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人間界 約束の地にて 会う
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「実はこの楽器を作った者、それは私の曾祖父なのですが、少し変わってまして・・・といいますか、霊感を持っていたのです。霊感ってわかりますか? その・・・第六感といいますか・・・人によってはよくわからないと思われる方もいらっしゃる話なのですが・・・」
宗派の異なる相手に自分の中での常識を押しつけず、遠慮がちに説明してくる姿勢。ラシュレスタが顔を隠した布の下で自然と笑みを浮かべた。
「わかります。つまり神や光の階層と繋がることができる預言者、聖職者、霊能者といった類の方だったのですね?」
ラシュレスタの反応にルーカがハッとした表情を見せた。瞳に確信を帯びた色味が加わる。
「ローズさん・・・なんだかお会いした時から、なんというか・・・不思議な気をお持ちの方だなとは思っていたのですが・・・そうです、そうなんです。シモーニ家は代々、夢に天使が出てくる家系といいますか・・・ある日、曾祖父の夢の中に光り輝く天使が現れ、楽器を作るようにというご指示とその楽器の名称と、それから・・・この地で、この教会の建設に携わるようにと・・・いろいろとお告げを下さったのです」
「光り輝く天使が現れて・・・お告げを・・・」
「はい。それはそれはものすごい明るさと神々しさで、お姿の輪郭がわからないほどだったそうです。声というよりも念に近かったみたいなのですが、曾祖父は夢の中で涙を流していて、高揚するあまりに聞き取れなかったと・・・三日間も続けて教えて下さったというのに、肝心の楽器の作り方が・・・あまりにも不完全で・・・」
だからか・・・とラシュレスタが納得した。
無理もない。おそらくは楽器の名称も誤った響きで受け止められたのだろう。もし、霊夢を通して働きかけたのがあの方ご自身だとしたならば、いくら光の次元を下げられたとしても、それは到底、人の身でついていけるレベルではない。
(あぁ・・・シャルスティーヤさま・・・)
ふわんと湧き上がりそうになる霊気。左胸をギュッと手で押さえることでなんとか堪える。
一体、どのようなご計画をこの地にお考えなのか――想像がつかないものの、自分の楽器と自分が含まれていることが嬉しくてたまらない。
ターン・・・
いてもたってもいられない気持ちで、ラシュレスタの指先が鍵盤と音栓を押した。
「椅子は? 椅子はまだ用意してないのですか?」
「えっ・・・」
「この足下に並んでいる鍵盤や両脇の音栓は、足鍵盤以上に幅のある椅子に座った状態でないと使いこなせないでしょう」
「えっ、そ、そうなんですか・・・てっきり複数人が協力し合って演奏する物なのかと・・・」
ルーカが言い終わらないうちに、ラシュレスタが立ったまま奏で始めた。
タタタタン、タ・タン・タタン、タタタタ・タン、タ・タン・タタン・・・・・・
宗派の異なる相手に自分の中での常識を押しつけず、遠慮がちに説明してくる姿勢。ラシュレスタが顔を隠した布の下で自然と笑みを浮かべた。
「わかります。つまり神や光の階層と繋がることができる預言者、聖職者、霊能者といった類の方だったのですね?」
ラシュレスタの反応にルーカがハッとした表情を見せた。瞳に確信を帯びた色味が加わる。
「ローズさん・・・なんだかお会いした時から、なんというか・・・不思議な気をお持ちの方だなとは思っていたのですが・・・そうです、そうなんです。シモーニ家は代々、夢に天使が出てくる家系といいますか・・・ある日、曾祖父の夢の中に光り輝く天使が現れ、楽器を作るようにというご指示とその楽器の名称と、それから・・・この地で、この教会の建設に携わるようにと・・・いろいろとお告げを下さったのです」
「光り輝く天使が現れて・・・お告げを・・・」
「はい。それはそれはものすごい明るさと神々しさで、お姿の輪郭がわからないほどだったそうです。声というよりも念に近かったみたいなのですが、曾祖父は夢の中で涙を流していて、高揚するあまりに聞き取れなかったと・・・三日間も続けて教えて下さったというのに、肝心の楽器の作り方が・・・あまりにも不完全で・・・」
だからか・・・とラシュレスタが納得した。
無理もない。おそらくは楽器の名称も誤った響きで受け止められたのだろう。もし、霊夢を通して働きかけたのがあの方ご自身だとしたならば、いくら光の次元を下げられたとしても、それは到底、人の身でついていけるレベルではない。
(あぁ・・・シャルスティーヤさま・・・)
ふわんと湧き上がりそうになる霊気。左胸をギュッと手で押さえることでなんとか堪える。
一体、どのようなご計画をこの地にお考えなのか――想像がつかないものの、自分の楽器と自分が含まれていることが嬉しくてたまらない。
ターン・・・
いてもたってもいられない気持ちで、ラシュレスタの指先が鍵盤と音栓を押した。
「椅子は? 椅子はまだ用意してないのですか?」
「えっ・・・」
「この足下に並んでいる鍵盤や両脇の音栓は、足鍵盤以上に幅のある椅子に座った状態でないと使いこなせないでしょう」
「えっ、そ、そうなんですか・・・てっきり複数人が協力し合って演奏する物なのかと・・・」
ルーカが言い終わらないうちに、ラシュレスタが立ったまま奏で始めた。
タタタタン、タ・タン・タタン、タタタタ・タン、タ・タン・タタン・・・・・・
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