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九話
しおりを挟むうーーーん、どうするかなぁ…タリス村に全力飛行するか??先に着いておけば、別にすれ違わなくともおかしくないし、なにより先に村に溶け込んでしまえば怪しまれもしないだろう。
さらに言えば村で他の住民の視線が合った方がトラブルは起きにくいだろう。ほら、人の目があればいきなり切りかかられたりする可能性は低いと思うんだよ。
迷っている間に、馬車で移動してきた5人は合流したようだった。
御者台近くに集まって何やら話し込んでるのか動かない。おっと??
黄色のマークが。増えましたね。その数5つ。
探索していた二人が何を言ったかは知らないが、馬車に残っていた残りの3人ももれなく警戒色を示している。ちくしょう、あの二人何を言ったんだ。余計ことしてくれやがって。
まあ、痕跡を探している最中に、その痕跡が意図的に思える突風で綺麗になくなれば警戒もするか…しくじった…よな…
うーーーん、よし。タリス村に全力飛行しよう。幸いまだ、こちらには気付いていないようだし。先手必勝。今夜のお宿が野宿とか絶対に嫌だ。
現代日本人のサバイバル力舐めんなよ?すぐ死ぬぞ?
ティン『サバイバル力を得ました。知力に統合します。』
…すぐには死なないかもしれないね。
いやでも、野宿は嫌だけどね!!!!
新しい力に頼もしさと少しの切なさを感じながら、そっと行動を開始する。
目的地はこの森で目指せるタリス村ぎりぎりの所。地図を見て決めたそこに新しくピンを置き直線距離で移動できるようにしておく。
よし、行こう。世話になった木の枝に別れを(心の中で)告げつつバランスを取りながら枝の上で立ち上がりチラリを馬車の動向を探る。
いや待て。…移動し始めている。タリス村の近辺の森で目的地を決めている間に馬車の方も動きがあったようだ。タリス村の近くの地図に集中しすぎた?いや、そんなに時間はかけていない。だが、現在5人のメンバーは全員馬車に乗り込み、街道を最初に見たスピードよりも速く移動している。いや、かなり早めの移動だ。このままだとあっという間に追いつかれてしまう。
くそぅ、やはりここで大人しく馬車をやり過ごそう。先ほど別れを告げた木の枝に座りなおす。ただいま。
悶々としながら息を潜めて馬車の動向を見つめる。
馬車はそのまま街道を勢いよく進んでこちらに向かってくる。
そろそろ、目視できる塩梅か??視力。ついでに聴力。
ティン『視力を得ました。体力に統合します。』
ティン『聴力を得ました。体力に統合します。』
よし。これで見えるかな?
自分の眼球を思い浮かべながら、少しずつ魔力を目に込めてゆく。
あっという間に、目の前がいくつものポップアップで埋めつくされ、。ええ?なんぞな、コレ??
ポップアップはどうやら目の前に揺れている木の詳細を教えてくれているようだった。 すごいな、めっちゃ説明文の嵐。
『デクの葉 デクの木の葉っぱ』『デクの葉 デクの木の葉っぱ』『デクの木の枝 デクの木の枝』『デクの葉 デクの木の葉っぱ』
しかも、情報の数は多いが、内容的にはスッカスカだ。とりあえず今座っている木の名前がデクというのだけは分かった。情報は嬉しいが今欲しい視力はそれじゃないんだ。えーーと。イメージが悪いのかな??
一度、目の周りの魔力を切り、再度チャレンジする。今度は、目の前に双眼鏡があるイメージだ。小さい小さい、オペラグラスのような簡易のもの。
一瞬ピントがずれるように視界がぼやけ、次の瞬間、目の前には、キラキラと光る、緑色の……葉脈が見えた。違う。いや、あってるか。
拡大できてるから遠見はできてる。多分成功だろう。そのままこちらに向かってくる馬車の方角にイメージのオペラグラスを向ける。
馬車が向かってくるのが見える。御者台にかなり大柄な人とその横に少し小さめの体格の人。ふたりともローブを身に着け、そのフードを深くかぶっているため、なかなか顔が確認できない。
時折何かを探すように周りを見渡すが、特殊な加工がされてるんじゃないかと思うくらいフードがめくれない。
うーーん、危険かどうかの判断の為にも人相くらい見たかったんだけどな…
というか、周りを見るのにフードかぶったままとか不便じゃないのかね??
いや、その前に。その前に。もしかして、何かを探すような行動ってのは、私の事だったり…する…よね…??
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