160 / 169
14:囚われて※
10
しおりを挟む
「お前の母親を、哀れなデメテルを性愛の対象として見たことはない」
きっぱりと否定した相手が。大きな両手で、涙で濡れる頬を包んでくる。
「もし、オレがデメテルを愛しているのなら、レウケーの前に妻にしている・・・違うか?」
(あっ・・・)
そう聞かされて。確かにそうだと感じ入る。兄として妹として、精霊のレウケーよりも早く、そして長く共に過ごしていたのだ。
「そんな事もわからなかったのか・・・あぁ、そうじゃないな。お前のせいではない。あの不出来な弟たちが、お前に吹きこんだんだ。
純粋なお前の心を・・・母親を性具扱いし、嬲ることで、怯えさせ、苦しめた。注意したにもかかわらず、幾度となく、オレの置いた監視の目をくぐり抜けていたらしいからな」
(それなら・・・本当に・・・?)
忌々しげに語るその顔をじっと見つめる。
(オレのことを・・・本当に・・・?)
問いかける視線の先で、ハデスが口にした。
「ペルセ、オレが愛しているのは・・・・・・お前なんだ」
その愛の言葉に、涙が溢れ出た。
(あぁ・・・)
こんなことがあるだろうか。信じられないと。
「ふっ・・・ぅっ・・・」
嗚咽が止まらない。
「ペルセ・・・」
ハラハラと流れ落ちる涙を。ずっと切望していた存在が、その唇で優しく拭ってくれている。
「お前はオレを・・・いたいけなお前を・・・無理矢理に噛んだことを恨んでいたんじゃないのか?」
その問いかけに。違うと。声が出せずに、心で返す。そうだ、違うのだ。
(あぁ・・・)
本当はきちんと理解していたのだ。
首の貞操帯を外すということがどういう意味かを。外した後に、何が起るのかも理解していたのだ。その上で、自分から外した。
(ハデスが・・・欲しかったから・・・)
初めて会った時から、ずっと惹かれていた。好きだった。憧れていた。この美しく強い存在の、ツガイになりたいと。恋い焦がれていた。
だから、噛まれた時、とても嬉しかったのだ。
「ペルセ・・・もしかして・・・オレは・・・お前の心を得ていると・・・思っていいのか?」
大好きな相手が。自分の付けた噛み痕を指先で確認しながら、どこか頼りなく尋ねてくる。
「アトラスを通して、やっと、オレを愛したか・・・?」
それも違うと。もっと前からだと心の中で答える。
(ハデス・・・)
あの偉大なる冥府の王が片目を取り去ってまでも。その自身の力を削いでまでも。全身全霊を捧げたのだ。自分の心を求めるあまりに。あぁ・・・と胸が熱くなった。
「ペルセ、わずかだったが、お前が噛んで注いだ気が・・・今、オレの中で・・・」
告げるなり、そのきれいな双眸がキラキラと輝きを放った。共鳴していると確信したのだ。
「あぁ、ペルセ・・・・・・オレを求めているな? オレを愛しているな?」
「あっ・・・」
その瞬間、首筋がボワッと熱くなって。ゾクゾクッと疼きが走り抜けた。それは、互いに噛み合って、気を交換したツガイだけに起こり得る現象で。両方が求め合っている証で。
「ハデス・・・」
囁くように呼んで動いた唇が。好きだ・・・とかたどる前に、奪われた。
きっぱりと否定した相手が。大きな両手で、涙で濡れる頬を包んでくる。
「もし、オレがデメテルを愛しているのなら、レウケーの前に妻にしている・・・違うか?」
(あっ・・・)
そう聞かされて。確かにそうだと感じ入る。兄として妹として、精霊のレウケーよりも早く、そして長く共に過ごしていたのだ。
「そんな事もわからなかったのか・・・あぁ、そうじゃないな。お前のせいではない。あの不出来な弟たちが、お前に吹きこんだんだ。
純粋なお前の心を・・・母親を性具扱いし、嬲ることで、怯えさせ、苦しめた。注意したにもかかわらず、幾度となく、オレの置いた監視の目をくぐり抜けていたらしいからな」
(それなら・・・本当に・・・?)
忌々しげに語るその顔をじっと見つめる。
(オレのことを・・・本当に・・・?)
問いかける視線の先で、ハデスが口にした。
「ペルセ、オレが愛しているのは・・・・・・お前なんだ」
その愛の言葉に、涙が溢れ出た。
(あぁ・・・)
こんなことがあるだろうか。信じられないと。
「ふっ・・・ぅっ・・・」
嗚咽が止まらない。
「ペルセ・・・」
ハラハラと流れ落ちる涙を。ずっと切望していた存在が、その唇で優しく拭ってくれている。
「お前はオレを・・・いたいけなお前を・・・無理矢理に噛んだことを恨んでいたんじゃないのか?」
その問いかけに。違うと。声が出せずに、心で返す。そうだ、違うのだ。
(あぁ・・・)
本当はきちんと理解していたのだ。
首の貞操帯を外すということがどういう意味かを。外した後に、何が起るのかも理解していたのだ。その上で、自分から外した。
(ハデスが・・・欲しかったから・・・)
初めて会った時から、ずっと惹かれていた。好きだった。憧れていた。この美しく強い存在の、ツガイになりたいと。恋い焦がれていた。
だから、噛まれた時、とても嬉しかったのだ。
「ペルセ・・・もしかして・・・オレは・・・お前の心を得ていると・・・思っていいのか?」
大好きな相手が。自分の付けた噛み痕を指先で確認しながら、どこか頼りなく尋ねてくる。
「アトラスを通して、やっと、オレを愛したか・・・?」
それも違うと。もっと前からだと心の中で答える。
(ハデス・・・)
あの偉大なる冥府の王が片目を取り去ってまでも。その自身の力を削いでまでも。全身全霊を捧げたのだ。自分の心を求めるあまりに。あぁ・・・と胸が熱くなった。
「ペルセ、わずかだったが、お前が噛んで注いだ気が・・・今、オレの中で・・・」
告げるなり、そのきれいな双眸がキラキラと輝きを放った。共鳴していると確信したのだ。
「あぁ、ペルセ・・・・・・オレを求めているな? オレを愛しているな?」
「あっ・・・」
その瞬間、首筋がボワッと熱くなって。ゾクゾクッと疼きが走り抜けた。それは、互いに噛み合って、気を交換したツガイだけに起こり得る現象で。両方が求め合っている証で。
「ハデス・・・」
囁くように呼んで動いた唇が。好きだ・・・とかたどる前に、奪われた。
0
お気に入りに追加
202
あなたにおすすめの小説
その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【7/27完結しました。読んでいただいてありがとうございました。】
【続編も8/17完結しました。】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
↑この続編は、R18の過激描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
俺の彼氏
ゆきの(リンドウ)
BL
26歳、役所勤めの榊 哲太は、ある悩みに頭を抱えていた。それは、恋人である南沢 雪の存在そのものについてだった。
同じ男のはずなのに、どうして可愛いと思うのか。独り占めしたいのか、嫉妬してしまうのか。
挙げれば挙げるほど、悩みは尽きない。
リスク回避という名の先回りをする哲太だが、それを上回る雪に振り回されてー。
一方の雪も、無自覚にカッコよさを垂れ流す哲太が心配で心配で仕方がない。
「それでもやっぱり、俺はお前が愛しいみたいだ」
甘酸っぱくてもどかしい高校時代と大人リアルなエピソードを交互にお届けします!
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
明日の朝を待っている
紺色橙
BL
■推しにガチ恋した話
■夜の公園で一人踊るその姿に惹かれた。見ているのなら金を払えと言われ、素直に支払う。何度も公園を訪れリョウという名前を教えてもらい、バックダンサーとして出演するコンサートへも追いかけて行った。
ただのファンとして多くの人にリョウさんのことを知ってほしいと願うが、同時に、心の中に引っかかりを覚える。
僕を拾ってくれたのはイケメン社長さんでした
なの
BL
社長になって1年、父の葬儀でその少年に出会った。
「あんたのせいよ。あんたさえいなかったら、あの人は死なずに済んだのに…」
高校にも通わせてもらえず、実母の恋人にいいように身体を弄ばれていたことを知った。
そんな理不尽なことがあっていいのか、人は誰でも幸せになる権利があるのに…
その少年は昔、誰よりも可愛がってた犬に似ていた。
ついその犬を思い出してしまい、その少年を幸せにしたいと思うようになった。
かわいそうな人生を送ってきた少年とイケメン社長が出会い、恋に落ちるまで…
ハッピーエンドです。
R18の場面には※をつけます。
公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-
猫まんじゅう
恋愛
そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。
無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。
筈だったのです······が?
◆◇◆
「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」
拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?
「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」
溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない?
◆◇◆
安心保障のR15設定。
描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。
ゆるゆる設定のコメディ要素あり。
つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。
※妊娠に関する内容を含みます。
【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】
こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる