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14 マユとオヤジとの経緯。そして、「生きてて良かった」

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「片親だからと後ろ指を指されたくない」
 そんなお義母さんの強い意志で、マユは厳しく育てられ、中学から大学まで女子校という環境に置かれました。
 女子校だから男の子に縁が無かったわけではありませんでしたが、男の子にラブレターをもらうより、女の子からの方が多かったそうです。大学に入り、二十になるまで、男性を知らずに過ごしました。
 小学校の頃から始めたバレーボールは大学でも続けていました。できれば社会人でプレーを続けたい。ダメなら中学校の保健体育の先生になりたい。高校の時そういう目標を立てて、日々を頑張っていたのです。
 そうして大学も三年生になった年の秋、練習するマユ達を見守るバレー部の監督の元に初老の男性が訪れました。
 精悍な風貌、ぴったりしたポロシャツの下の筋肉は盛り上がって、カッコイイおじさん、といった感じの人でした。
 監督は、元全日本のメンバーだった人で、俺の師匠だ、と部員たちに紹介しました。
「初めまして、ハセガワコウゾウです」
 その男性は名乗りました。
 マユ達はまたセットプレーの練習を再開しましたが、その「ハセガワさん」は何を指導するでもなく、ただじーっとマユ達の練習を見ているだけでした。
 その日の練習の最後に、何名かの部員が呼ばれ、残るようにと言われました。その中にマユもいました。
 残されたマユ達は、再度監督からレシーブ、セット、アタックを十本ぐらいづつやらされ、解散しました。マユ達が体育館を出るとき、監督とハセガワさんが何やら話をしているのが気にかかりました。
 ロッカールームに引き上げると、先に上がってシャワーで汗を流している部員の会話が耳に入りました。
「あの子たちって『落とされ組』でしょ?」
「あのオジサン、首切り人なんだって」
「そうなの?」
「見込みの無さそうな子を見極めるために呼ばれたらしいよ」
 マユはショックで目の前が真っ暗になりました。
 小学校のクラブ時代も入れれば、もう十年以上。それまでの人生の半分以上もがんばって来たのに、その結果がこれか、と。
 シャワールームから出てきた部員たちが彼女に気付き、そそくさと逃げるように出て行ったあとも、マユはいつまでもぽつんとロッカールームのベンチに座っていました。
 あくる日の練習の後、大会出場メンバーが発表されました。落とされ組から一人だけメンバーに選ばれていましたが、それはマユではありませんでした。
 仕方がない・・・。
 マユは残る目標、「保健体育の先生」を目指してがんばろう、と無理やり自分を納得させるしかありませんでした。
 そうとなれば、就職活動に精出すのみです。年明けには教育実習も始まります。そのための準備もいろいろとあるし、教師が駄目だったときのことも考えておく必要もあります。
そんなことを考えながら着替えて体育館を出ようとしたとき、
「コタニさん」
 マユは誰かから呼ばれました。
 声の主をキョロキョロ探していると、昨日練習を見ていたハセガワさんが歩み寄ってきました。
「コタニさん、残念だったね」
 練習を見ていた時の厳しい顔とは全然違う、人懐こい優しそうな田舎のおじさんみたいな顔で、ハセガワさんはマユを労ってくれました。
 マユが挨拶して形通りの礼をいうと、
「いや、なに。ところでコタニさん。キミ、ちょっと時間あるかな」
 彼はマユを大学の近くのカフェテリアに誘いました。
 注文した飲み物が来るまで、ハセガワさんは微笑みながらマユを見つめていました。ハセガワさんがマユを誘った意図を測りかねていましたが、監督が「師匠」というからには相当有名なエライ人なのだろうと、緊張して座っていました。
 コーヒーが運ばれて来たのを潮に、ハセガワさんは口を開きました。
「コタニさん、小学校からずっとバレーやってきたんだってね。キミも結構いいものを持ってるな、と思ったんだけどもねェ。・・・だけど、選ばれた人との差はあんまりないからね。あんまり、気を落とさないようにね」
 彼はそんな意味のことを言ってくれました。
 それを聞いてちょっと涙ぐみました。すると、目の前にスッときちんとアイロン掛けされたハンカチが差し伸べられました。
「あ、ありがとうございます」
 ハンカチで目頭を押さえながら、マユは礼をいいました。
 ウンウン、イヤ、ナニと頷いていたハセガワさんは、
「ところでね」と切り出しました。
「コタニさんは、進路どうするの? もう、何か目星あるの?」
「いえ、特には・・・」
「あ、そう。じゃあさ」
 とセカンドバッグから名刺入れを取り出し、
「就職で何か困ったことがあったらいつでも相談に乗るからね。連絡しておいで」
 名刺を渡し、じゃあ今日はこれで、とレシートを取り上げ、席を立ってあっという間に店を出て行ってしまいました。
 なにそれ。
 たったそれだけ? 
 彼が去っていった後もポカーンと座っていたマユでしたが、何か、へんなおじさんだったな、と可笑しさが込み上げてきて、ちょっと気分が晴れてくるような気がしました。
 
 数日後。
 授業の合間にエントリーシートの用紙でももらっとくかと、校舎の間を学生課のある棟に向かって歩いているとき、
「コタニさん」
 聞き覚えのある声に呼び止められました。
「ハセガワさん!」
 マユは急に気分が高揚するのを感じました。
「いや、なに。そこまで来ててね。前に耳寄りな情報を仕入れたもんだから、コタニさんに伝えようと思って」
 初めて会った時と同じ、ピッタリしたシャツの上に明るい色のジャケットを組み合わせた若々しい姿で、ハセガワさんは現れました。
「どう?もう授業終わる?」
「えと、あと二時間ぐらいで」とマユが答えると、
「じゃあ、その辺で時間をつぶしてるから。正門の前で待っているよ」
 授業が終わってマユが正門を出ると、真っ赤な小ぶりのオープンのスポーツカーがすーっと近づいてきて停まりました。
「やあ。どうぞ、乗って」
 マユは自分の顔がぽーっと上気してくるのがわかりました。
 ハセガワさんは話の面白い人でした。
 けっして人をアキさせないのです。
 話の中で、ハセガワさんがオリンピックのメンバー候補になりながら事故で足を痛めて選手生命を絶たれたこと。しばらく社会人チームとか大学の監督をして、今は市役所に勤めながら、無償でいろんなチームの相談役みたいなことをしていること。今の少なからぬプロや大学のチーム監督たちはみんなかつての教え子で、いろんな大学や高校、企業、役所につながりを持っていて、きっとマユの力になれる。僕はいろんな子を見てその才能を見極めてきたけれども、残念ながら選ばれなかった子たちも、何か違う素質を持ってるんじゃないかと、何かと就職の世話をしているんだ、という感じで、ホテルまでの短いドライブ中に、瞬く間にマユの信頼感を得たようです。
「実は部屋にいろんな企業や学校の求人資料を置いてあって。それを君に見てもらおうと思ってね」
「そうなんですか。いろいろ、ありがとうございます」
 車はやがてとあるシティーホテルの地下の駐車場に滑り込みました。
 ハセガワさんに連れられ、直通エレベーターで部屋のあるフロアへ誘いました。
「レディーファーストだよ」
 ハセガワさんはマユをエスコートして先に部屋に入れました。紳士なんだなあ。マユは単純に感動しました。今までそんなきちんとした男性を知らなかったマユには、無理もないことでした。
 ところが。
 部屋に入るとすぐ、後ろから抱きすくめられて、唇を奪われました。
「え? ちょ、ちょっと、待って」
 焦ったマユは抵抗しようとしたようですが、あまりのキスのうまさにあっという間に感覚をとろけさせられました。
 甘いキス。もう脳天が痺れてきそうでした。
 Tシャツを捲り上げられ、ブラの上からソフトに胸を揉まれ、指先で乳首のあたりを震えるようにイジられると、たまらず吐息を漏らしました。
「感じやすいんだね」
 背中がゾクッとしました。
 唇がだんだん下の方に下がり、ブラがズリ上げられ、舌先がバストの回りを直に這い回ると、彼女はたまらずハセガワさんの頭を抱えていました。ジラされ続けた乳首がついに含まれ、舌で転がされると、足がガクガクになり、立っていられずにその場に蹲ろうとしました。力強い腕がマユを引き上げ、そのままジーンズのベルトを外し、ショーツの上から撫でられました。
「スゴイ。もうこんなに。ぐちょぐちょじゃないか」
「・・・恥ずかしい」
「たったこれだけでこんなに濡れるなんて。イヤラシイ子だね、マユは」
「アン、あっ、ダメ、ダメですっ」
「あれェ? ここはいいって言ってるけどなあ」
 そんなイジワルを言いながら、ハセガワさんの手はショーツの両サイドにかかり、一気にズリ下ろされていました。間髪入れずに舌がマユの核を捉え、舐め、啜り上げますした。
「そ、そんなトコ、汚い、・・・はああ~ん。ああ、ダメ、なんか、ヘンですゥ」
「いいよ。とってもイヤラシイよ。たったこれだけでこんなに濡らすなんて、すごい素質だよ。マユは変態かもしれないね。苛められて喜ぶコなのかな?」
「ちが、違うゥーん。んんん。いや~、もう、もうわかんない」
「イキそう? イッちゃいな」
「イキそう? そうなんですか?あ、ああっ。でも初めてだから、よくわかんないんですゥ」
「え?」
 ハセガワさんはそのまま固まってしまいました。そして、中途半端に萌えさせられたマユを放って窓際に行き、腕組みをして何か考え込んでしまったのです。
 え?
 部屋の入り口でショーツを下げられたまま、マユは何がどうなっているのかわからず、ただぼーっと立っていました。
「よし!」
 なにが「よし」なのか、窓際から戻ったハセガワさんはマユのショーツを引っ張り上げて元通りにしました。
 え?
「今から君の親御さんに会いにゆこう。どこにいるの?」
 突然彼はこう言いだしました。
「ええっ?」
 もう、何が何だか。
 マユにはさっぱりわかりませんでした。
 同じ車の車中なのにホテルまでの時とは全然違いました。ハセガワさんは一言も口をききませんでした。時折、ここは左だね、とか、この辺りかなとか言う以外には。
 実家に着くと、マユのお義母さんは彼女を待っていました。
 ハセガワさんは玄関で折り目正しく挨拶をしました。
「武相市役所に勤めております、ハセガワコウゾウと申します」
「いつも娘がお世話になっております。帝城大学付属総合病院で看護師長をしております。コタニサエコです。どうぞお入り下さい」
 お義母さんはマユとハセガワさんをリビングに通しました。
「先ほどの娘の電話では卒業後の進路についてのお話とか」
 茶托を勧めながら、お義母さんは言いました。
 ハセガワさんは茶碗の蓋を取り、一口含んで熱さを計ると、あとは一気に流し込んで、こう言いました。
「単刀直入に申し上げます。お宅のお嬢さん、マユさんと結婚を前提としないお付き合いをさせていただきたいと思い、ご承諾をいただきに上がりました」
 お義母さんはしばらく固まっていたらしいです。
「は?」
 ハセガワさんはもう一度正確に同じ言葉を繰り返しました。
 お義母さんは自分の湯呑のお茶を一口含み、呑み込むや、
「マユ。ちょっとお買いもの行ってきなさい」と言いました。
「意味解るでしょ、席外しなさい、と言ってるの」
 買ってくるもののリストを口述し始めました。マユの頭ではその全てを覚えきれないほどのリストでした。
 途中、何回か電話を入れて確認した時、さらにいろいろ購入品の追加を言われ、レジ袋をいっぱい下げてマユが家に戻ると、ハセガワさんとお義母さんは彼女が家を出た時とそのままの位置で対峙していました。ラヴェンダーの芳香剤がとても匂っていました。
「マユ」
 お義母さんはマユを座らせ、対峙しました。
「ハセガワさんはお前の恋人になりたいと仰るの。あんたはそれでいいのね?」
 どう答えていいのかわかりませんでしたが、とりあえず頷きました。
「じゃあ、好きにしなさい」
 お義母さんはそう言い放つとハセガワさんに向き直って言いました。
「フツツカな娘ですが、今後ともよろしくお願いします」
 ハセガワさんも深々と頭を下げました
「ではこれにて失礼いたします」
 それだけ言うとさっさとマユの実家を出てゆきました。
 マユは何が起こったのかわけがわからず、ぼーっと座っていました。
「あんた、どうするの? 今日は泊まっていくの?」
 お義母さんに質され、やっと状況が呑み込めたマユは、
「ハセガワさんと一緒に帰る」と席を立ちました。
 帰り際、お義母さんは「いい女にして頂きなさい」と言ったそうです。
 いつもマユには厳しいお母さんが、なんだか優しげに見えました。
 こうしてハセガワさんとマユの付き合いはお義母さん公認となりました。

 ハセガワさんは車の中で待っていました。
「俺は、コソコソするのが嫌いでね。それに、誰かのただ一人の男になるのもね」
「ただ一人の男?」
「うん。・・・ところで、さっきの続き、したいかい?」
 とても恥ずかしかったらしいのですが、マユはハイ、と答えました。
「今付き合ってる人、いる?」
「いません。でも・・・」
 マユは続けました。
「片思いの人がいます」
「その人と思いを遂げたいとは思わないの?」
「それは、思ってます。でも・・・」
「なかなかうまく行かないんだね」
「ハイ・・・」
「それなら、いいよ。その人と思いを遂げるときが来るまで。その時まで、付き合おう」

 それからホテルの部屋に戻り、マユはそこで女になりました。それだけではなく、初めてのセックスで女の喜びを知ったのだそうです。

 マユは放心状態でベッドにいました。
「目くるめく快楽」などというものが本当にあるんだ、と初めてのセックスで教えられました。こんなにいいものを自分は今まで知らずに生きてたんだ、と。もっとずーっとこれをしていたい、ふわふわして微睡と覚醒の間を彷徨っていました。
 ところが、コトが終わるとハセガワさんはシャワーを浴びさっさと服を着始めました。もう少しまったり余韻に浸りたかったマユはちょっと寂しくなりました。
「あの・・・」
 もうちょっと一緒に居てもらえませんか? 今度はいつ会えますか? 恋人って言ってもいいんですよね? いつもこんなことしてるんですか? 他にお付き合いしてる女の人いるんですか?
 訊きたいことが次々湧いてきました。体の中に余韻が残っていて、その余韻を作り出したものが無くなってしまった喪失感と、独占欲がでてきてしまうのは当然でした。でも、口に出せませんでした。
「どうしたの?」
 ハセガワさんは服を着終わると椅子に座り、備え付けのポットのお湯を茶碗に注ぎティーパックをゆらゆら揺らしていました。
「・・・あの、ハセガワタカシさんていうんです、片思いの人。
 偶然、ハセガワさんと同じ苗字ですけど。大学にシステムの売り込みに来てた、コンピュータ関係の会社に勤めてる人です」
 ハセガワさんはそれを聴いても柔和な表情を変えず、しばらくティーパックを揺らし続け、一口飲んで「あち」と言いました。コップの水を少し足し、一気にお茶を飲み干しました。彼の表情からは彼の気持ちを読み取ることは出来ませんでした。
 それからハセガワさんは名刺を取り出し裏に何かを走り書きしました。
「ここに俺のケータイの番号書いておいたから。じゃ、また会おう」
 そう言ってあっさり部屋を出て行ってしまったのです。
 何か気に障ることを言ったかなとは思いましたが、それなら携帯の番号などくれるはずはないと思い直しました。
 不思議なひとだな、ハセガワさんて・・・。
 たった一日で、マユはそれまで知らなかった大人の男がくれた快楽の虜になっていました。
 バレーは失いましたが、そのかわりにステキなものを手に入れることができたのです。しかも、お義母さん公認で!
 それまでは一人で慰めるときの妄想はハセガワタカシさんだったのですが、その日を境にしてそれはハセガワコウゾウさんに変わりました。





 マユはそれからいろんなコトを教えてもらったそうです。もちろん、セックスの、です。
 どんどんエッチに改造されて行ったわけです。しまいにはハセガワさんと待ち合わせしてるだけで感じてきて濡れてくるようになっていました。
 そして、ある時。
 いつもハセガワさんは待ち合わせ場所に車で迎えに来るのでしたが、助手席に乗れなくなっていました。待っている間これからのハセガワさんとのベッドのことを想像し過ぎ、感じすぎてしまい、溢れて、垂れて来そうだったからです。
 マユが下着のことを言うと、オヤジは、
「仕方ないな」と公衆トイレで下着を脱いで来るように言いました。それは出来ません、とマユが断ると、
「じゃあ、ここで脱ぐかい?」
 そんな非情なことを言ったのだそうです。


「・・・マジ?」
 このエピソードは強烈に効きました。
 マユが公共の場で、衆人環視の中で、スカートの中を大洪水にするほど濡らし、ショーツから溢れた愛液が白い太腿を流れ落ちるのを想像して爆発しそうになりましが、必死で耐えました。
 俺のそんな状況がわかったのか、マユはワザとあそこをギューッと締め付けてきました。
「うん。マジ。
 ねえ、まだ続けるのォ? もうコレに集中しようよ」
 体位は再び対面座位に変わり、そこからマユが俺を押し倒して上になりました。
 ニ三回イッてしまうと、マユは俺をじっくりと愉しみたいみたいで、いろんな角度を試して、目を閉じてその感触を味わうのが好きみたいでした。脚を立てて身体を反り気味にしたり、膝をついてゆっくりと腰を回したり、俺の胸に両手をついて上下に動いたり。その度に両腕に挟まれたマユのおっぱいがプルプル震えて汗が飛び散りました。
 そうやって腰を使い身体をくねらせて快感を愉しむマユを見上げていると、たまらなくエロイ感じがしました。
 しかし。
 ここまで開発というか、調教されたんだ。
 そう考えると、やはりムラムラと嫉妬のエナジーが湧いてきます。
 そして、なんでオヤジと別れることになったのかも。どうしても知りたくなりました。
「続ける。てか、なんでオヤジと別れることになったのか、まだ訊いてない」
 俺はマユの腰を掴んでゆっくりと強引に前後に揺さぶります。
「え? ああん、それ、ダメ、あ、イッちゃう、イッちゃうってば、ヤダ、ああっ!」
 さらに、起き上がってピクピク痙攣しているマユを押し倒し、両の脚首を掴んで大きく広げ、マユを見下ろしました。汗の浮いた白い肌が赤く上気し、豊満な乳房が大きく波打っています。
「ええん? なんでェ?」
 何度も絶頂した証拠であるアヘ顔を晒して、マユが訴えます。
「何が」
「だあって、たー君の、・・・ああっ! どんどんガチガチにカタくなって大きくなるぅ・・・! どおしてェん、・・・んああんっ、それ、ダメェんっ・・・!」
「・・・え?」
「お義父さんの話するとそうなるの。どうしてなのォ?・・・」
 ミヤモト課長が言う通り、俺はパートナーの過去のセックスに昂奮するヘンタイなのかもしれない、と思いました。ちょっと、気持ちがクラくなりました。
 自分の指をイヤらしく舐めながら、艶めかしい眼をして俺を見上げ、マユは続けました。
「そのまま座るとスカートだけじゃなくて、シートまで汚しちゃいそうだったから」
 コイツ。俺を昂奮させようとワザと話を盛ってエロっぽく言っているな。
 わかっていましたがもう、限界でした。
「うわあっ!・・・」
 俺は暴発しました。頭が真っ白になって気を失いそうになるほどでした。それほど深い絶頂感は初めてでした。思わずマユの上に倒れ込みました。マユは俺を力いっぱい抱きしめ両脚を俺のケツの上に巻き付けてさらにあそこをグイグイ押し付け、締め上げ、何度も間歇する俺を最後の一滴まで搾り取ろうとしました。
「ゴメン・・・。出ちまった・・・」
「いいよ」とマユは濃いキスをしてくれました。
「夫婦なんだから。いっぱい出して、セーシ」
 そして俺の耳元にさらに話の続きを吹き込んできました。


 恥ずかしさで顔を真っ赤にしながら、嫌々ハセガワさんの言うとおりにトイレに行き、ショーツを脱いで車に戻ると、オヤジはさらに追い打ちをかけるように、
「乗るときはスカートを捲ってね。バスタオル敷いておいたから」
 生理では無かったので替えのショーツもなく、スカートの下は何も履いていませんでした。それを知ったうえで、ワザとそんな残酷なことを言うオヤジを恨めしく感じながらも、マユは従いました。
 決心して車のドアを開け、勢いよくスカートを捲って裸の尻をスポーツタオルの上に直に載せました。
「すごいね、マユは。恥ずかしい子だね。あんな人前で濡らして、さらにノーパンで。周りの車の人に気付かれなきゃいいけど」
 車を走らせながら平気な顔で言葉で苛めてくるハセガワさんに怒りを覚えつつ、体中が熱くなり、股間が疼いてジワジワと溢れてくるのを止めることができませんでした。
 たまらなくなったマユはそのことをオヤジに言いました。すると、
「俺は運転中なんだよ。スカートを捲って自分でしなさい」
 走行中の車内でのオナニーを強要したのです。オープンの、車高の低いスポーツカーです。大型バスやトラックの運転席からなら丸見えになります。
 恥ずかしさで泣きそうになりながら拒否すると、俺の言うことが聞けないなら降りろ、と脅されました。
 仕方なく、マユはスカートの中に手を入れました。恥ずかしさに涙が溢れ、頬を伝うのですが、身体の方が昂奮で震えが来ていました。
 ところが。
 それからハセガワさんは急に車を道端に停め、助手席側に回りドアを開けました。
 何? どうするの?
 何が始まるのかとドキドキしているマユを見つめていたかと思うと、ハセガワさんはいきなりその場に土下座しました。
「悪かった。許してくれ。こういうことは、もう絶対しない」
 舗道を行く人や走り過ぎる車からは、何か道路に物でも落として探しているのかと見えたことでしょう。マユは混乱して恥ずかしいやら、どうしたらいいのか、途方に暮れてしまいました。

「そのハセガワタカシってね、実は俺の息子なんだ。いままで黙っててごめんね」
 出会って半年後くらい経ったころ。ハセガワさんは突然告白しました。
 マユは四年生になっていました。彼女が大学の企業内インターンシップ制度を利用してその会社に行くようになり、今日やっとたー君に会えたの、と嬉しそうに話したのを受けてのものでした。
「どうせならハセガワタカシさんのいる会社に行きたい」
 願いを口にしたマユにその会社、つまり俺の会社を紹介してくれたのはハセガワさん、つまり俺のオヤジ本人でした。
 マユは四年生の一年間で取得する単位の少なくない分をインターンシップで稼ぎました。
俺の会社はそういう学生にちゃんと給料を払っていましたから、マユにとっては一石二鳥だったようです。
 それにつれて、オヤジとマユの関係も少しづつ変わっていきました。彼女から連絡を取るのが少なくなり、オヤジから連絡があっても「明日は会社だから。ごめんなさい」とデートを断ることが増えてゆきました。
 そして、付き合い始めてから一年が経とうとしていた夏の終わり、マユが内定をもらったと連絡したのを機に、ハセガワさんは、つまり、俺のオヤジは、
「じゃあそろそろ俺たち、終わりにしようか」と言ったそうです。
「マユは俺がつれなくしてるって思ってたとおもう。だけど、お母さんとも最初に約束したからね。マユに本当に好きな人ができたら別れるって。
 俺はお前が好きだった。だから、息子のことを黙ってた。でもこれ以上マユと一緒にいると本当に離れられなくなる。俺は息子もかわいい。
 あることがあって、俺は息子に酷いことをしてしまった。その俺が息子のことを想ってる女の子を獲っちゃったら、地獄に行かなきゃならなくなる。だから、なんだよ」
 そう、オヤジは言ったそうです。
 多くの女と浮名を流したオヤジも、マユに対しては本気だったことが窺え、意外に思いました。
「それで、お義父さんとのことは終わったの」


 マユと憎っくきオヤジとの経緯を知ると共に、マユの反応も次第に変わってゆきました。
 身体を合わせる毎に昂ぶりが激しくなっていきました。次第に獣のように俺を貪るようになってゆきました。それがまた、俺を興奮させ、昂ぶらせました。
 そして、そんな日々の中でますます魅力的になってゆくマユを憎くも愛おしくもなる。絶対に手放すまいという思いが募ってゆくのでした。
 何故そう思えるようになったか。実を言うと、俺にもよくわかりません。
 あの光景が頭から離れなくなってしまったにもかかわらず、吐き気どころか昂ぶりを覚えてしまう。恐らくはそこに理由があるのでしょう。嫉妬の気持ちが吐き気を掻き消してくれたのかもしれません。家に帰りつくや着ているものを脱ぐのももどかしく、マユを押し倒したくなってしまっていたのはそうとしか考えられないのです。
「お前は自分の大切にしているものを取り上げられるのを一番嫌ったな」
 女房とプラモデルを一緒にされてバカにするなと頭に来た俺でしたが、現実にマユを寝取られて昂奮し、マユとのセックスが再開され、しかもより深く快楽を得られたことが仕事の成功につながり、それまでとは正反対に全てがいい方に回転してゆくのを目の当たりにし、憎っくきオヤジの言葉ではありましたが、頷かざるを得なくなっていました。

「俺、初めてだったろ? マユに告られて、してさ。オヤジほどセックスが上手じゃなかったろ? 何で、俺と?」
 ある晩、セックスの最中にどうしても訊きたくなって、そう切り出しました。話したがらないのを無理に訊くのも気まずいと我慢していたわけなのですが。
 いつものように俺に跨り、俺を見下ろして激しく腰を使っていたマユは、大きな目を見開いて呆れたように言いました。
「そんなこと考えてたの? バカね」
 そう言って笑い、深く腰を落として俺に重なりました。
「これ、いい・・・。あ、そこ、感じる・・・。
 あのさ、あたしお義父さんとたー君しか知らない。女の子の中にはそういうのドンドン嵌っちゃうコもいるかもしれないよ。そりゃある程度大きいに越したことないし、上手いにこしたことないとも思う。でもね、・・・ね、動いていい?」
「うん」
 俺に重なったまま、マユは再び腰を使い始めました。マユの中に呑み込まれる度に俺のがギューッと締め上げられ言葉では言い表せないほどの快感をくれました。
「でもね、それ、際限なくなるよ、きっと。・・・そういうコって、突き詰めてくと、大根入れても、バット入れても、満足でき、なくなるよ。しまいにはさ。一日中、一年中、セックス、してないと、生きていけなくなるよ。そうなったらもう・・・。
 女って、そういうとこあるのかも、しれないけど、でもそれじゃ、人間じゃない、と思う。二十四時間、三六五日、セックスしまくってて、どうやって、生きてくの? ご飯食べなきゃ、死んじゃうじゃん・・・」
 俺のイチモツを咥えこんで、こんなエロい事してる最中にそんな哲学的なことを言い出すマユに少々面喰いました。改めてマユはサツキとは対極にいる女なんだなあと感じました。
「ねえ、そう思わない?」
「・・・うん。そう言われてみれば」
「人が、セックスだけで結婚、するなら、それはいつか、破綻するでしょ。誰だって、年を取るし。年取ったら、できなくなる、・・・でしょ、そんなハゲしいの。その後、何が残るの? あたしは、違うもん」
「どう違うのさ」
 マユは即答しました。
「匂いだよ」
「匂い?」
「あたし、たー君の匂いが、好きなの」
 言いながらうふふと笑い俺の脇の下に鼻を突っ込んで、深呼吸しました。
「初めて会った時、ああ、この人の匂い、いいなあって思ったの」
 指を絡ませて俺の両腕を押さえつけ、見下ろし、目を細めて、
「ああ、イキそう・・・。あ、あ・・・。んんんっ・・・」
 マユは眉間に皺を寄せて痙攣し、果てました。その余韻から帰って来ると、俺に口づけをしながら言いました。
「たー君の匂いと、一生懸命な顔見てるだけで、今みたいに体の奥がキューンて、来るの。そうするとね、エッチしてなくても感じちゃうの。自然に降りてくるんだよ、奥が。大好きだから、たー君が。だからね」
 自分の言葉に感じてしまったみたいで再び眉を寄せ快感を求めました。
「気にしなくていいんだよ、そんなに。大きさとか、テクニックとか。そういうの気にするのって多分あんまり女のこととか恋愛知らない人なんじゃない」
「悪かったな、女知らなくて」
 自分と俺を心ゆくまで満足させ終わると、マユは俺の体から降りて肌を合わせ、俺の胸に唇をつけました。
「たー君がそのほうがコーフンするからお話ししたけど、お義父さんとどうだったなんて、ホントはあんま話したくなかったんだ。だって比べられないもの。お義父さんのことは今でも好き。でもたー君の方がもっと好きなの」
 マユの、吸い付くように柔らかな肌の感触を確かめました。
「ねえ、たー君」
「ん?」
「あたし、生きてて良かった・・・」
 心の底から吐き出すように、マユは呟きました。
「え?」
「覚悟してたから。たー君に殺されてもいいって」
 驚いて、思わずマユを見つめました。顔を上げて俺を見返してくるマユの瞳の奥が一閃しました。
「お義父さん、あいつが本当に怒ったら、俺もお前もあいつに殺されるかもしれんぞ、って。
 命懸けのことだぞって。それでもいいのかって。
 だから、気を失った時、ああ、これがそうなのかなって。気が遠くなるぐらい、このまま死ぬのもいいかなって思えるくらい気持ちよかったけど、でも、死んじゃったらもうたー君に会えなくなる。だから、生きてて良かったって・・・」
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