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2:案内人アトラス

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 (オピス・・・)

 ザザザザザーーーッ・・・と。一度広く砂地まで浸食した水が河へと勢いよく戻っていく流れの中、じっと眺める。

 シュルシュルと先が割れた赤い舌を覗かせて。黒い縦長の瞳孔が入った目で見つめ返してくるのは神殿の前で出会った大蛇だ。

 守護者が逸脱した者を追いかけてきたのか。そう理解した途端、鎌首に幾重になって巻かれている鎖がジャラジャラと音を出した。

 「ね、着いたの? ね、モルモー、着いたの? 目を開けてもいいの?」
 
 「う、うん。なんかものすごかったのに、急に静かになったってことは着いたってことだよね?」

 「じゃ、いっせーのせで顔を上げるよ?」

 「うん、そだね。じゃ、いっせーのせ!!」

 鎖にしがみつくようにしてくっついていた獣人たちが同時に頭を上げた。鳥顔と猿顔がパチパチと瞬きをする。

 「あーっ、目の前にいたーっ!!」

 「ほんとだーっ!! もぉー、勝手に鏡、触らないで下さいよぉー!!」

 叫ぶと同時に、大蛇が水面に頭をのせるようにしてスーーッと鎌首を下げる。二体がその平たくなった頭部を台にするかのようにすくっと立ち上がった。

 「フゥ・・・とにかく、すぐ見つかってよかった。見つからなかったら、ラダマンテュスさまに大目玉を食らうところだったよね」

 「大目玉ですむのかなぁ・・・こんなこと、初めてだよね」

 「ほんとほんと・・・もしかしたら、ラダマンテュスさまどころか、ハデスさまに怒られちゃってたかもってこと?」

 「ぅわ、こわっ・・・エンプサ、早くしよ、早く済ませよ!! 早く済ませて帰ろう!!」

 「う、うん」

 エンプサと呼ばれた鳥頭が斜め掛けしている皮の鞄に手を入れた。ガサゴソと探るようにした後、巻物のような物体を取り出す。

 「では、仕切り直しまして。まず本人確認のため、この巻物に手を置いて下さい」

 ズルーーッと流れるようにして蛇の頭がすぐ真横へと伸び、目の前に差し出された巻物に言われた通りに手を置く。

 「名前を言って下さい」

 「・・・テセウスだ」

 告げた途端、パァァッと巻物が緑色の光を発した。

 「間違いなく本人の裁きの書だ」

 パラララ・・・と開いた光る紙の端をモルモーと呼ばれていた猿頭が下に落ちないように手のひらで受け止める。ぐぃいぃ・・・と蛇がまた首を上げた。

 あえて高さを設けたかったのか。見上げる形となって。巻物を広げた獣人たちに座ったまま視線を向けた。

 「タルタロスは第八監獄の囚人テセウスに告げる。冥府の王ハデスの名において、この度、特赦が与えられることとなった。罪人であった過去がその記憶ごと清算されることによって、お前は新しい人生を歩むことが許される。そして――

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