先輩方」
そもそもの発端は私の『独立計画』にあった。
それがどうして、第一塔で夫と第一塔長がもめることになったのか。
話は新年初日に遡る。
「話が違うぞ!」
私の夫はラウゼルト・ドラグニール。
ロクデナシ団などと言われている、第六師団の師団長だ。
短髪の黒髪に力強さを感じる黒眼、身体もがっしりと大きくて、夫ながら格好いいと思う。
上位竜種の黒竜で、威圧感がもの凄いらしいが、私にとっては優しくていい夫だ。
いろいろな困った部分を除けば。
「第一塔の塔長室配属ってなんだよ!」
今日はまず、補佐官の長である第一塔長のところに行かないといけなくて。
ひとりで行けると言ってるのに、ひとりでは心配だからと夫がついてきて。
「第六師団長配属の間違いだろ!」
私が研修のため第一塔に仮配属されたという話を勝手に聞いて。
そして、今、夫が第一塔長に対して盛大に怒っていた。
「俺に配属するって言ってたじゃないか!」
にしても、いくらなんでも第六師団『長』配属ってないと思う。
第六師団配属の間違いでしょ。
「ま、そうなんだけどね」
第一塔長も、平然と第六師団『長』配属を肯定しないでほしい。
「そうもこうもないだろうが!」
「ま、研修はしないといけないしね」
うん、お茶が美味しい。
私はフィールズ補佐官とお茶しながら、部屋の奥で行われている夫と第一塔長のやりとりを、なるべく、見ないようにしていたのに。
わざわざ、第一塔長が声をかけてくるのだ。
「おーい、ラウゼルトをどうにかしようって気はないのかな? 夫だろう?」
「夫が過保護過ぎるので、上司の人からビシッと言ってもらえると助かります」
ここは最初にきっぱりと言っておかないといけない。
「え」
「夫が過保護で粘着質で独占欲が強くて執着が過ぎるので、上司の人からビシッと言ってください」
第一塔長は今日から私の上司の人だが、テラからは、舎弟だからズバズバ言っていいと許可もらってる。
テラの舎弟なら、私にとっても舎弟的存在。(上司だけど)
なんか言われたら、テラから許可もらったと言っておこう。コネっていいな。
「え」
「よろしくお願いします、上司の人」
それでも相手は上司。
丁寧にペコリと頭を下げる、遠くから。
「え」
「過保護で粘着質で独占欲が強くて愛情が重くて距離感がおかしく変質者で執着が過ぎるところがなければ、いい夫なんです。
よろしくお願いします、上司の人」
一息で言う。最後に念を押しておくのも忘れない。
「えー」
「フィアにいい夫って誉められた」
照れる要素がまったくないけど、それでも照れる前向きな夫。
いろいろなものがなければ、格好よくて優しくて素敵ないい夫だと思うので、この際、いろいろなものは諦めている。
「おい、誉められてないぞ。いい夫の前のいろいろなものは無視するのか」
あえて、そこに触れなくていいのに、上司の人。
「フィアはそれも含めて、いい夫だと言ってるだろうが」
そこまでは言ってないぞ、夫。
さすがにそこまで吹っ切れてないな、私も。諦めてはいるけど。
「そもそもだな。俺のフィアと会話をするな、視線を合わせるな。フィアを堪能していいのは俺だけだ!」
「おい、ラウゼルト、少し落ち着け」
上司の人、頑張れ。
もっとビシッと言わないと、ラウは静かにならない。
「落ち着いていられるか! フィア、やっぱりダメだ! 就職はなしだ! 家に帰ろう!」
ほら。仕方ない、奥の手でいくか。
「昼間もラウといっしょにいたいの。研修が終わらないと、ラウと仕事できないから、嫌」
テラに教わった内容を思い出しながら言ってみる。
少々、棒読み口調なのは愛嬌でなんとか誤魔化す。愛嬌、あったかな。
「ぐぅぅぅ、フィアがかわいいことを言ってる。心臓が止まる」
愛嬌、あったようだ。
「竜種の扱い、手慣れてるな」
「って言い返しとけって、テラに言われたので」
「なんだ、師匠の入れ知恵か」
上司の人はテラのことを『師匠』と呼ぶ。鑑定技能関係の師弟のようだ。
「何か言ったか?」
「ラウがいなくて寂しいけど、研修、頑張るね」
棒読み口調でもう一回。
「ぐぅぅぅ、フィアがかわいすぎて、ツラい」
「竜種の扱い、手慣れてるな」
「そういうわけで、よろしくお願いします、上司の人」
ペコリと頭を下げて、フィールズ補佐官とのお茶を再開したら、上司の人から指摘があった。
「おーい、僕を名前で呼ぶという発想はないのかな」
「上司の人は、私に名前呼びされて、ラウに消されたいんですね?」
ラウ以外の男を名前呼びして、ラウが生かしておくとは思えない。
「おぁっ。いやっ。上司の人でいい」
「はい、上司の人」
私はつとめて明るく返事をした。
お茶を飲みながら、辺りを見回す。
第一塔と名前がついている通り、ここは塔になっていて、各階は緩やかな階段でつながっている。
塔長室は最上階だ。
他の階層はいくつかの部屋に分かれているが、ここは塔長室一室のみ。
窓からの見晴らしがすごくいい。
窓以外の壁は本棚と書類入れで埋め尽くされていて、中央の大きな丸いテーブルに、茶器や茶葉などの棚が備え付けられていた。
「あっちはまだ終わりそうもないから、こっちはこっちで、始めておこうか」
青い顔した男性が左手を鳩尾に当てながら話しかけてきた。
塔長室所属の補佐官は、仮配属の私を除くと五人。
その一人が今、話しかけてきたナルフェブル補佐官だ。
青みががった灰色の髪はエルメンティアではあまり見かけない。
彼も技能なしだ。特級補佐官で、研究分野では並ぶ人がいないらしい。
お互い技能なし同士なので、先ほどラウが騒ぎ出すまでは、気安く話をしていた。
もともとあまり会話はしない人のようで、ポツリポツリと話す程度だったけど。
以前はメモリアとジン以外の人と会話することは滅多になかったし。
最近も特定の人以外とはまったく会わなかったので、とても新鮮に感じる。
「では、おのおの、自己紹介から始めましょう」
お茶を飲みながら、フィールズ補佐官が場を仕切り始めた。
他の補佐官もわらわらとテーブルにやってきて、お茶を片手に着席する。
皆でお茶をしながら進めるつもりのようだ。
「あちらは、当分終わりそうにありませんからね。あちらに付き合うのは時間の無駄でしょう」
フィールズ補佐官は金髪碧眼でマリージュを彷彿とさせる容貌の特級補佐官だ。
そして全属性の精霊術士でもある。この辺もマリージュと同じ。
違うのはふわふわした雰囲気の中に芯があって、カチッとしているところ。
とても頼りがいがあって安心できそう。
そして、フィールズ補佐官の指摘通り、夫と上司の人はまだもめている。
「はい、お願いします、先輩方」
そもそもの発端は私の『独立計画』にあった。
それがどうして、第一塔で夫と第一塔長がもめることになったのか。
話は新年初日に遡る。
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