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5:非道な霊託と淫毒を刺された身体と
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紫色に輝く気に包まれて。外に飛び出すと、ボワンッと大きく膨らんだそれは――
「目じゃぁ、目じゃぁ!! エニューオー、ペンプレードー、目が二つじゃぁ!!」
「くれぇ!! くれぇ!!」
「早う、くれぇ!!」
目なしの老婆たちが枯れ枝のような手を差し出し、渡された眼球をズブッ、ズブッと自らの顔に沈める。顔の真ん中に収まった目がギョロリと回転した。
「見えじゃぁ!! 見えじゃぁ!! よう見えじゃぁ!!」
「ワシもじゃぁ!! 見えじゃぁ!! 見えじゃぁ!! 」
「ようやく一つずつ持てじゃぁ!!」
「もう使い回しせんでえぇじゃぁ!!」
念願の目が手に入り、興奮が抑えきれないのだろう。大木の周りを上下左右斜めにと。三体がヒュンッ、ヒュンッと下肢でもある枝をしならせながら飛び回っている。
「もう一つの箱は歯じゃぁ? 歯も二つじゃぁ!!」
「そうじゃ、そうじゃぁ、歯も二つじゃぁ!!」
「さすがは冥府の王じゃぁ、たいしたものじゃぁ!! よう用意しじゃぁ!!」
その言葉に。状況に圧倒されながらも、確かにと同意する。まさか目が入っていたとは思わなかったが、一体どうやって工面したのか。巨人族でも倒したのか。一つの目の大きさが手のひらほどある。
「よかじゃ、よかじゃぁ、ハデスのために取りかかってやじゃぁ」
「そうじゃ、そうじゃぁ、歯も手に入れじゃぁ」
「やじゃぁ? ダイモーンの竈を開くじゃぁ?」
「開くじゃぁ!!」
好き放題に浮遊していた三体の老婆がピタリと止って、大木と向き合った。ペッ、ペッ、ペッと。一斉に幹に向かって黒い唾液を吐き出した。
「τεένσπέρα・・・来たれぇぇ・・・来たれぇぇ・・・邪悪なるちからぁぁ”ぁ~~」
「う”ぉお”ぉお”ぉぉ~~ ダイモーン・・・くじゃぁぁ・・・こ”いぃい”ぃぃ~~」
その唸るような陰湿で恨めしげな低音は。聞く側の肌をゾワゾワと粟立たせる。
(ダイモーンの竈・・・)
ダイモーンとは神々の領域と人界の中間層に属する、地上に災いをもたらす邪霊だ。
(そんなモノの力を借りないと・・・王妃の行方はわからないのか・・・)
青黒い邪気を身体にまとわせて。ブツブツと唱えながらはペッペッペッと不潔な唾を吐き、右に左にグルグルと回っては繰り返す。その異形たちの異様極まる姿を目にして。
冥府の王たる存在がなぜ、こんな連中に頼るのか――と改めて考えずにはいられない。
「ακκαέαλέπεριοπα・・・ダイモーン・・・くじゃぁぁ・・・う”ぉお”ぉお”ぉぉ~~ ダイモーン・・・ダイモーン・・・う”ぉお”ぉお”ぉぉ~~ πταεριοπαρλώ・・・」
髪を振り乱し、一心不乱となって。呪うかのように呻くかのように唱える。すると――
ゾゾゾゾゾゾゾッ・・・ズズズズズズッ・・・・・・
と大木の上部が動き始めた。まるで花が開くか、挨拶でもするかといった体で。幹を中心にして枝が地面へとしなだれてきた。
「目じゃぁ、目じゃぁ!! エニューオー、ペンプレードー、目が二つじゃぁ!!」
「くれぇ!! くれぇ!!」
「早う、くれぇ!!」
目なしの老婆たちが枯れ枝のような手を差し出し、渡された眼球をズブッ、ズブッと自らの顔に沈める。顔の真ん中に収まった目がギョロリと回転した。
「見えじゃぁ!! 見えじゃぁ!! よう見えじゃぁ!!」
「ワシもじゃぁ!! 見えじゃぁ!! 見えじゃぁ!! 」
「ようやく一つずつ持てじゃぁ!!」
「もう使い回しせんでえぇじゃぁ!!」
念願の目が手に入り、興奮が抑えきれないのだろう。大木の周りを上下左右斜めにと。三体がヒュンッ、ヒュンッと下肢でもある枝をしならせながら飛び回っている。
「もう一つの箱は歯じゃぁ? 歯も二つじゃぁ!!」
「そうじゃ、そうじゃぁ、歯も二つじゃぁ!!」
「さすがは冥府の王じゃぁ、たいしたものじゃぁ!! よう用意しじゃぁ!!」
その言葉に。状況に圧倒されながらも、確かにと同意する。まさか目が入っていたとは思わなかったが、一体どうやって工面したのか。巨人族でも倒したのか。一つの目の大きさが手のひらほどある。
「よかじゃ、よかじゃぁ、ハデスのために取りかかってやじゃぁ」
「そうじゃ、そうじゃぁ、歯も手に入れじゃぁ」
「やじゃぁ? ダイモーンの竈を開くじゃぁ?」
「開くじゃぁ!!」
好き放題に浮遊していた三体の老婆がピタリと止って、大木と向き合った。ペッ、ペッ、ペッと。一斉に幹に向かって黒い唾液を吐き出した。
「τεένσπέρα・・・来たれぇぇ・・・来たれぇぇ・・・邪悪なるちからぁぁ”ぁ~~」
「う”ぉお”ぉお”ぉぉ~~ ダイモーン・・・くじゃぁぁ・・・こ”いぃい”ぃぃ~~」
その唸るような陰湿で恨めしげな低音は。聞く側の肌をゾワゾワと粟立たせる。
(ダイモーンの竈・・・)
ダイモーンとは神々の領域と人界の中間層に属する、地上に災いをもたらす邪霊だ。
(そんなモノの力を借りないと・・・王妃の行方はわからないのか・・・)
青黒い邪気を身体にまとわせて。ブツブツと唱えながらはペッペッペッと不潔な唾を吐き、右に左にグルグルと回っては繰り返す。その異形たちの異様極まる姿を目にして。
冥府の王たる存在がなぜ、こんな連中に頼るのか――と改めて考えずにはいられない。
「ακκαέαλέπεριοπα・・・ダイモーン・・・くじゃぁぁ・・・う”ぉお”ぉお”ぉぉ~~ ダイモーン・・・ダイモーン・・・う”ぉお”ぉお”ぉぉ~~ πταεριοπαρλώ・・・」
髪を振り乱し、一心不乱となって。呪うかのように呻くかのように唱える。すると――
ゾゾゾゾゾゾゾッ・・・ズズズズズズッ・・・・・・
と大木の上部が動き始めた。まるで花が開くか、挨拶でもするかといった体で。幹を中心にして枝が地面へとしなだれてきた。
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