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4:不可解な夢とグライアイの三姉妹と
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ヒャーーァアァーー・・・ハハハハッーーー・・・アァァーーハハハハッーーー・・・・・・
まるで気が狂った者の笑い声のようにも聞こえる、不穏に揺れる黒い木々の中を。青白い幽鬼のランタンを片手に、慎重に慎重にと歩みを進める。
邪霊どもがわざとかするような近さでひっきりなしに飛んでくる。誘っているのだ、こちらに来いと。正気な者に恐怖を与えて。
恨みのこもったその顔に。身にやましいことがある者は怯え、おののくだろう。だが、誰がそんなことで動揺するかと。元より過去もないと思いながら。一歩また一歩と歩み続ける。
少し開けた場所に、見上げるほどに高く、両手を伸ばしても届かないほどに幅広く。頂きが平らになるように石が積まれた、墓石のような供物台のような円錐状の物体が見えてきた。
「なんじゃぁあぁ~」
「誰かきじゃぁあぁ~」
「誰じゃぁあぁ~?」
その石山の中から。耳障りとしか思えない、しゃがれた声が聞こえてきた。
「テセウスだ。冥府の王ハデスの代理でやってきた。行方不明の王妃ペルセフォネの所在を占って欲しい」
姿の見えない相手へと用件を告げた。
「なに、ハデスじゃぁ? 聞こえじゃぁ? ハデスじゃぁ・・・ヒヒヒ・・・」
「聞こえじゃぁ、聞こえじゃぁ、ハデスじゃぁ・・・ケケケ・・・」
「愛を疑う哀れな冥府の王じゃぁ・・・ククク・・・」
見下すような不愉快な笑い声ともに。石が積み上がったその平たい天辺がボコッと蠢く。ゴロゴロゴロゴロ・・・と押し出された石が勢いよく転がり落ち、途端に――
ブクッ・・・ブクブクブクブクッ・・・・・・
と黒く濁った液体が溶岩流のように吹き出してきた。
ズォォオォォオォォーーッ・・・・・・
そのまま縦横無尽に影が伸びるようにして流れ落ちてくる。
一見、ドロッとした粘着質な液体にも見えるが、実際はぬめりにぬめった黒い根っこだ。まるでそれ自体が意思を持った生き物かのように、多様な太さと長さでもって。すさまじい速度で広がっていく。
「ッ!!」
あっという間に円錐の裾野一面を侵した漆黒が、そのまま頂きを中心点として水紋のようにさらに拡大し続ける。接近してきた根に足を取られまいと。近くにあった大きな石の上へと飛び乗った。
ズォォオォォオォォーーッ・・・・・・ズズズズズ・・・ズズズズズ・・・・・・
その結界を張る役目もある、地を這いずる動きに地響きの音と振動が加わる。そして、
ドドドドドドォォォーーッ・・・・・・ズドォドォドォドォォォーーッ・・・・・・
と浸食する根の源泉にもなっている場所から。眠っていた黒き怪物が起き上がるようにして。無数に生える手を振るようにして。真っ黒な大木が現れた。
ブワァアァァーーーッ・・・・・・バサバサバサバサッと一気に広がった枝の間を。
「ワシらに貢ぎ物は持ってきじゃぁあぁ~ テセウス~?」
ビューン、ビューンと風に乗るように漂いながら、不気味な存在が尋ねてきた。
まるで気が狂った者の笑い声のようにも聞こえる、不穏に揺れる黒い木々の中を。青白い幽鬼のランタンを片手に、慎重に慎重にと歩みを進める。
邪霊どもがわざとかするような近さでひっきりなしに飛んでくる。誘っているのだ、こちらに来いと。正気な者に恐怖を与えて。
恨みのこもったその顔に。身にやましいことがある者は怯え、おののくだろう。だが、誰がそんなことで動揺するかと。元より過去もないと思いながら。一歩また一歩と歩み続ける。
少し開けた場所に、見上げるほどに高く、両手を伸ばしても届かないほどに幅広く。頂きが平らになるように石が積まれた、墓石のような供物台のような円錐状の物体が見えてきた。
「なんじゃぁあぁ~」
「誰かきじゃぁあぁ~」
「誰じゃぁあぁ~?」
その石山の中から。耳障りとしか思えない、しゃがれた声が聞こえてきた。
「テセウスだ。冥府の王ハデスの代理でやってきた。行方不明の王妃ペルセフォネの所在を占って欲しい」
姿の見えない相手へと用件を告げた。
「なに、ハデスじゃぁ? 聞こえじゃぁ? ハデスじゃぁ・・・ヒヒヒ・・・」
「聞こえじゃぁ、聞こえじゃぁ、ハデスじゃぁ・・・ケケケ・・・」
「愛を疑う哀れな冥府の王じゃぁ・・・ククク・・・」
見下すような不愉快な笑い声ともに。石が積み上がったその平たい天辺がボコッと蠢く。ゴロゴロゴロゴロ・・・と押し出された石が勢いよく転がり落ち、途端に――
ブクッ・・・ブクブクブクブクッ・・・・・・
と黒く濁った液体が溶岩流のように吹き出してきた。
ズォォオォォオォォーーッ・・・・・・
そのまま縦横無尽に影が伸びるようにして流れ落ちてくる。
一見、ドロッとした粘着質な液体にも見えるが、実際はぬめりにぬめった黒い根っこだ。まるでそれ自体が意思を持った生き物かのように、多様な太さと長さでもって。すさまじい速度で広がっていく。
「ッ!!」
あっという間に円錐の裾野一面を侵した漆黒が、そのまま頂きを中心点として水紋のようにさらに拡大し続ける。接近してきた根に足を取られまいと。近くにあった大きな石の上へと飛び乗った。
ズォォオォォオォォーーッ・・・・・・ズズズズズ・・・ズズズズズ・・・・・・
その結界を張る役目もある、地を這いずる動きに地響きの音と振動が加わる。そして、
ドドドドドドォォォーーッ・・・・・・ズドォドォドォドォォォーーッ・・・・・・
と浸食する根の源泉にもなっている場所から。眠っていた黒き怪物が起き上がるようにして。無数に生える手を振るようにして。真っ黒な大木が現れた。
ブワァアァァーーーッ・・・・・・バサバサバサバサッと一気に広がった枝の間を。
「ワシらに貢ぎ物は持ってきじゃぁあぁ~ テセウス~?」
ビューン、ビューンと風に乗るように漂いながら、不気味な存在が尋ねてきた。
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