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2:案内人アトラス
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ズッ・・・ズブブブ・・・ズズズーーーッ・・・
触れたところから沼にでも沈みこむような感覚を。感じた時には引きずりこまれていた。まるで透明な手にでも腕を掴まれて、強引に引っ張られたかのようで。
ザッ・・・
と前のめりになって向こう側の地面の上に倒れこむ。受け身を取ることも抵抗することもできずに、両手両膝を着いていた。
けれども咄嗟に振り返る。そこから出てきたのであろう、そのユラユラと揺れる水のベールがかかっているかのような空間の向こうで。鳥頭と猿頭が指をこちらに指しながら慌てている。
シュワン・・・
だが、その光景も瞬く間に気流の渦の中に巻きこまれるようにして消えた。
(な、なんだ・・・今のは? こ、ここは・・・?)
突如として木々が茂る森の中にいる。その現状に認識が全くついていけない。
(ど、どういうことだ・・・?)
手足に感じる大地の確かな感覚とサワサワと優しく揺れる木々の音と。そして枝葉の間からは柔らかな日の光が差しこんでいるその光景とに。おののかずにはいられない。
その場所は紛れもなく鳥のさえずりが聞こえる穏やかな森林で。なぜ、こんな所に、いきなり? と思っている背後で声がした。
「随分と唐突に移動してきたな。段取りではレテの河を経由するはずだったが。話は聞いてきたのか?」
その低い美声にハッとして姿勢を戻し、目にした途端――
ドクンッ!!
と身の内が大きく跳ね上がった。ハァ・・・と息を大きくのみ、ドクドクドクドクッ・・・と強く早鐘を打ち始めた胸を手で押さえる。
(な、なんだ・・・こ、これは・・・)
苦しいと感じるほどの動悸に。激しく動揺しながら、目の前に近づいて来た存在を見上げ続ける。
(だ、誰だ・・・?)
足首まで隠れる長い灰色の外套を。獣の角のように尖った両肩の重厚な防具から、あえて後ろに流すようにして歩んで来たその姿は。先ほど鏡の中で目にした身に覚えのない男だ。だが――
(闘士か・・・?)
理想の肉体美を表現している、美しいフォルムの金属鎧を身に着けて。けれども、その鎧は劣る体躯を補強するどころか、おそらくその下には間違いなく逞しい筋肉を隠しているのだろう。
がっしりとした胴部もスラリと長い四肢も。どこもかしこも申し分のない力強さをまとっている。必要最低限な部位にだけ装着した、金属色の光沢で統一された甲冑姿は華美でない分、かえってその実力を見る側に知らしめる。
全身から並々ならぬ闘気と只者ではない異様さを漂わせているのだ。そう、異様だと言っても過言ではないだろう。
なぜなら、右半分の顔が額から頬まで仮面で覆われているからだ。瞳の部分ですら金属の。
(な、何者なんだ・・・)
触れたところから沼にでも沈みこむような感覚を。感じた時には引きずりこまれていた。まるで透明な手にでも腕を掴まれて、強引に引っ張られたかのようで。
ザッ・・・
と前のめりになって向こう側の地面の上に倒れこむ。受け身を取ることも抵抗することもできずに、両手両膝を着いていた。
けれども咄嗟に振り返る。そこから出てきたのであろう、そのユラユラと揺れる水のベールがかかっているかのような空間の向こうで。鳥頭と猿頭が指をこちらに指しながら慌てている。
シュワン・・・
だが、その光景も瞬く間に気流の渦の中に巻きこまれるようにして消えた。
(な、なんだ・・・今のは? こ、ここは・・・?)
突如として木々が茂る森の中にいる。その現状に認識が全くついていけない。
(ど、どういうことだ・・・?)
手足に感じる大地の確かな感覚とサワサワと優しく揺れる木々の音と。そして枝葉の間からは柔らかな日の光が差しこんでいるその光景とに。おののかずにはいられない。
その場所は紛れもなく鳥のさえずりが聞こえる穏やかな森林で。なぜ、こんな所に、いきなり? と思っている背後で声がした。
「随分と唐突に移動してきたな。段取りではレテの河を経由するはずだったが。話は聞いてきたのか?」
その低い美声にハッとして姿勢を戻し、目にした途端――
ドクンッ!!
と身の内が大きく跳ね上がった。ハァ・・・と息を大きくのみ、ドクドクドクドクッ・・・と強く早鐘を打ち始めた胸を手で押さえる。
(な、なんだ・・・こ、これは・・・)
苦しいと感じるほどの動悸に。激しく動揺しながら、目の前に近づいて来た存在を見上げ続ける。
(だ、誰だ・・・?)
足首まで隠れる長い灰色の外套を。獣の角のように尖った両肩の重厚な防具から、あえて後ろに流すようにして歩んで来たその姿は。先ほど鏡の中で目にした身に覚えのない男だ。だが――
(闘士か・・・?)
理想の肉体美を表現している、美しいフォルムの金属鎧を身に着けて。けれども、その鎧は劣る体躯を補強するどころか、おそらくその下には間違いなく逞しい筋肉を隠しているのだろう。
がっしりとした胴部もスラリと長い四肢も。どこもかしこも申し分のない力強さをまとっている。必要最低限な部位にだけ装着した、金属色の光沢で統一された甲冑姿は華美でない分、かえってその実力を見る側に知らしめる。
全身から並々ならぬ闘気と只者ではない異様さを漂わせているのだ。そう、異様だと言っても過言ではないだろう。
なぜなら、右半分の顔が額から頬まで仮面で覆われているからだ。瞳の部分ですら金属の。
(な、何者なんだ・・・)
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