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5:非道な霊託と淫毒を刺された身体と

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 バァァアァァーーンッ!!

 と一気に降り降ろされた枝からの。邪悪なアルケーが突風となって襲いかかる。

 「くっ・・・」

 石の上から吹っ飛ばされて、ズササササーーーッ・・・・・・・と地面の上を滑るようにして後退る。咄嗟に闘気を高め、両手を顔の前で交差して防いだもののフードが後ろへと外された。

 「あっ、お前は!!」

 露わになった顔に老婆が反応した。

 「緑色の瞳に・・・茶色の髪・・・美しい男じゃぁ・・・」

 「さっき・・・視じゃぁ・・・さっき・・・いじゃぁ・・・誰じゃ・・・アレは誰じゃぁ?」

 「そうじゃぁ・・・いじゃぁ・・・」

 「鍵じゃぁ!! 棺の鍵じゃぁ!!」

 「そうじゃぁ、鍵じゃぁ!! そうじゃぁ・・・それだけじゃぁ・・・そうじゃぁ・・・アレは確か・・・アレは確か・・・」

 「ペルセウスじゃぁ!!」

 (鍵? ペルセウス?)

 誰だ、なんのことだと思う隙もなく、老婆たちが叫び声を上げた。

 「う”ぉお”おぉ”ぉーーっ!! きじゃぁ~!! きじゃぁ~!!」

 「ハデスの血が煮え滾るようじゃぁあぁ~~!!」

 「欲しいじゃぁあぁ~!! あの美しい男がぁ、無性に欲しいじゃぁあぁ~!!」

 「そうじゃ、そうじゃぁ~!! あの美しい男を猛烈に犯したいじゃぁあぁ~!!」

 「テセウス・・・いや、ペルセウスを・・・犯すじゃぁあぁ~!!」

 ブワンッと異形たちが。その不浄で長い両手の爪を獣の牙のように構えながら勢いよく突進してきた。とその時―――

 「ガウガウガウッ!!」

 掛けていた鞄の中から赤い火の玉が飛び出した。
 
 「なんじゃぁあぁーー!!」

 「イーヌドーグじゃぁあぁーー!!」

 「こしゃくじゃぁあぁ!!」

 ヒュン、ヒュンとかわす老婆たちの枝の間を。小柄な体が宙を蹴って走り、逆毛を立て、唸りながら、ブオゥン、ブオゥンと赤い砲弾を放っている。

 「お前ごときの魔炎なんじゃ、ダイモーンにはきかんじゃぁあぁーー!!」

 「そうじゃ、ワシらはハデスの血も飲んじゃぁあぁーー!!」

 「無敵じゃぁあぁーー!!」

 枝についた炎がすぐさま、ジュッと黒い邪気で消される。歯なしの老婆がタプンッと竈の中に下肢を浸した。ズズズズ・・・・と闇を吸い上げる。

 「くらうじゃぁあぁーー!!」
 
 ビュゥウーー!!と口から黒い液体を大量に吐き出した。

 「そうじゃぁ、その手があったじゃぁあぁ!!」

 「目を狙うじゃぁあぁーー!!」

 他の二体も真似をして、足でもある枝を竈に漬ける。ズズズズ・・・と吸い上げ、口から液体をビュゥウーー!!ビュゥウ--!!と噴射して撒き散らす。

 「キャァァンッ!!」

 三方向から一斉攻撃を受け、邪悪な魔液を全身に浴びたケールが悲痛な声を上げた。そのひるんだ体に食らいつくようにして黒い枝が勢いよく巻き付いた。

 「竈に放りこんでやじゃぁあぁーー!!」

 「ケール!! やめろ!!」

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