94 / 169
9:塗り替えられていく身体と心と※
3
しおりを挟む
「クゥゥ・・・」
穏やかな魔炎をまとったケールの舌先と小さな足先が触れ、ジュッ・・・ジュッ・・・と。ミノタウロスの触れた場所を浄化していくが、それどころじゃない。
「待って・・・ケール・・・アト・・・ラス・・・が・・・」
「ぎゃぁあ"ぁあ"ぁぁーーっ!!」
「!!」
途端に聞こえてきた断末魔の叫び声に、ビクッと身体が震え上がった。
「げえ"ぇえ"ぇえ"ぇぇーーっ!!」
収まらない絶叫に混ざって。ザシュッ!! ドスゥ!! メリメリメリィィッ!! グッシャァッ!! といった不快な破壊音も届く。
(あぁ、そ、そんな・・・)
思わず、口を手で覆う。誰がやられているのかなんて、考えるまでもない。聞こえてくる苦痛に満ちた叫び声はミノタウロスのモノだ。
一発で仕留められないのか。それとも、あえて長引かせているのか。怖いという気持ちが湧き上がる。
大気が震えるほどの、ただならぬ振動とその凄まじい気とで。制裁を徹底的に加えている側に恐怖を感じるのだ。
「クゥゥ・・・」
察したのか、ケールが顔を上げる。ブワンッと炎を大きくすると、寝具を取り囲むようにして覆った。すぐさま音が聞こえなくなった。
「え・・・な、なに・・・?」
静けさがかえって不安と怯えを増すようで。魔気で遮断された空間の中、外の様子を窺わずにはいられない。
「クゥゥン・・・」
パタパタと優しく、そして遠慮がちに。下腹部を強く押さえる手に、小型の魔獣が魔炎で膨らんだ尻尾をあててくる。
「あっ・・・」
すぐさま、その意図を察した。手を退けろと言っているのだ。勃ち上がったままのその場所を浄化するために。
(ど、どうしよう・・・)
そんなところを・・・と戸惑いながらも、ミノタウロスに弄られた事実と不快さを消したい。
「ケール・・・あちらを・・・向いててくれ」
「クゥゥ・・・」
心情を理解したイーヌドーグが。尻尾を手の上にのせたまま、背中を向ける。そっと覆っていた手を外すと、スッと尻尾が撫でてきた。
「あっ・・・ふっ・・・んっ・・・」
魔炎の熱さと薬に侵された自分の熱と。苦痛と快感と葛藤と欲求とが。ごった返すようにしてに襲いかかってくる。
その体感と感情に、眉間に皺を寄せてただひたすら堪える。一番に願うこと、それは――体内に染みこんでしまった分も何もかも全部、全部を駆逐して欲しいと。そのことだけなのだから。
「ハァハァ・・・ハァハァ・・・ぅっ・・・ハァハァ・・・」
つらい。とてもつらい。けれども、早く。早く、浄化してと。アトラスが戻ってくる前にと。意を決して、尻尾を上から押さえつけた。
「アァアァァーッ!!」
シーツの上で身悶えた。その刺激は痛みだけじゃなくって。
(あぁ・・・いやだ・・・こんなのは・・・いやだ・・・)
涙がポロポロと溢れ出る。悔しくて、悲しくて。しんどくて、もどかしくて。それでも、このままではいられない。もう一度やらないと。しっかりやらないと。そう覚悟を決めたその時―――
穏やかな魔炎をまとったケールの舌先と小さな足先が触れ、ジュッ・・・ジュッ・・・と。ミノタウロスの触れた場所を浄化していくが、それどころじゃない。
「待って・・・ケール・・・アト・・・ラス・・・が・・・」
「ぎゃぁあ"ぁあ"ぁぁーーっ!!」
「!!」
途端に聞こえてきた断末魔の叫び声に、ビクッと身体が震え上がった。
「げえ"ぇえ"ぇえ"ぇぇーーっ!!」
収まらない絶叫に混ざって。ザシュッ!! ドスゥ!! メリメリメリィィッ!! グッシャァッ!! といった不快な破壊音も届く。
(あぁ、そ、そんな・・・)
思わず、口を手で覆う。誰がやられているのかなんて、考えるまでもない。聞こえてくる苦痛に満ちた叫び声はミノタウロスのモノだ。
一発で仕留められないのか。それとも、あえて長引かせているのか。怖いという気持ちが湧き上がる。
大気が震えるほどの、ただならぬ振動とその凄まじい気とで。制裁を徹底的に加えている側に恐怖を感じるのだ。
「クゥゥ・・・」
察したのか、ケールが顔を上げる。ブワンッと炎を大きくすると、寝具を取り囲むようにして覆った。すぐさま音が聞こえなくなった。
「え・・・な、なに・・・?」
静けさがかえって不安と怯えを増すようで。魔気で遮断された空間の中、外の様子を窺わずにはいられない。
「クゥゥン・・・」
パタパタと優しく、そして遠慮がちに。下腹部を強く押さえる手に、小型の魔獣が魔炎で膨らんだ尻尾をあててくる。
「あっ・・・」
すぐさま、その意図を察した。手を退けろと言っているのだ。勃ち上がったままのその場所を浄化するために。
(ど、どうしよう・・・)
そんなところを・・・と戸惑いながらも、ミノタウロスに弄られた事実と不快さを消したい。
「ケール・・・あちらを・・・向いててくれ」
「クゥゥ・・・」
心情を理解したイーヌドーグが。尻尾を手の上にのせたまま、背中を向ける。そっと覆っていた手を外すと、スッと尻尾が撫でてきた。
「あっ・・・ふっ・・・んっ・・・」
魔炎の熱さと薬に侵された自分の熱と。苦痛と快感と葛藤と欲求とが。ごった返すようにしてに襲いかかってくる。
その体感と感情に、眉間に皺を寄せてただひたすら堪える。一番に願うこと、それは――体内に染みこんでしまった分も何もかも全部、全部を駆逐して欲しいと。そのことだけなのだから。
「ハァハァ・・・ハァハァ・・・ぅっ・・・ハァハァ・・・」
つらい。とてもつらい。けれども、早く。早く、浄化してと。アトラスが戻ってくる前にと。意を決して、尻尾を上から押さえつけた。
「アァアァァーッ!!」
シーツの上で身悶えた。その刺激は痛みだけじゃなくって。
(あぁ・・・いやだ・・・こんなのは・・・いやだ・・・)
涙がポロポロと溢れ出る。悔しくて、悲しくて。しんどくて、もどかしくて。それでも、このままではいられない。もう一度やらないと。しっかりやらないと。そう覚悟を決めたその時―――
0
お気に入りに追加
200
あなたにおすすめの小説
貧乏Ωの憧れの人
ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。
エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの
恋のキューピットは歪な愛に招かれる
春於
BL
〈あらすじ〉
ベータの美坂秀斗は、アルファである両親と親友が運命の番に出会った瞬間を目の当たりにしたことで心に深い傷を負った。
それも親友の相手は自分を慕ってくれていた後輩だったこともあり、それからは二人から逃げ、自分の心の傷から目を逸らすように生きてきた。
そして三十路になった今、このまま誰とも恋をせずに死ぬのだろうと思っていたところにかつての親友と遭遇してしまう。
〈キャラクター設定〉
美坂(松雪) 秀斗
・ベータ
・30歳
・会社員(総合商社勤務)
・物静かで穏やか
・仲良くなるまで時間がかかるが、心を許すと依存気味になる
・自分に自信がなく、消極的
・アルファ×アルファの政略結婚をした両親の元に生まれた一人っ子
・両親が目の前で運命の番を見つけ、自分を捨てたことがトラウマになっている
養父と正式に養子縁組を結ぶまでは松雪姓だった
・行方をくらますために一時期留学していたのもあり、語学が堪能
二見 蒼
・アルファ
・30歳
・御曹司(二見不動産)
・明るくて面倒見が良い
・一途
・独占欲が強い
・中学3年生のときに不登校気味で1人でいる秀斗を気遣って接しているうちに好きになっていく
・元々家業を継ぐために学んでいたために優秀だったが、秀斗を迎え入れるために誰からも文句を言われぬように会社を繁栄させようと邁進してる
・日向のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(日向)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づくと同時に日向に向けていた熱はすぐさま消え去った
二見(筒井) 日向
・オメガ
・28歳
・フリーランスのSE(今は育児休業中)
・人懐っこくて甘え上手
・猪突猛進なところがある
・感情豊かで少し気分の浮き沈みが激しい
・高校一年生のときに困っている自分に声をかけてくれた秀斗に一目惚れし、絶対に秀斗と結婚すると決めていた
・秀斗を迎え入れるために早めに子どもをつくろうと蒼と相談していたため、会社には勤めずにフリーランスとして仕事をしている
・蒼のことは家族としての好意を持っており、光希のこともちゃんと愛している
・運命の番(蒼)に出会ったときは本能によって心が惹かれるのを感じたが、秀斗の姿がないのに気づいた瞬間に絶望をして一時期病んでた
※他サイトにも掲載しています
ビーボーイ創作BL大賞3に応募していた作品です
童貞処女が闇オークションで公開絶頂したあと石油王に買われて初ハメ☆
はに丸
BL
闇の人身売買オークションで、ノゾムくんは競りにかけられることになった。
ノゾムくん18才は家族と海外旅行中にテロにあい、そのまま誘拐されて離れ離れ。転売の末子供を性商品として売る奴隷商人に買われ、あげくにオークション出品される。
そんなノゾムくんを買ったのは、イケメン石油王だった。
エネマグラ+尿道プラグの強制絶頂
ところてん
挿入中出し
ていどです。
闇BL企画さん参加作品。私の闇は、ぬるい。オークションと石油王、初めて書きました。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
俺の悪役チートは獣人殿下には通じない
空飛ぶひよこ
BL
【女神の愛の呪い】
この世界の根源となる物語の悪役を割り当てられたエドワードに、女神が与えた独自スキル。
鍛錬を怠らなければ人類最強になれる剣術・魔法の才、運命を改変するにあたって優位になりそうな前世の記憶を思い出すことができる能力が、生まれながらに備わっている。(ただし前世の記憶をどこまで思い出せるかは、女神の判断による)
しかし、どれほど強くなっても、どれだけ前世の記憶を駆使しても、アストルディア・セネバを倒すことはできない。
性別・種族を問わず孕ませられるが故に、獣人が人間から忌み嫌われている世界。
獣人国セネーバとの国境に位置する辺境伯領嫡男エドワードは、八歳のある日、自分が生きる世界が近親相姦好き暗黒腐女子の前世妹が書いたBL小説の世界だと思い出す。
このままでは自分は戦争に敗れて[回避したい未来その①]性奴隷化後に闇堕ち[回避したい未来その②]、実子の主人公(受け)に性的虐待を加えて暗殺者として育てた末[回避したい未来その③]、かつての友でもある獣人王アストルディア(攻)に殺される[回避したい未来その④]虐待悪役親父と化してしまう……!
悲惨な未来を回避しようと、なぜか備わっている【女神の愛の呪い】スキルを駆使して戦争回避のために奔走した結果、受けが生まれる前に原作攻め様の番になる話。
※悪役転生 男性妊娠 獣人 幼少期からの領政チートが書きたくて始めた話
※近親相姦は原作のみで本編には回避要素としてしか出てきません(ブラコンはいる)
寝不足貴族は、翡翠の奴隷に癒される。
うさぎ
BL
市場の片隅で奴隷として売られるゾイは、やつれた貴族風の男に買われる。その日から、ゾイは貴族の使用人として広大な館で働くことに。平凡で何の特技もない自分を買った貴族を訝しむゾイだったが、彼には何か事情があるようで……。
スパダリ訳あり貴族×平凡奴隷の純愛です。作中に暴力の描写があります!該当話数には*をつけてますので、ご確認ください。
R15は保険です…。エロが書けないんだァ…。練習したいです。
書いてる間中、ん?これ面白いんか?と自分で分からなくなってしまいましたが、書き終えたので出します!書き終えることに意味がある!!!!
浮気三昧の屑彼氏を捨てて後宮に入り、はや1ヶ月が経ちました
Q.➽
BL
浮気性の恋人(ベータ)の度重なる裏切りに愛想を尽かして別れを告げ、彼の手の届かない場所で就職したオメガのユウリン。
しかしそこは、この国の皇帝の後宮だった。
後宮は高給、などと呑気に3食昼寝付き+珍しいオヤツ付きという、楽しくダラケた日々を送るユウリンだったが…。
◆ユウリン(夕凛)・男性オメガ 20歳
長めの黒髪 金茶の瞳 東洋系の美形
容姿は結構いい線いってる自覚あり
◆エリアス ・ユウリンの元彼・男性ベータ 22歳
赤っぽい金髪に緑の瞳 典型的イケメン
女好き ユウリンの熱心さとオメガへの物珍しさで付き合った。惚れた方が負けなんだから俺が何しても許されるだろ、と本気で思っている
※異世界ですがナーロッパではありません。
※この作品は『爺ちゃん陛下の23番目の側室になった俺の話』のスピンオフです。
ですが、時代はもう少し後になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる