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13:スフィンクスの館と再生の泉と

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 その直接的な指摘と力が全く入らず、ガサガサにかすれていた声に、頬がカッと熱くなる。

 何をされたせいなのか。そして、その行為でどれほど乱れたのかが、あまりにも露骨に感じ取れて。どうにも気持ちが持っていきようがない。

 「オレのせいだな・・・悪かった」

 と声を枯らした張本人が。この上なく満ち足りた声音で、悪びれない形だけの謝罪を口にし、こめかみに口づけてくる。

 「テセウス・・・あぁ、テセウス・・・」

 「あっ・・・んっ・・・」

 身体に回された力強い腕と、チュッ、チュッと降りてくる熱い唇は。再び、情交を始めてしまいそうなほどに狂おしくて。

 「アト・・・ラス・・・ダメだ・・・いや・・・だ・・・やだ・・・」

 しゃがれた声で抗う。このまま、また情欲の嵐に囚われたくない。

 「はな・・・せ・・・頼む・・・から・・・いやだ・・・」

 本当は気持ちがいい。気持ちがよくてたまらない。もっと愛されたい。求められたい。好きだから。

 けれども、そんなことはダメだと理性が働く。精液が注がれた肉体を早く、浄化しないといけないのだ。

 「身体を・・・洗い・・・たい・・・から・・・頼む・・・」

 離してくれ。必死なまでにそう思わずにいられないのは、なぜなのか。相手がピタリと動きを止めた。じっと見つめてくる。

 「まだ、いやなのか?」

 心の中の拒絶を見透かされたようで。ギクリと身を強張らせた。

 「お前はオレを噛んで、自分のモノにした。オレはお前のツガイになった」

 噛んでという言葉を聞かされて。自然と首へと視線が向く。

 (あぁ・・・)

 銀を素地にした青紫色に輝く貞操帯ティーチェスタトルベの。その下に隠された肌には。自分の噛み痕があるはずなのだ。昨晩、行為の最中に噛んだのだから。

 (どうして・・・)

 ツガイになるために首を噛むことが、知識として記憶の中にあっても。まさか、自分が噛むことになるなんて。歯があんな風に伸びるなんて、想像もしていなかった。

 つまり、この戸惑いが意味することは―――

 「お前にとって初めての行為だ。困惑するのも無理がない。だが、これでオレはまさしくお前の夫となった。夫となったオレの精液が・・・お前の男の子種が・・・」

 そろりと布の上から腹部を撫でられた。

 「っ!!」

 「たっぷりとここに・・・ある・・・悦んでくれないのか?」

 「ア、アトラス・・・」

 「オレたちが愛し合った証だ。違うか?」

 「あっ、だめだ・・・」

 毛布を取って、その事実をさらけ出そうとする手に、性交の名残を確かめようとする相手に。必死に逆らう。

 「ア、アトラス・・・オレは・・・まだ・・・こういうのは・・・」

 噛ませた相手からすれば、愛の証だという想いが強かったとしても。ツガイになったのだから、身籠もったとしても問題ないだろうと思われていても。困るのだ。

 「オレは・・・まだ・・・オレは・・・まだ・・・だって・・・だって、そうだろ? オレはまだ、なにも自分のことすら、わかってないのに・・・」

 口にした途端、自身でもスゥッと腑に落ちた。そうだ、だからなのだ。不確かな身の状態で、子供を宿す覚悟なんて持てるはずがない。いくら、愛し合っていたとしても。だから、浄化を望むのだ。

 「そうだな・・・・・・ケリを付けないとな」

 アトラスが静かに告げ、毛布を強引に引っ張った。
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