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2:案内人アトラス

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 二度と罪を犯さぬよう、地上での新しい身分と定住先を与え、案内役に就労支援をさせる――と通達するのが従来の仕来りではあるが、お前の場合は通常とは異なる・・・・・・って、えっ、あれ? ど、どういうこと?」

 つらつらと文字を読んでいたエンプサが首を傾げた。

 「えっ、そんなこと、書いてあるの?」

 モルモーがひょいと紙面を覗きこんだ。

 「あ、ほんとだ。書いてある。なんだ、これ・・・こんなの初めてじゃない?」

 「う、うん。と、とにかく最後まで読むね・・・ん、ん・・・コホン・・・テセウス、お前には特別な任務を与える。冥府の王ハデスの妃ペルセフォネ。行方不明となった王妃を探しだし、無事に連れ戻すこと。それをお前に命ずる。

 もし、この使命を見事に全うした暁には、お前の罪は不問に処され、封印された過去の記憶も全て取り戻せるだろう。

 さらには冥府の王しか外すことのできない貞操帯、その下に隠された罪人の焼き印も消し取られ、運命のツガイに出会えた際には自らの意思でティーチェスタトルベを自由に外すことも再び可能となる。

 他に報償も用意し、願いがあるのであれば叶えてやるつもりだ。まずは、グライアイの三姉妹の元に向かうことになるが、事の詳細は『遺失の森』で待つアトラスに尋ねるがいい。

 お前のために用意した案内役だ。だが、この任務はテセウス、必ずお前自身の力で成し遂げなくてはならない。それを心せよ。では旅立つがよい。朗報を待つ・・・・・・だって、なに、これ? こんなことって、あるの?」

 「あるの・・・って、実際にそう・・・書いて・・・あるんだから・・・さ」

 鳥頭と猿頭がまじまじと巻物を見つめる。紙面から宙に浮かび上がって、ユラユラと揺れながら黄金に光る文字は紛れもなく神族が作った証だ。

 けれども、こんな通達をしたこともなければ、今まで冥府の大審判官たちによって下されているのを見たこともない。

 「ど、どういうことなんだろ・・・ペルセフォネさまは最近お姿が見られないって耳に挟んだことはあったけど・・・行方不明だなんて・・・」

 「しっ、エンプサ。多分、それ・・・極秘中の極秘事項だよ。安易に口にしない方がいい」

 「う、うん。で、でも・・・」

 二体から困惑したような、腫れ物でも扱うかのような視線を同時に向けられる。

 「えっと・・・その・・・通達は以上・・・なのですが・・・ご質問は・・・ありますか?」

 少し間の抜けた問いかけに、もちろんあるとばかりに直ぐに口を開いた。

 「拒否権はあるのか?」

 「えっ?」

 「その特別な任務とやらの・・・ここで断ったら、どうなる?」

 「えっ、ど、どうなるって・・・モルモー、ど、どうなるの?」

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