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12:ペガサスの懇願とツガイとしての求愛と※

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 「!!」

 露わになった首筋に、大きく息をのんだ。美しく雄々しいその頸部には傷一つない。噛み痕も囚人に強いられるはずの、罪人の焼き印も――何一つない。

 「わかるか、テセウス」

 (な、なぜ・・・?)

 「オレは・・・・・・誰のモノでもない」

 「ッ!!」

 どこかおかしいのではないかと戸惑う身体の。脚に熱い両手が置かれて、開かされ、受け入れの体勢を取らされる。ヒクヒクとヒクつく秘部に、アトラスが猛々しい男根をあてた。

 「オレが欲しいか、テセウス・・・」

 その挿入の体位のまま、クイッ、クイッ、クイッと腰を押しつけられて。ンンッと悶えた。

 「オレが欲しいよな? そうだな?」

 と尋ねられる。疑念を掘り下げる隙がない。グニッと。分厚い先を潤みきった秘部に挿れられて「アァァッ!!」と喘いだ途端、スッとすぐさま引き抜かれた。

 「どうだ? オレが・・・欲しい。そうだな?」

 「アト・・・ラス・・・いや・・・だ・・・なん・・・で・・・」

 どうして、こんな中途半端な行為をするのか。その視線での問いかけに、青紫色の瞳が微笑んだ。

 「欲しいなら、オレをお前のモノにしろ」

 何を言っているのかと。首を傾げると同時に、宣告された。

 「テセウス・・・オレを噛め」

 驚きで見開かれた瞳の先で、アトラスが続ける。

 「お前がオレを噛んで、お前のモノにしろ」

 (そ、そんな・・・)

 思いも寄らなかった内容に、声が出ない。

 噛むという行為を許すことはツガイの証ではあるけれども。噛んだ相手には隷属することを意味しているというのに。これほどまでの男が、自分を噛めと言うのか。

 「で、できない・・・そ、そんな・・・こと・・・」

 「オレをお前のモノにするんだ」

 アトラスが自分の陰茎に手を添えた。ゆるゆると扱くと、体液で濡れた指を唇の前へと差し出した。

 「舐めろ」

 「ッ!! ア、アトラス・・・あっ・・・」

 拒もうとした途端に、口に入れられた。

 「はぁあぁぁーーっ・・・・・・」

 即座に再び、強い激情と執着の気をまとった精液に侵されて。誘因されるようにして、情欲がまたしても湧き上がる。とろんと瞳が蕩けた。

 「こうして、噛めばいい」

 告げながら、アトラスが顔を近づけてくる。カッと首に歯をあてられた。

 「アァアァァーーッ!!」

 まるで長く鋭い刃物でも突き付けられたように、グッと深く沈みこむ感覚と同時に。ブワンッと絶大なアルファのアルケーを注がれて。

 (なん・・・だ・・・これ・・・)

 視界がグラグラッと大きくブレて、ググッと奥の歯が伸びたような感覚に襲われる。

 「オレも今、噛みたいぐらいだ・・・だが・・・・・・」

 自分ではないような、肉体の芯からズレるような体感で。耳元で呟いているはずの相手の声が遠くに聞こえる。その頬が大きな手で確かめるように撫でられた。

 「そうだ。それでいい・・・噛め」

 「ぁっ・・・だ、だめ・・・だ・・・そ、そんな・・・」

 「テセウス、噛むんだ」

 目の前の白い首筋に。無性にそそられる。噛みたいと。けれども、何かがと。心の奥の奥で警告めいた違和感を覚える。

 「噛んだら、すぐにでも思いっきり愛してやる。オレが欲しいよな?」

 ずちゅっとまた挿入されて。

 「アァァーーッ!!」

 と快感が走り抜ける。

 「オレを噛め」

 深々と貫かれたまま、命じられた。
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