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淫欲に堕ちた妖精王子

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 「不法侵入者・・・ですか・・・」

 「おやおやぁ~ その様子ではご存知ないと~? そなたは一体、な~にをしておるのだぁ~ この魔界の秩序と規律を維持するべき司令官たる者がぁ~」

 なにが秩序と規律だ。なにが司令官だ。頻発する魔族同士の諍いの中立やらなんやらが面倒くさくて、名ばかり管理職を押しつけただけに過ぎないくせに――――本当に忌々しい。

 「これだからのぅ~ やはり任せてられぬのぅ・・・早く帰ってきて正解正解、大正解だったのぅ・・・フフフ・・・」

 耳をほじくりながら話していた魔王が、けだるげに小指を出した。その爪先をふ~むと、もっともらしく眺める。

 「ん~ あの白い光る鳥・・・・・・何回だったかのぅ・・・まぁ~ 懲りもせずに越境してのぅ・・・パッタパッタ、パッタパッタと飛んで来るもんだから・・・ん~?」

 立ったまま視線を向けている相手へと指先を見せつけるように向けると、

 「我が食っておいたわ・・・」

 フッと息を吹き付けた。今度はその爪で前歯の隙間をシーシーと掻き始める。

 「味は・・・ん~ そうだのぅ・・・特に美味くもなく~? 不味くもなく~? それにしてもなんだったのやら~ 開くお手紙でもなかったしのぅ・・・・・・なんだったのだ、アレは? ん?」

 魔王が帰ってきてから既に十七日ほどが経った今日。三日に一度は現れて、下腹部に吸い寄せられるようにして消えていた鳥。最愛の者からの使い。それが途切れた理由がここで確定する。

 やはり気づかれ、抜け目なく邪魔されていたか。だが、合点してもその様子を微塵たりとも見せてはならない。

 「さぁ? なんのお話なのか・・・そのような鳥が飛んでいたとは気がつきませんでしたが。いずれにせよ、食して終わったということでしたら、たいした現象ではないでしょう・・・それで、ご用件はそれだけでしょうか? 実はこの後、小用がございまして・・・ないのでしたら、本日はこれにて・・・」

 冷ややかな面持ちで応じ、バルコニーに向かって歩き出す。その背中に魔王が声をかけた。

 「たいした現象ではないときたかぁ~ フフフ・・・まぁ、よい・・・それにしても、なんだ、なんだぁ~ そんなに急いで~ ん~? リリートゥに会いにでも行くのかぁ~? そなたがそこまで執心するとはのぅ・・・意外や意外・・・あの者はそんなにもくせになる味か? それとも・・・」

 ラシュレスタが結界の幕の前で手をかざした。

 「身体の・・・奥の・・・奥が・・・疼いておるとか? フフフ・・・まぁ、我も近々、その味をのぅ・・・フフフ・・・」

 力を使う前に、自動的にバルコニーの扉がパタンと開いた。要するに、用件は終わったのだろう。言いたいだけ言って、揺さぶりをかけて。

 フゥ・・・と一息吐き出すと外に出る。結界と闇の重度が軽くなった城外で、タンッと地を蹴ると、アッシュカラーのケープを翼のようにはためかせて目的地へと飛んだ。

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