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人間界 約束の地にて 会う

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 それは想い出の曲。

 (あぁ・・・)

 音質がどんなに劣っていようとも、取れない音があろうとも、間違いなく自分が作った楽器の複製。音栓でその都度調整しながら、弾き続ける。
 
 タタタタン、タ・タン・タタン、タタタタ・タン、タ・タン・タタン・・・・・・

 一体どのくらいぶりだろうか。あなたを愛していますと気持ちをこめて作った曲。涙がこみ上げそうになる。

 (花開くは愛の調べ・・・)

 曲ができたと告げるとそう名付けてもらえた。何度となく聞いてもらった。歓喜に満ちた愛しい時間。

 (シャルスティーヤさま・・・愛しています・・・あなただけを・・・永遠に・・・)

 音色に想いをこめて。ラシュレスタが静かに天を仰ぐようにして瞳を閉じた。静謐な時間。だが―――

 グズッ・・・

 傍らから聞こえてきた音に、ハッと我を取り戻して指を止めた。視線を向ける。

 「す、すみません・・・あまりにも美しい音色で・・・」

 とめどなく頬を流れ落ちていく涙をルーカが慌てて袖で拭った。

 「なぜだか涙が・・・とまらなくって・・・」

 ターンと透明感に溢れた高音に、トーンと沈みこむような低音が絶妙に絡まって生み出されるハーモニー。初めて耳にする響き。けれども、どうしてこんなにも切ない旋律なのか。それに――

 (なぜ弾けるのだろうか・・・)

 躊躇することもなく弾き始めたリオン・ローズたる人物をルーカがじっと見つめ返した。

 (なんて美しい瞳・・・)

 初めて見た時から感じていた。あまり視線を合わせないけれども、漆黒の瞳がとてもきれいなのだ。隠されている顔の部分が見たいと思うほどに。

 「こちらの方こそ、すみませんでした。勝手に触ってしまって・・・」

 視線をパッと外した相手が謝罪してくる。ルーカもまたハッとして、どこか引きこまれそうになっていた意識を現実へと戻した。

 「あ、いえ、弾いて頂けて・・・本当に嬉しいです。まさか一人で弾ける楽器だったとは思ってもいなかったものですから・・・あ、あの・・・ローズさんは、この楽器をご存じだったのですか? とても素晴らしいことなのですが・・・まさか弾けるだなんて・・・それにあまりにも美しい曲で・・・すごいですね」

 隠しきれない興奮とともにされた質問。今度はラシュレスタが内心、動揺した。

 (しまった・・・どう答えるか・・・)

 つい気持ちが昂ぶって、躊躇う様子も見せずに易々と弾いてしまった。が、初見の人間がなぜ、この見た目からして圧倒される楽器が弾けるのか。そう疑問を持たれても当然だ。

 自分も霊夢を見たとでも言うか。いや、さすがに不自然のような気がする。

 様子を伺うように見つめてくるルーカからは、返事を期待して待っている空気が溢れに溢れている。

 なんとか怪しまれない返事がしたい。とはいえ、まったく考えつかない――ラシュレスタが視線を彷徨わせた。

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