騙されて異世界へ

だんご

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40 ミッション〜胃袋を掴め②

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 あれだな。
 かなり食うってんだから、汁物もいるな。
 シチューの残りも【アイテムボックス】に入っているが……これは他の事に使いたいし、なんか他の物を作っておくか……

 サモンのアラ汁でも作るか。
 ……いや、アラは危険かもな。
 身を使った方が、正体を誤魔化し続けれると思う。
 きっと、誰かしら、何かしら有名なレシピは試しているはずなんだよな。
 多分だがな。
 ならば。
 身を焼いてスープに投入するタイプのをやってみるか。
 これもチラ見で作ってみたやつ。
 俺的には、醤油が少し有ってもいいか?とも思ったが、これはこれで旨かった。
 何回か作ってみて、オリジナル感が欲しくなってな……つい、魔改造レシピが生まれたが……
 御蔵入りレシピも数種類。
 代償は、俺と後輩が俯く程度でおさまったから、軽いもんだろう。

 とりあえず、サモンを捌く。
 レベルのお陰で楽々捌けるのが嬉しいな。
 実家にいる時に、御歳暮で鮭が1本まんま届いた時は、出刃を片手に途方に暮れたな……
 皮も中々硬ければ、骨ギリギリに刃を入れ続ける事の難しさよ……
 思い出すと切なくなるな。
 アラは回収しておく。
 いつか役に立つ時も……あるかもしれないし。
 無いかもしれないが……もう少ししたら【アイテムボックス】の整理をした方がいいかもな。

 半分を回収。
 半身のみを使用する……にしてもデカいな。
 更に半分だ。
 切り身サイズに切り分けるか。
 ……ストンストン切れるが、加減を間違ったらまな板どころか、台所破壊に繋がるんじゃないか?
 気をつけるか。
 んで、塩・胡椒をまぶす。
 玉ねぎ、人参、いもを切る。
 チャイブを刻む。
 そのまま根菜は鍋に入れ煮込む。
 サモンの切り身を金網に載せて炙る。
 根菜に火が通ったら、炙ったサモンとチャイブを投入。
 塩・胡椒で味を整える。
 一応、三平汁もどきの完成。

 味見の段階で、ちょっと微妙な味だったが……
 酒があれば、もう少しマシな味になったよなぁ。
 まぁ、チャイブがいい仕事しているから、ギリギリまとまったかなって感じか?
 う~ん……要研究レシピだな。

 ならば。
 サモンのシチューもやっぱり作るべきだな。
 ……いや、次回にしよう。
 いっぺんに出す事はない。
 小出しだ。小出し。
 それなりに量はあるとは思うが……
 まだまだ食うよな……?

 腹に溜まる系だな……溜まる、溜まる……
 パッと思いつかんかった。
 まぁ、卵もミルクもあるからな。
 アレだ。
 アレならば、腹にも溜まる……はず。

 卵を溶き、ミルクと合せてまぜ、塩・胡椒。
 玉ねぎ、ほうれん草、ベーコン、ガーリックを切る。
 玉ねぎは細めに。
 ほうれん草は一口大。
 ベーコンは長方形に。
 ガーリックは微塵切り。
 
 フライパンに油を敷き、玉ねぎを飴色になるまで炒める。
 ガーリック、ベーコン、ほうれん草を投入。
 ローズマリーもさらりと入れておく。
 さっと火を通し、五徳を置いて弱火に変える。
 最初に用意していた合せ液をフライパンに流し込み、チーズを入れて蓋をする。
 弱火維持でしばらく待機だ。
 ガスなら20分位でOKなんだがな。
 釜戸の加減がわからん。
 チラチラ見ながら、嗅ぎながら。
 大きめな皿をフライパンに当てひっくり返す。
 
 完成品は、フライパンキッシュ。

 元の世界だったら、これにコンソメ入れてたぞ。
 つくづく食文化が憎いよ。

 「おいおい!張り切ってるじゃないか!遠くまで匂いが来てたぞ?」

 ここがリミットか。
 リック達が帰ってきた。

 「おう。お疲れさん。家主殿の胃袋をつかまんとならんからなぁ」

 「匂いだけでつかまれたぞ?」

 「だな。リックの腹が広場を越えてから鳴りっぱなしだよ」

 「そこまで流れたのか?! 」

 結構遠くまで匂いダダ漏れって……
 ヤバいもん作れないじゃねぇか。

 「いや、遠征明けだからな。敏感になってんだ」

 「あたしもさ。腹は鳴らんかったがね?」

 「おぉ……そうか。簡単に失敗したり、焦がしたりできんかと思ったぞ」

 「いや、失敗するなよ?!」

 「それよりも、あたし達に可愛い子を紹介してくれるんだろ?」

 ソワソワしてるな、タバサ。
 猫好きか?
 ならばキナコは最上級だぞ?
 なんたって可愛いの天井が突き抜けてるからな!

 「さっきまで寝てたんだが……」

 「にゃん♡」

 「「キャワユイ……」」

 余所行き可愛いモードのキナコ、キャワユイ!
 主役は遅れて登場するを体現したそのあざとさ。
 ポイント高いぞ?

 「にゃっ♡」

 ポフンッとタバサにお手だ。

 「にゃ……にゃんて、可愛い……」

 「抱っこして貰いたいみたいだな」

 「にゃ?(キュルルン)」

 「はふぅ……♡ 抱っこ、だな?」

 流石キナコ!
 堕とすべき人間を知っている!
 キナコ……恐ろしい子……!! (白目)
 
 「名前はキナコだ。よろしくな?」

 「キナコか……そうか。あたしはタバサだ。よろしくな?」

 「にゃう♡」

 「はうぅ♡」

 サービス満点だな!
 羨ましぃ!
 ……ん?
 リックが大人しいぞ?
 苦手か?
 キナコ、ダメか?
 ダメなのか?!
 慌ててリックを見て、俺は固まった。

 「キナコに甘々なタバサ……カワユイ……」

 別方向にダメだった。
 
 「あっちにいるのが、あたしの相棒で家主のリックだ」

 「にゃ、」

 「見ちゃいけません!」

 素早くタバサとキナコの視線を遮る。
 こんなにも変態顔のリックを女子に見せてはいけない。
 一歩間違ったら、犯罪者だ。

 『(プツッ)』

 ん?
 今、認識先生が何か反応したか?
 気のせいか?
 
 「おい、リック!リック!顔がダラしないぞ!」

 「はっ!スマンッ……」

 戻ったか?
 戻ったな?

 「こっちが家主のリックだ」

 「よろしくな?キナコ」

 「にゃん!」

 お返事できるにゃんこさんは、大変良いにゃんこさんです。

 「なんだ、2人共にキナコの魅力に落ちたか……胃袋は、つかまなくても良かったな」

 「なっ、なんだよ、ソブル!! あんな旨そうな匂いさせといて、なしとか……いっそ殺してくれってもんだぞっ?!」

 えっ……ヤダ。
 リックのクッ殺さんなんて誰に需要あんの?

 「まあまあ、リック。ソブルがそんな殺生な真似なんて……しないよなっ?」

 怖っっ?!
 タバサの眼力が半端ねぇ?!
 マジで殺す勢いで見てねぇか?

 「な、なんだよ……飯は、出すに決まってんだろ?」
    
 「ほら、リック。……変な事言うなよ?」

 眼力っ!!
 目から何か発する勢いのある眼力……!!
 キナコ、キナコはタバサの犠牲に……なってない!!
 眼力は強いが、なでる手は柔らかく、キナコのスイートポイントを抑えている……だと?
 これは……
 強力なライバル出現の予感しかしねぇぜ。


 「んじゃ、飯にするか。キナコ、ごめんな?」

 「……にゃ」

 リック達が帰ったから、食事はテーブルで摂ることになるからな。
 ちょっと寂しいよな。

 「ん?ソブル。キナコがしょんぼりしてるぞ?なんでなんだ?」

 タバサ……
 メキメキとキナコ洞察の力を上げてきている。
 恐ろしい子……!(白目)

 「その……な?誰もいなかったからな?床に座って、キナコの近くで飯食ってたんだよ……な?」

 「にゃ」

 「テーブルだと距離が離れて寂しかったみたいでな?ついな?つい……」

 「なっ?!」(カッ‼)

 タバサッ?!
 眼力がっ?!
 いきなりの開眼?!

 「いやっ、だなっ、ちゃんとテーブルに戻すからな?な?」

 行儀が悪いよな?
 だよな?だよな?
 スマンッ‼ 
 もうしないから!
 怖いからっ!

 「……戻さなくとも、良いと思うぞ?」

 「へっ?」

 「むしろ、私達もキナコと一緒に摂りたい」

 「へっ?」
 
 「ダメか?」(カッ‼)

 眼力っっ‼

 「そっちがいいならいいに決まってんだろ!大歓迎過ぎるからっ‼」

 だからっ!だからっ!
 そんな目(眼力)で俺を見ないでくれっ‼

 「リックもいいよなっ?なっ?リック?」

 ヤベェ……
 リック、さっきの眼力から回復してなかった……
 ほぼ石化してるぞ?
 怖ぇ……

 仕方ないからシーツを1枚、敷物にして食事スペースを確保した。
 それぞれ座って貰う。
 リックの回復はまだだったから、膝カックンをして座らせといた。

 【アイテムボックス】から先程の料理を取り出し、並べ、各々の取り皿とカトラリーを渡す。
 キナコには、鳥ササミのストックとミルクパンを出す。
 まぁ、ミルクに見えてシチューにしてあるけどな。
 キナコには、後でお取り置きを出すんだ。

 「はっ?俺はいったい……飯だな!」

 リックが元に戻ったな。
 匂いで覚醒とか……

 「凄いじゃないかっ!ソブル、食べていいかい?」

 「おう。2人共、無事帰って来て良かったよ。おかえり、飯にしようぜ」

 「「……ただいま」」

 2人共に顔が真っ赤になったぞ?
 えっ?なんだ?

 「ソブルってさ……」

 「うん?俺って?」
 
 「ソブルって……母ちゃん、みたいだな……」

 「だね……」

 「はっ?!」

 なっ?!
 はぁっ?!
 母ちゃんっ?!
 えっ?!
 母ちゃんっっ?!

 「……父ちゃんじゃ、ねぇのかよぅ……」

 「「母ちゃん、美味しいよっ‼」」

 ガッツリ削られたぜ……

 「にゃん♡」

 「俺の癒やしは、キナコだけだぜぇ……」

 ポフンッ(お手)
 ポフンッ(おかわりちゃん)

 「あっ……おかわりな……たんと、召し上がれ……」
 

 オッサンが母ちゃんになりました……
 俺のポジション、母ちゃん確定だ……
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