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14:囚われて※

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 「こぞって予約を取ると言っていたが・・・なるほど、一理あるな」

 目の前に来るや否や。ガッと岩戸に手を置いて、満足げに口角を上げる。

 「なんて美しいんだ、お前は・・・・・・ここで愛し合いたいくらいだ」

 突如として情欲の焔を灯らした青紫色の瞳に、ドクンッと胸が高鳴った。

 「な、なにを言ってるんだ・・・」

 「宝飾品も入っていたはずだ。どうして、身に着けていない? ん?」

 その甘さを含んだ声音に。上から下まで全身を。舐めるように見てくる、求愛する側の迫り上がるような熱情に。

 「そ、それは・・・」

 ドクドクドクッと脈が乱れ、カッ、カッと頬が熱くなる。耐えきれずに後退ろうとすると、腕を取られた。

 「あっ・・・」

 「よく似合っている・・・・・・あぁ、そうか」

 バッと。アトラスが外套を脱ぐと、バサッと肩にかけてくる。頭にフードをかけられた。

 「着けたところで、すぐに外すはめになるか・・・そのままでいいか」

 (!!)

 疑いようもなく、性的な意味合いを持つ言葉を口にされて。見ている者もいるというのに、何を言っているのかと。

 咎めようとした途端に、しゃがみこまれ、ひょいと。軽々と抱え上げられた。

 「ア、アトラスッ!!」
 
 「部屋に戻ろう」

 「ちょっ・・・ち、違うだろ、そうじゃないだろ!!」

 「ケール、ルーベ、来い」

 元来た道を。即座に戻ろうとする相手の腕の中で、ジタバタと足掻いた。

 「ち、違う、違う!! まずは鏡の間に行かなくては!! 王妃の棺が先だろ!!」

 その足取りがピタリと止まった。

 「なによりも先に王妃を救出しなくては・・・そのために、オレはまずは着替えたいんだ。獣車クーペに置いてある着替えを取りに行きたい。わかるか?」

 「・・・そうだな。確かに、その方が相応しいな」

 (相応しい・・・?)

 こちらの意図は伝わっているのか、どうなのか。違和感を覚える返事とともに、アトラスが身体の向きを変えた。

 「スフィンクス、鏡の間に案内してくれ」

 「かしこまりました。お部屋に戻る必要はございません。この場所からの近道でご案内いたします」

 「えっ・・・」

 すくっと身を起こした半人半獣が先導し始める。

 「ちょっ・・・ちょっと待って、先に着替えたいんだけど」

 「その格好で問題はない」

 「いや、オレはこの服装は・・・こ、困る」

 「心配するな。大丈夫だ」

 「えっ・・・」

 どうして、それほどまでに自信を持って断言できるのか。確かに、外套を身に着けたままであれば、問題はないかもしれないが。

 (でも・・・)

 裸足のままなのだ。王妃に対して、礼儀を欠いていないだろうか。だが、スフィンクスもアトラスも。その歩みに迷いはない。

 そして、部屋とは逆の方向へと。洞窟の通路を歩み続ける動きをもはや止めようもなくて。

 (もう、このままで・・・いいか・・・)

 と気を取り直す。こうなったら、外套は脱がずに跪いていればいい。

 それよりも、いよいよ王妃と会うのだ。ゴクリと嚥下しながら、前方の階段を上り始めたスフィンクスを見つめる。

 (あっ・・・)

 そうだと。その臀部をじっと見つめた。

 (デルタ・・・なのか?)

 この館にはデルタしかいないと言っていた従者たちの言葉は。本当なのだろうか。だが、シャラシャラと。艶めかしく動く華美な装飾品を腰にまとっていて、よくわからない。けれども――
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