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14:囚われて※

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 「んっ・・・んん・・・」

 恋しい相手の感触を。注いでくれる熱情を。そして、夢ではなくて現実なんだと。確かめたくて、その逞しい背中を両手で掻きむしる。より深く、より存分にと挿し入れてくる情熱的な舌に、

 (好きだ・・・好きだ・・・好きだ・・・)

 と応じる。

 「はぁぁあっ・・・」

 わずかに解放された途端に、切ない吐息が漏れ、涙が頬をつたい、流れ落ちる。

 「んんっ・・・」

 とすぐさま、顔の向きを変えた相手に深く覆われた。

 「ぁんっ・・・んっ・・・ぅんっ・・・」

 求められて、求めて。愛されて、愛して。絡められて、絡めて。欲し合う。どうしようもないほどに、気持ちがよくて。幸せで。

 (ハデス・・・)

 愛おしさが身の内から湧き上がる。

 「ペルセ・・・あぁ、オレの愛しい・・・ペルセ・・・」

 かすれたような声で囁かれ、耳元で告げられた。

 「愛している」

 その一言だけで。身も心も震え上がった。

 「ンッ・・・」

 ゾロリと長い舌で舐め上げられて、身悶える。このまま愛し合いたい。深く結ばれたい。だが―――

 「ペルセ、噛むぞ・・・いいな?」

 と告げられた途端に、ハッと現実に引き戻された。

 「お前の噛んだこの身体で、お前のアルケーが入ったこの身体で。オレがもう一度、お前を噛む・・・今度こそ、互いに求め合ってだ。それで、オレたちは真のツガイになれる」

 「!!」

 瞬時にして、まずいと青ざめた。

 「ま、待って・・・待ってくれ、ハデス・・・」

 そんなことをされたら、それは―――断じて、受け入れるわけにはいかない。

 「本当に待って・・・お願い・・・だから・・・」

 「どうした?」

 突然見せた拒絶に、訝しげに見つめてくる。

 「なんだ・・・急に・・・ペルセ、何を思っている?」

 不安に揺れる瞳を覗かれて、サッと顔を背けた。

 (あぁ・・・どうしよう・・・)

 口にできたら、どんなに楽だろうか。だが、言えないのだ。咄嗟に、あの儚くて美しい姿が脳裏に浮かんだ。

 「誰かがまだ、お前の心の中にいる・・・誰だ・・・」

 怯える顔がグッと掴まれ、色の異なる美しい瞳に覗きこまれる。

 「あっ・・・ダメだ・・・」

 見透かされまいと。気を高めて防御をしようとした時には―――遅かった。

 「ペルセ・・・まさか、お前は・・・」

 噛んだことによって、より近く、より深く感応し合うようになった相手に。見抜かれた。

 「デメテル・・・なのか・・・デメテルを・・・愛しているのか・・・」

 「!!」

 その名前に、ビクッと。身体を震わせた。

 「そうなんだな?」

 「そ、それは・・・」

 じっと探るように見つめてくる瞳から、視線をそらす。

 「そうか・・・デメテルだったのか・・・」

 ドクドクドクッと脈が急激に乱れて。ゴクリと嚥下した。

 (ど、どうしよう・・・)

 鋭いハデスにこれ以上、悟られてはならないのだ。どうにか、誤魔化さなくてはと思ったその時―――

 「お前はデメテルが・・・抱きたかったのか」

 その思いも寄らない言葉に、目を見開いた。

 「ち、違うっ!!」

 母親に対して、そういった感情は持っていない。必死になって否定した。

 「そうじゃない・・・母さんは・・・母さんだから・・・そ、そうじゃない・・・」

 「では、なぜだ? それなら、なぜ、オレを拒む?」

 「それは・・・」

 「なぜ、今、デメテルを思い浮かべた?」
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