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8:牛頭ミノタウロスの迷宮と陵辱と※
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ピョンと祭壇にのったケールの額を。静かに撫でているその横顔をじっと見つめた。
「ケール、お前はここでテセウスを守って待ってるんだ。テセウスから絶対に離れるな」
「ワフッ!!」
かしこまりましたと告げんばかりに、ケールが吠えた。
「テセウス、いいか。オレになにかが起こったかのように見えたとしても、絶対にこの祭壇から動くな。降りたりするな。ケールとここにいるんだ。わかったな?」
「えっ・・・なにかが起こったかのように見えたとしても・・・って、それって、どういう意味なんだ?」
謎めいた言葉に首を傾げる。
「意表をつく幻影を使ってくる可能性がある。パシパエは能力が非常に高い」
「そ、そんな・・・幻影だなんて、大丈夫なのか?」
「問題ない。オレからすれば、ただのバカ親だ」
「バカ・・・親・・・?」
あまりにも見下した乱暴な言い様に。戒めたくもなるが、実は正しい。
一見、手が追えない野蛮な獣人を閉じ込めているようにも見えるこの迷宮も。実際は息子が望むままに。性に未熟な子供たちを定期的に与えては、弄ばせていると聞いている。
そんな愚劣な行為を誰が許せるだろうか。アトラスは楯を取ってくるついでに倒してやってきてもいいとは言ってはいるが。
「だけど・・・ほんとに、大丈夫なのか」
先ほどの石柱と化した空間の移動速度と振動は。自分では到底、適わないレベルだったのだ。
「心配はいらない。ここで見てろ。おそらくは数回偽装に付き合わされた後に、中央にバカ息子の玩具箱が出てくるだろう」
既に見切ったような発言だが、不安が拭いきれない。思わず、その腕を掴んだ。
「アトラス・・・でも、ほんとに気をつけてな。絶対に、無理はしないでくれ」
「テセウス」
「あっ・・・」
首の後ろを大きな手に捉えられて。どこか嬉しそうに、傾いた顔が近づいてくる。思わず、ふいっと横に避けた。
あれから何度かされようとしている行為だ。抱かれている間、どれほど貪られたかなんてわからない。それなのに今さらと思われても。どうしても許すことができないでいる。
「ん・・・」
その行方を失った唇が。頬に、目尻に、こめかみにと。ついばむような口づけを落としてくる。決して、無理強いをされることはない。
「行ってくる」
「えっ・・・あっ・・・」
それは物足りなさを感じるほどの短さで。素っ気なく背中を向けられて。銀の髪と長い外套を翻し、颯爽と立ち向かっていくその姿を見送りながら。
(あぁ・・・)
と唇にそっと指を置く。本当は、して欲しかったと思う気持ちが沸いてきて。けれども。すぐさま首を振って、その欲求を打ち消した。
「クゥゥーン・・・」
「ん・・・ケール、どうした?」
小型の魔獣が甘えるように頭を擦り寄せてくる。とすぐに離れると、ボワンッと全身から魔炎を出した。シュワンッと台座の上に深紅の炎が広がる。
(えっ・・・なんだ・・・?)
ユラユラと面に辺にと覆うように立ち上がる焔は、台座を守るかのようで。戸惑うのも束の間、アトラスが歩み進んだ先で。
ガッコンンッ!!
とケールの時と同様に床が凹んだ。ヒュンッとアトラスが飛び上がった。
「ケール、お前はここでテセウスを守って待ってるんだ。テセウスから絶対に離れるな」
「ワフッ!!」
かしこまりましたと告げんばかりに、ケールが吠えた。
「テセウス、いいか。オレになにかが起こったかのように見えたとしても、絶対にこの祭壇から動くな。降りたりするな。ケールとここにいるんだ。わかったな?」
「えっ・・・なにかが起こったかのように見えたとしても・・・って、それって、どういう意味なんだ?」
謎めいた言葉に首を傾げる。
「意表をつく幻影を使ってくる可能性がある。パシパエは能力が非常に高い」
「そ、そんな・・・幻影だなんて、大丈夫なのか?」
「問題ない。オレからすれば、ただのバカ親だ」
「バカ・・・親・・・?」
あまりにも見下した乱暴な言い様に。戒めたくもなるが、実は正しい。
一見、手が追えない野蛮な獣人を閉じ込めているようにも見えるこの迷宮も。実際は息子が望むままに。性に未熟な子供たちを定期的に与えては、弄ばせていると聞いている。
そんな愚劣な行為を誰が許せるだろうか。アトラスは楯を取ってくるついでに倒してやってきてもいいとは言ってはいるが。
「だけど・・・ほんとに、大丈夫なのか」
先ほどの石柱と化した空間の移動速度と振動は。自分では到底、適わないレベルだったのだ。
「心配はいらない。ここで見てろ。おそらくは数回偽装に付き合わされた後に、中央にバカ息子の玩具箱が出てくるだろう」
既に見切ったような発言だが、不安が拭いきれない。思わず、その腕を掴んだ。
「アトラス・・・でも、ほんとに気をつけてな。絶対に、無理はしないでくれ」
「テセウス」
「あっ・・・」
首の後ろを大きな手に捉えられて。どこか嬉しそうに、傾いた顔が近づいてくる。思わず、ふいっと横に避けた。
あれから何度かされようとしている行為だ。抱かれている間、どれほど貪られたかなんてわからない。それなのに今さらと思われても。どうしても許すことができないでいる。
「ん・・・」
その行方を失った唇が。頬に、目尻に、こめかみにと。ついばむような口づけを落としてくる。決して、無理強いをされることはない。
「行ってくる」
「えっ・・・あっ・・・」
それは物足りなさを感じるほどの短さで。素っ気なく背中を向けられて。銀の髪と長い外套を翻し、颯爽と立ち向かっていくその姿を見送りながら。
(あぁ・・・)
と唇にそっと指を置く。本当は、して欲しかったと思う気持ちが沸いてきて。けれども。すぐさま首を振って、その欲求を打ち消した。
「クゥゥーン・・・」
「ん・・・ケール、どうした?」
小型の魔獣が甘えるように頭を擦り寄せてくる。とすぐに離れると、ボワンッと全身から魔炎を出した。シュワンッと台座の上に深紅の炎が広がる。
(えっ・・・なんだ・・・?)
ユラユラと面に辺にと覆うように立ち上がる焔は、台座を守るかのようで。戸惑うのも束の間、アトラスが歩み進んだ先で。
ガッコンンッ!!
とケールの時と同様に床が凹んだ。ヒュンッとアトラスが飛び上がった。
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