騙されて異世界へ

だんご

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56 淡々と

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 隣の塔にバル◯ン設置してから、最初の塔の階段の掃除をした。
 2階から3階、屋上のドア手前まで。
 結構な量の廃棄物がありました。
 内容物はほぼアレだ。
 もう、多くは語るまい……
 階段を下りながら灯りを消して行く。
 こちらの塔は本日終了にさせて頂くよ……
 もうね……気力の問題。
 本当はあっちも止めたい所だけども。
 残しておいても餌になるだけだからな……

 「はぁ……このまま外にいたい……てゆーか帰りたい……」

 外に出ると澄んだ空気に、身も心も洗われる……
 空気美味しいぃ。
 風気持ちいぃ。
 猫吸いてぇ。

 動かなくなった自分の足に、何とか喝を入れて次の段階へ進む。
 ドアを開け、煙を追い出し、回収作業。
 ただそれだけの作業。
 ちょっと回収物に目をつぶれば、とっても単純なお仕事のはずなんだが……
 何故に塩漬けちょっと前な依頼になってるんだ?
 まぁ……イエナイだから嫌だってのもあるか。 
 あと、今の俺みたいにひたすら同じ動作に飽きがくるのかもな。
 永遠と続くイエナイお仕事。
 うん。
 嫌だ。
 本格的に嫌なお仕事だったわ。
 
 階段を上まで掃除して、3階の部屋にバル◯ンを放り込んで本日の仕事は終了です。
 だって、そろそろ夜なんだよ?
 夜の部まで初日に通したら、明日から死んじゃうよ?
 それに、キナコが家でションボリしてる姿が頭にチラついて……
 俺的には、もう限界なんだわ。

 一応門番役に本日は終了の報告をして帰宅。 
 門番達からの尊敬の眼差しがウザ過ぎてシンドい。
 微かに「ステキ……」と聞こえた声に全身鳥肌が出たが……
 聞こえない。
 聞こえないったら聞こえない。
 足早に帰宅。

 今日はリック達も遅くなるって話しだったから、串焼きを買って帰る予定だ。
 キナコも許してくれるだろう。
 多分。
 ……あやしいかもしれない。

 「キナコ~、ただいま~」
    
 ……あれ?
 キナコが駆け寄って来ない……だと?

 「キナコ~?」

 ……おかしい。
 前世(キナコの)だと感動の再会とばかりに飛び付いて来たキナコが来ない。
 まさかっ?!
 攫われたかっ?!
 いやっ、退屈で外にっ?!

 「キナコっ?!」

 慌てて家へ駆け込む。
 椅子の上、棚の隙間、台所の窯の中……
 隙間という隙間を探し回るが、キナコが居ない……

 「キナコっ?! キナコ~!!」

 あっ……デジャヴ……
 前世(キナコの)でもあったな……

 子猫時代のキナコ。
 仕事行く時、余りにも心配でケージに入れて留守番して貰ってたが。
 しっかり閉めたか確認しないで出た日だ。
 帰ったらケージが開け放たれていて。
 キナコがどこにも居なかったんだ。
 呼んでも出て来ないし、見渡しても居ない。
 目に付く隙間を探しまくっても居ない……
 お気に入りのおもちゃ、棒にポンポンと鈴、キラキラの長い吹き流し尾の付いた物と猫じゃらしを両手に持ち、ブンブン振り回しながらキナコを探す不審者になったっけ。
 ……キナコ、振り回しにじゃれつくから……つい。
 んで『窓もドアも閉まった密室からイリュージョンで外へ?!』って考えた時に出て来たんだよな……
 仕事のファイルの上の隙間から……
 しっかり寝てましたな顔で……

 今回もそれであってくれっ。
 子猫だしっ。 

 「キナコ~!」

 むっ?!
 俺の寝室の隙間が僅かに開いているっ?!

 「キナコ~!」

 いたっ!
 寝てたっ!
 枕の所で、うつ伏せ伸びの状態でっ!!
 可愛よっ!!
 何その体勢っ?!
 可愛いぃ!!
 子猫可愛いぃ!!
 キナコ可愛いぃ!!
 やべぇ、語録が死んだ。
 落ち着けぇ……落ち着け、俺。
 深呼吸……深呼吸だ……

 「はす、はす、はす……!!」

 何故っっっ?!
 深呼吸が出来ないだとっ?!

 「はす……はす……はぁ~……」

 はぁ……深呼吸、深呼吸……
 やべぇ、変態になる所だったわ……

 『※その認識(プツッ)』

 ……涙も出て来たな。
 やべぇ……キナコ可愛いぃ……

 起こすのが可哀想だが、余りにも可愛いのでソッとなでる。
 勿論【清浄】を全身にかけてから。
 変な菌やら何やらキナコに付けてたまるかっ!

 「んにゃ……?」

 起こしちゃったか……
 寝惚けたキナコも可愛いなぁ。

 「ただいま、キナコ」

 「にゃ……」

 むにゃむにゃしながら二度寝。
 可愛いいが過ぎるぞ!キナコ!
 やべぇ……なでる手を止められねぇ……

 その後、完全に覚醒したキナコにウザがられるまでなで回してしまったのは……
 仕方ない……よな?

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